アウルベアたちをソフィが手懐けた後、一行はギルドに戻ってきた。

早速ソフィがギルドマスターの部屋に通されて、

アウルベアの一件から勲章階級の昇格を行ってもらった。

これによりソフィはクエストをけることなくGランクの新人から、

いっぱしとされるEランクになったのである。

『これで君はこのギルドのEランク冒険者だ。

Eランクまでのクエストは一通りけられるようになったし、

一つ上のDランクのクエストも條件付きでけられる。

それとこれは討伐……したわけではないが、問題解消になったということで、

ギルドからアウルベア討伐の報奨金、【白金貨】を贈呈する。』

目の前のテーブルに質が良いのが一目で分かるような一際大きな金貨、

【白金貨】がの上に乗せられた狀態でソフィの目の前に置かれた。

「おお、ありがたくけ取るぞディラック！」

喜満面でソフィは白金貨をけ取り、懐にしまった。

ソフィが白金貨を懐にしまったのを確認してから、

ディラックは口を開く。

『ところでソフィ君はこれからどうするのかね？』

それはこの町の冒険者としてこの町に居座ってくれるのかと、

暗に聞いているのだった。

「うむ、実は我は最近この地域に來たばかりでな、

とりあえずは金を稼ぎたいと思っておるから、

當面はクエストをけて報酬を得たいと思っておる。」

その言葉を聞いてディラックはほっとをでおろした。

『そうかそうか、君ならば魔と戦うことの多いクエストも、

難なくこなせるだろうし、あらゆるクエストもこなせるじゃろう。」

「そうだといいのだがな……。

さて、我は店に果実を買いに行きたいのだが、行ってもよいか？」

『………ああ、そういえば君は【レグランの実】が好のようだったな、

今度またギルドの食堂でも出すように言っておこう。』

ディラックがそういうと、

ソフィは初めてあの果実の名前を知ったのだった。

そしてソフィはディラックに頷いた後、

ギルドマスターの部屋を出ていった。

ソフィがギルドのロビーに到著すると、

突然騒がしかったギルドがシーンとなった。

その場にいる者たちが一斉にソフィのほうを見ている。

ソフィはその様子に眉を寄せ、何事かと口を開こうとしたが、

その瞬間多くの人間がソフィの元に詰め掛けてきた。

『お前が冒険者ギルドに所屬して早々、

ギルド指定魔を下僕にしたソフィか！』

『ギルド始まって以來最短で【Eランク】になったって本當？』

『【両斧使いのジャック】に絡まれて、返り討ちにしたってマジかよ？』

十歳ほどの子供の長しかないソフィは、

自分の二倍くらいの、背が高い大人たちに詰め寄られて、

興混じりに質問を投げかけられる。

「ええい！やかましい。何なのだお前たちは！」

ソフィは振り払うように手を振った。

なんでこんなに注目されているか不思議に思ったが、

ふと掲示板を見るとソフィの似顔絵が、

大々的に映し出された紙が、掲示板にってあったのが目にった。

なんと、ギルドの掲示板には………。

【ギルド期待の新人、ギルド指定魔である、

【アウルベア】を手懐けて、Eランクになる！】

このような見出しで、いつ描いたのか、

ソフィが多くのアウルベアを、跪かせている絵が映し出されていた。

そんなこともあり、この【グラン】の町のギルドでは、

ソフィの話題で持ち切りであった。

『ふふふ！よく似てるでしょう！私が描いたのです！私が！』

筆の先端をこちらに向けて、

自慢気な顔を浮かべて笑う、が聲をかけてきた。

「お主がこの絵を描いただと？」

『はい、そうよ！　私は絵を描きながら、世界を旅しているリーネよ。』

リーネと名乗ったはニコニコと笑いながら、

今も用にソフィの絵を描いている。

「む、なぜ我の名を知っておる？……というか、勝手に絵を描くでない！」

えへへと笑いながら、

今描き上げたのだろう一枚の絵を差し出してくる。

『はい、どうぞ。』

屈託のない笑みで似顔絵の描かれた紙を渡されて、

仕方なくけ取る。

「うーむ……確かに絵の才能はあるようだが。」

浮かび上がって見える立的な描寫をした似顔絵は、

確かに素晴らしいものがあった。

「しかしお前はあの場にいなかったと思うが、

このりだされている絵は、いつ描いたのだ？」

もしあの場に隠れて絵を描いていたとするならば、

このの子はソフィですら気づかせない程の力を、

持っているのかもしれないと、し警戒をするソフィであった。

『あはは、何ででしょうね？

世の中には、知らない事のほうが幸せだということもあるの。』

そういって次の瞬間には絵描きのは忽然と姿を消したのだった。

「………なんだと？」

ソフィは次の瞬間、自の魔力回路に魔力を通して、

その魔力で先程のの魔力を探索サーチする。

サーチは使い手の魔力によって、影響下が広がる探索魔法であり、

ソフィ程の魔力となるとこの街一帯全てを探索できる。

「む、いた……、かなりここから離れているが、

まだ追いつけるな、ええいっ！　お主達、どくのだ！」

今も尚、ベラベラとソフィに話しかけていた者たちを払いのけて、

ギルドから出るのだった。

「ほう、なかなかのスピードで我から遠ざかっておるな、

これはただの人間ではあるまい。」

そういってソフィもまた恐ろしい程の速度で、

絵描きのを追いかけていった。

………

……

…

『ふふふ、あのソフィって子可かったなあ、

今度また急に現れて驚かせてあげようっと。』

は年下好きで、可い男の子が大好きだった。

【リーネ　冒険者ランクB　職業：絵描き、？？？】

そして街の外れにある一軒家に到著すると、リーネは家の鍵を取り出した。

