《ひざまずけ、禮》第1章11話 正しきこと、すべきこと(3)

次の日、いつも通り佐和さんと學校へ行き、靴箱を開けた時。ひらりと紙が1枚、宙を舞った。

慌ててキャッチすると、そこには読みずらい毆り書きのような字で、「放課後屋上にて待つ」と書かれていた。

僕は真っ青になった。ついに目をつけられたか、と。おそらく言われた通りに屋上に行けば、ボッコボコに毆られるのだろう。それこそ、この毆り書きの字のように。

佐和「うっわぁ酷い字。・・・って、何これラブレター!?」

比影「なわけあるかって。きっと果たし狀の類だよ、はぁ・・・。」

佐和「いやいや、分からないよ?字が汚い子かも。」

比影「ないっての。」

朝から憂鬱ゆううつな気分となった僕なのであった。

んでんで、放課後。

佐和さんからは行かない方がいいと、妙にグチグチと説得されたが、もし行かなかったら、それはそれでボッコボコにされそうなため、行くことにした。佐和さんは何故か、悲しそうな顔をしていた。

言われた通りに屋上へ行くと、そこに居たのは・・・綺麗な、ではなく例の2人組の1人だった。うん、だろうね。

しずつ近づこうとしたが、すぐに気づかれてしまった。

箕浦「よぉ、比影くんよ」

比影「・・・これ、箕浦くんだったんだね。」ピラ

箕浦「怖気づかずに來るとは、大したもんだな。」

やっぱりボコボコに毆られるのだろう。お父さんお母さん、僕はここまでのようです。

箕浦「ここに呼んだのには・・・ほれ、け取れ。」バッ

比影「わっ・・・と。何これ、本?」

箕浦「あぁ、俺の読書のひとつさ。」

比影「そ、そう・・・」

箕浦くんの読書というと・・・ヤンキー漫畫とかかなぁ。でもなんで渡してきたんだろ?

比影「あの、なんでこれを・・・」

箕浦「なに、最近のお前が弄りがいが無いんでな。ちとアドバイスしてやろうと思って。」

比影「・・・へ?」

意外な言葉だった。アドバイス?何を?まさか喧嘩のアドバイス?いや、きっとそうに違いない。

比影「僕は別に、喧嘩をしてる訳じゃ・・・」

箕浦「あぁ?何言ってんだお前。」

比影「ひぃ!?ご、ごめんなさい!!」

箕浦「・・・?まぁなんでもいいけど、それにならきっと、お前の求める答えがあると思うぜ。読んでみな。」

比影「え、あ・・・うん。ありがとう。」

箕浦「禮はいい。ほら、さっさと行った行った。」

比影「は、はひぃ!ごめんなさい!」バッ

走って戻ろうとする、が。

箕浦「あ、やっぱちょっと待て!」

比影「はひぃっ!っとと、あぅっ!」ベシャ

箕浦「・・・あちゃー」

比影「は、鼻が・・・」

突然呼び止められてコケた僕を、箕浦くんは手當してくれた。・・・なんで簡易救急セットなんて持ち歩いてるんですかね。なお怖いのですが。

箕浦「さっきは悪かったな。もう1個、本に書いてないことでお前に言っておこうと思ってな。」

比影「本にないこと・・・?」

箕浦「俺の師匠からのけ売りだけどな。耳かっぽじってよーく聞いとけ。」

比影「う、うん。」

師匠ってなんなのかとか、聞きたいこともあったが野暮なのでやめておいた。忠告通り、聞き耳を立てて聞いた。

箕浦「えーっと・・・『人は十人十、違うことが面白ぇ生きだ。だから、人間はどうあるべきとか、誰かを見習えなんてのは、まさに機上の空論だ。』・・・だったかな。」

比影「・・・!」

それは、僕が求めていた答えの1つだった。人間として、どうあるべきなのか。そっか、そうだったのか。

箕浦「俺にはよくわかんねぇけどさ、なんかの役に立てば、と思ったが・・・その顔だと、役に立ったみたいだな。」

比影「うん、ありがとう。ちょっとスッキリしたよ。・・・箕浦くんって、案外優しいんだね。」

箕浦「案外は余計だこの。ほら、さっさと行きな。あとこのことは、佐賀のやつには緒な。あいつに伝わるとうるさいから。」

比影「あはは、了解。」

ちょっとだけ、箕浦くんと仲良くなることが出來た僕なのだった。

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