《アイアンクロス》主攻撃④
「ハインケル中將、前線より伝達です。これ以上戦線の維持は不可能とのこと、我々第7師団管轄の防衛線をし下げましょう」
「押され始めたか…」
戦いは更に5日経過し、北部防衛戦は連合軍が優勢になりつつあった、帝國軍は既に死傷者が2千から3千人に迫りつつあり、中でも急招集された予備役の損耗率は激しく、死傷者の訳のほとんどが予備役からであった。
次に損耗が激しいのは第7師団の面々で、東西の戦線を奔走してからの參戦で、彼らも疲労が溜まっていた。
対して連合軍はじわりじわりと、著実に帝國軍の防衛線を突破していった。
連合軍は既に隘路の三分の一を制圧し、もうあと一息で半分というところまで迫りつつあった。
そのため當初連合軍側に向けて築き上げていた山脈の機関銃陣地などはその機能をほとんど失い、かといって陣地を放置してしまえば連合軍の足がかりにもなるため、殘された彼らはほぼ死兵と化した。
しかし現狀彼らの補給線は途絶えてはおらず、その存在は未だに連合軍の前線への補給路を脅かしていた。だが、連合軍が隘路の半ばまで來てしまえばその補給は途絶え、機関銃陣地に居る帝國軍が連合軍の捕虜になることは間違いなかった。
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「このままでは今の防衛線も突破されてしまう…両翼の兵達を連合軍に突撃させるほかあるまい」
ブルクハルト上級大將がそう言い放つと、ミュラーは激しく機を叩いた。
「バカな!兵を無駄死にさせるつもりですか?!」
「バ、バカだと!貴様!上に向かってその口はなんだ!今すぐこの場から退出しろ!」
「退出しろと!今この大事な局面で部下の意見を私で封殺しないで頂きたい!彼らにはまだ使い道もありますし、撤退させたスナイパー部隊もまだあります!」
「貴様のその口の利き方!私に対する反逆とみなす!これ以降一切の発言をずる!自の天幕で謹慎せよ!処遇は追って伝える!」
「ええ!分かりました!そうやって部下の忠告に耳を傾けずに、歴史に汚名を刻めばいいんです。それでは」
ブルクハルトの橫暴さにため息をつきながらミュラーは自の天幕にり謹慎した。
「報告します。山脈に展開していた部隊ですが、先程突撃を敢行、玉砕との事です。地の利もあってか連合軍側にも多なりとも被害はあった様ですが、戦局を揺るがす程ではなかったとの事」
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「ありがとうベルント中佐」
「いえ…それから謹慎の件ですが、ハインケル中將が取り計らってくれた様で、明日からまた復帰せよとの事です」
「了解した。ハインケル中將には謝の意を伝えといてくれ。それから明日の朝訪問させてもらうとも」
「承知しました…」
しばらくするとミュラーは獨り言を呟いた。
「こうなれば痛み分けしかないな…」
「一撃離ですか…」
「中佐、まだ居たのか…」
「失禮しました。席を外した方がよろしいでしょうか?」
「いや、ちょうどいい、今後の作戦を説明するから紙にまとめてうちの師団の將校達と、それからデュッセルドルフの部隊に渡してきてもらいたい」
「承知しました」
次の日、この時點であと4日で陣地を突破しなければならない連合軍総攻撃を開始した。前日の帝國軍の突撃により多の被害は被ってはいたが、その分前線への補給が改善されたためである。
この攻撃により帝國軍は大きく防衛線を後退させ、隘路の3分の2を失った。
殘る陣地は5つ程しか無く、これを4日間守るのはもはや不可能に近かった。
「ブルクハルト上級大將。私にひとつ作があります」
「なんだね!言ってみろ!」
明らかに苛立ちを隠せないブルクハルトをよそに、ミュラーは意見を申した。
「殘る陣地を全て放棄し、隘路の南側に全軍を展開させ勢いに乗ってきた連合軍を一斉に叩き、的に大打撃を與えます。これにより敵は…」
最後まで言い切る前にブルクハルトは反対した。
「そんなこと出來るはずが無いだろう!もういい!私が前線で指揮を執る!」
靜止しようとしたミュラーを振り切り、ブルクハルトは最前線に向かった。しかしこれもミュラーの手のの1つだった。
強制終了を迎えた軍議から戻り、ミュラーはハインケルに聲をかけた。
「これで負傷してくれれば全軍の指揮は形式上中將が執る事になります。あとは昨日ベルント伝てに渡した作通りにいてもらえると…」
「あまり好ましくないが、國の為だ、ここは目を瞑ってやるが、本來あってはならないからな」
「分かっております。中將にはご迷ばかりかけて申し訳ないです」
「それはよい。お前の日々の功績から差し引いても私のお前に対する評価はマイナスにはならんよ」
そしてしばらくして急報が陣を駆け巡る。
「ハインケル中將はおられますか?!ブルクハルト上級大將が流れ弾に當たり負傷!大至急全軍の指揮を頼みたいとのこと!」
「私ならここだ!伝令兵、全軍に伝達せよ!前衛は戦闘を継続!後方部隊の將校は至急本営に集まるようにと!」
「了解致しました!」
ブルクハルトに流れ弾を當てたのは実はベルントだった。ミュラーは意見申したところでブルクハルトは反対することは既に想定であった、その為あえて意見を申し、頭にを昇らせ前線に向かうようにその心を煽ったのである。
前線であれば流れ弾を裝い負傷させることも容易く、その指揮権をハインケル中將に引き継がせることがミュラーの目的であった。
ブルクハルト上級大將負傷の後、本営の天幕に集められた將校達はハインケル中將から発せられた命令に困を隠せなかった。
「全軍今夜のうちに隘路を出。出した後隘路の出口を半包囲するように展開、敵が出てきた所を一斉に攻撃し敵を砕する。今後の作は以上だ。意見のある者は居るか?」
「敵を素通りさせてもしも失敗すれば帝國は滅んでしまいますぞ!」
「じゃあこのままここでジリ貧の狀況で突破されても変わらんだろう。むしろここで敵に一撃與え、戦力を大きく削がなければこの國の命運は無い。で、他に意見や作戦案があるものは居るか?」
ハインケルがそう言うと、場は靜まり返り、すなわちその場にいる全員が賛とみなされた。
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