帝國領の西側の通、流、報全てが集まると言われる城塞都市ブレメン。その戦略的重要度からこの都市を巡っては幾萬もの命が散っていった。

そして今帝國東部侵攻に合わせた合衆國軍がブレメンを目指し進軍を開始した。

｢聞いてるのか？シュペーア將｣

｢ん？あぁ聞いてましたよ。うちの旅団が敵の裏に周り込めばいいんですよね？｣

｢その通りだ！しはまともに軍議に參加せんか！｣

｢仕方ないですよ。シュタイナー元帥閣下の話がつまんないんで…｣

｢貴様ぁ！｣

シュタイナー元帥の怒號と同時に常人の2倍近い拳がシュペーアの脳天を直撃した。

合衆國軍はブレメン攻略のために5個師団からなるA軍団をブレメン北方から、4師団からなるB軍団を中央、A軍団と同じく5個師団からなるC軍団をブレメン南方向から展開、これを帝國方面軍とし、同じく帝國西部戦線南方のソンムル要塞やハンブルク要塞の攻略も開始した。

総兵力は50萬にもなる大軍勢である。これをけ帝國は中央からも帝國國防軍第1軍総勢20萬をブレメン、ソンムル要塞、ハンブルク要塞に増援として派遣。徹底抗戦の構えを見せた。

｢で、我々の旅団はここ｣

シュペーアは連隊配下の將校に地図を見せて小高い丘を指さした。

｢敵中央軍と左翼の間隙を抑えるのですか？｣

副のデュッセルドルフ大尉がそう聞くと、シュペーアは首を振った。

｢表向きにはな。本命としては、さらにここから一個大隊を割いて敵の後方の補給線を狙う。敵の主攻は中央、両翼はその助攻に過ぎない。ならば主攻を弱らせればここは守りきれる｣

｢なるほど、しかし帝國も危ういですね。東部戦線は例の第7師団が遊撃で活躍しているらしいですが…もしここにさらに別の軍勢が北か南から來たらいくら帝國と言えどひとたまりもないですよね｣

｢南は同盟國の皇國、北は中立國家ユイタヤ。問題はそこまでな…｣

シュペーアの思考が止まる。

『皇國はまず無いが、中央のユイタヤはどうだろうか…軍の通行は條約で止はされてるが…分からない…』

｢どうしたのですか？｣

｢いや、し嫌な予がしただけだ。俺はもう一度元帥閣下のところに行く。デュッセルドルフ大尉。お前は別働隊の一個大隊の人員を選定してくれ。指揮共々お前に任せる。大まかな指示は後日伝達するからよろしく頼むぞ｣

｢承知しました。｣

デュッセルドルフの意見から生まれた違和を意見申するため、シュペーアは再びシュタイナー元帥の元を訪れた。

｢失禮します。シュペーアです｣

｢貴様かさっきの詫びでもしに來たのか？｣

｢いえ、し気になったことがあったので｣

｢貴様はます自らの態度を気にした方がいい。それはまぁいいとして、なんだね？気になることとは｣

｢敵の第3手目。とでも言えばいいでしょうか。今回の敵の東西同時侵攻。おそらくこれは敵の策謀でしょう。時期を合わせた同時侵攻で我々帝國を圧迫する｣

｢おそらくそうであろうな。それでいて第3手目とは？｣

｢敵はまだ全の主攻を出てないと思われる。ということですね。現狀東西からの同時侵攻に帝國はギリギリではありますが耐えうることが出來ます。それは各國が周知してるはずです。東西各方面には堅牢な要塞がいくつもありますし。しかし北か南かからさらなる衝撃を加えられたら帝國はどうなるでしょう？兵ももちろんですが、地形的な部分から見ても帝國の南北は手薄です｣

｢なるほど、では仮にその第3手があるとするなら貴様はどこからと考える？｣

｢間違いなく北の中立國ユイタヤですね｣

｢理由は？｣

｢まず、一つ目の理由としてあげるのは現在の外的な問題として、南の皇國は友好國。さらに皇國は現狀連邦と合衆國の両方とは敵対関係現在も小競り合いが続いてます。それを今から旗替えするのはさすがにと思われます｣

｢二つ目は？｣

｢二つ目ですが、今回の敵の展開の仕方。東部は現在共和國、連合王國と北から順に帝國に攻撃を加えています。おそらく次は連邦からの攻撃が予想されるでしょう。そして我々の守る西部。こちらも敵はここブレメンと南の要塞に攻撃を集中させてます。どちらも我々帝國の目を東西の南部寄りに向けるためのに思われます。｣

室に一瞬の沈黙が流れたあと、シュタイナー元帥は大笑いした。

｢ハッハッハッ！シュペーア將！それは考えすぎだ！と言いたいところだが、今回はさすがとしか言い様がないな｣

｢と言いますと？｣

｢既に東部で遊撃をしている第7師団と東部戦線本部から中央の參謀本部に貴様と同様の意見が申された。現在參謀本部が第7師団と第1師団が北部に野戦陣地の構築に向かってるところだ。だから安心して今回の作戦に參加したまえ。貴様の旅団がこの防衛戦の要になる｣

｢わかりましたよ。｣

1週間後、ブレメン郊外から西に約50kmにある平野にて雙方の中央軍が衝突した。

合衆國軍B軍団4萬に対して帝國軍は西部方面軍1萬5千と帝國國防軍第1軍のうち3個師団3萬の総勢4萬5千地形は平野ではあるものの、帝國軍陣地の方が合衆國軍陣地よりも若干標高が高く、両脇は小高い丘に挾まれており、丘と丘の間の中央部には塹壕を張り巡らせていた。以下の狀況で立地的にも兵力的にも帝國側が優位に立っていた。

その中でシュペーアは一個旅団3千を率いて向かって右側地理的には北側の丘を防衛していた。この一週間で丘の部にアリの巣のような道や部屋を作り要塞化、砲撃にも耐えうるだけの補強もしていた。

しかしシュペーアが相手するのは合衆國B軍団だけではなく、北のA軍団も含まれていた。丘の頂上から北を見渡すと合衆國A軍団5萬と、帝國軍西部方面軍1萬と第1軍の4萬の総勢5萬が睨み合ってる様子が見える位置にあった。

これは南側の丘も同じことが言え、丘の守備を務めるのは第1軍の鋭シューマッハ大佐の率いる連隊2千であった。

南部も北部と同様兵數は拮抗しており、雙方の中央の戦況がこの戦いの鍵になっていた。

明朝9時、合衆國の砲撃を皮切りに戦闘が始まった。合衆國B軍団は野戦陣地と両脇の丘の攻略を開始、南北のA軍団C軍団も同調するように攻撃を開始した。