《天使と悪魔と死神と。》2ー3 杏樹の眼帯②

 最初は右目だけだったのが徐々に左目も赤くなり始めた。アペルは黙ってその様子を見る。やがて両目が赤く染まると杏樹はゆっくり瞬きをし、こういった。

「……ここはどこ?あなたは誰?」

 アペルはその答えを聞いてもたいして驚かず、スっと杏樹に近づき、額に自分の手を重ねる。 

 まるで自分の記憶を杏樹に教えるように。

 杏樹は目を見開き、パタリとアペルへ寄りかかる。アペルはそれもわかっていたかのようにその華奢なけ止める。本當は寢かせて休憩させたいところだが、時間はない。

 杏樹に眼帯をはめ、おぶって東門へ向かう。

 ───いや、向かおうとした。が、後ろで嫌な気配をじ取り、すぐにアペルは立ち止まった。振り返りたくないほどその正をアペルは知っていた。

「よォ、元気そうだなァアペル?」

「……やぁ、ディゼル。君も相変わらず元気そうだねぇ?」

 アペルの呑気な聲を聞くと男───ディゼルはフッと笑った。

「なァ、お前もう ゛9回目  ゛だぞ?次で最後ってとこかァ?」

 ディゼルは不敵な笑みを浮かべる。アペルはまだ杏樹が眠っているのを確認しディゼルに視線を戻す。

「だから何だ。」

 そしてコロりと態度を変える。杏樹と話している時とは別人格の様だった。

「……ハハッ!えらく余裕だなァ?」

  いちいち気にる言い方をする。

  そうアペルは早くもイライラしていた。

「……黙れ。」

「おぉ、怖い怖い。9回目はまだ始まったばかりってとこか。安心しとけ、9回目も10回目も俺が失敗させてやる。」

 お互い睨み合っていると、

「アペ……ル……さん……?」

と、アペルの背中から杏樹の聲が聞こえた。

「あァ?お姫様のお目覚めかァ?ちっ、まだそいつに姿は見せたくねぇからな。俺はここらで帰るぜ。───次會うのは失敗させるときだ。」

 ディゼルは口早にそういうと去っていった。アペルは杏樹を見るが、まだ眠っているようだった。さっきのは寢言だったようだ。

 アペルはディゼルが去っていった方をにらみつけるも、すぐに杏樹に視線を戻した。

「プッ……今の寢言か……杏樹ちゃん可いねぇ……」

 もう一度杏樹を抱えなおしてアペルは何事もなかったように東門へ向かった。

    人が読んでいる<天使と悪魔と死神と。>
      クローズメッセージ
      あなたも好きかも
      以下のインストール済みアプリから「楽しむ小説」にアクセスできます
      サインアップのための5800コイン、毎日580コイン。
      最もホットな小説を時間内に更新してください! プッシュして読むために購読してください! 大規模な図書館からの正確な推薦!
      2 次にタップします【ホーム画面に追加】
      1クリックしてください