どうやらここが彼の家であるらしく、口笛を吹きながら家にろうとする。

しかし、家にる前にポンと肩を置かれた直後、

反的にリーネは弓の鏃のような大きさの、

鋭利な刃を後ろに高速で投げた。

「ほう……貴様、ただの絵描きではあるまい？」

『ええッ！　……えッ？！』

まさか避けられると思っていなかったリーネは、慌てて振り返る。

そして再度驚愕する。

そこにはギルドで確かに撒いた筈の、ソフィが立っていたからである。

『な、どうやってここに？

というかどうやって私を見つけられたの？！』

リーネは確かにギルドの建で姿を晦まして、

そのまま誰にも追いつけない程の速度で、

屋の上を移して追ってこられないように確実なルートを使ったのだ。

まさか見つけられるとは思っておらず、

驚愕した目でソフィを見る。

「何、しばかりお前の魔力を知して追尾したのだよ、

知らなかったのか？　魔お…いや、我からは逃れられない。」

アウルベアを従えているところを見ていたリーネは、

ある程度ソフィの凄さは知っていたが、

まさかここまで異常だとは思わなかった。

『魔力を知って……、貴方何者？

そんなことができるランクEの魔法使いなんて、聞いたことがないわ。』

「まぁそんなことは、どうでもいいだろう。

それより何故お前は我から逃げたのだ？　白狀して我の問いに答えよ。」

リーネはもう逃げられないと観念して、素直に白狀したのだった。

『うーん、まぁ別に君を驚かせようと思っただけで

別に目的があったわけじゃないんだけど。』

リーネは年下の子供を見ると、からかいたくなる格の持ち主で、

今までも街人の小さな男の子をからかってきた。

『今朝あなたがギルドから、ギルドマスターを連れて、

出てきたところを見たから、何だろうと思って、

ついていっただけだったんだけど、

そこでギルド指定魔のアウルベアが出てきたから、

これはスクープだと思って証拠となる絵を描いて、

それをギルド掲示板にり付けて広めただけよ。』

とんでもない事を淡々と喋るリーネだが、

一番気になる事をソフィは訊ねた。

「ほう、我に気づかせずにあの場で絵を描いただと？」

それが本當ならば由々しき事である。

魔王ソフィが周囲を警戒しているにも関わらず、

それを気づかせないどころか、その場で絵を描いていたというのだから、

簡単に信じられない事であった。

『うーん……、別に君になら教えてもいいかな。』

そういうとまたもソフィの目の前でリーネは消えた。

「な、なに？」

慌てて探索魔法サーチで魔力を追うと、目の前にリーネは存在する。

しかしソフィの目には、リーネが見えないのだった。

そしてリーネは何かを解除すると、

急にその場所に、リーネが現れたように見えるのだった。

『という合にこんなじで私は、

姿を完全に消すことができるんだけど、見えなかったでしょ？』

「ああ………一お主は、何者なのだ？」

『………私は忍者なの。』

「忍者……？　聞いたことがないが、そのような種族名なのか？」

ソフィはリーネが人間ではなく、忍者という魔もしくは、

魔族なのかと思い始めた。

『忍者っていうのはね、依頼があれば狙った獲を暗殺したり、

書といった大事なものを誰にも見つからずに屆けたりする、

世を忍び諜報活や、暗殺を生業としている者たちのことよ。』

「ほう……先程のように姿を隠すというのは魔法といった類なのか？」

『うーん、魔法とは違うわね。忍者の中でも私の屬する、

【影忍かげにん】と呼ばれる者たちに伝わる忍で、

限りなく姿を相手に認知されなくさせる忍なの。』

（聞いたこともないが、魔力で位置は分かるが、

確かに我の目にも映らなかった。）

どうやらこの世界ではまだまだソフィの知らない、

ありとあらゆるものがあるようだった。

「クックック、程。実に面白いではないか、し測らせてもらうぞ。」

『え？測るって何……を。』

リーネは自分のいる空間だけが、捻じれたような覚に陥り、

そしてさらに恐ろしい程の重圧で、彼は震え始めた。

ソフィが魔力回路に次々と魔力をつぎ込み、

そして何かを唱えると、完全にリーネはけなくなるのだった。

【種族：人間　別：　年齢：14

名前：リーネ　魔力値：130　戦力値：22770　】

次々とソフィだけに見える、文字が浮かび上がり、

ニーアが使っていた魔法とは比較にもならない程の、

であらゆる報が、彼だけに開示される。

（ほう、この世界で見た中で、一番戦力値が高いではないか。）

そしてソフィが魔法を解くと、リーネはようやくけるようになる。

『はぁはぁ……、一何をしたの？』

「いやなに、しばかりお前の力を見せてもらっただけだ。

それにしても人間の14歳にして、その戦力値は、

なかなかに見どころがあるではないか。」

『えッ！』

教えてもいないのに、突然自分の年齢を言い當てられて、

リーネは驚きを隠せなかった。

『き、君って本當に何者なの？』

「まぁそんな事はよいではないか。それとお前は確かに強いが、

上には上がおる。お前のように人で量のいい者には、

いい寄ってくる、悪い男も多くなるだろう。油斷をせぬようにな。」

リーネはお気にりの年下の男の子から、

顔を褒められてかぁぁっと顔を赤くするのだった。

「では、我は行く。」

そしてそのままソフィは手を振って、その場から立ち去ろうとする。

『ね、ねぇ。ちょっと待って！』

慌ててリーネは呼び止める。

『君の冒険者ライセンスカードを見せて。』

「む、構わんが。」

普通であれば、ギルド職員や他の町にる時以外には、

自分の分を証明するライセンスカードを、

他人に見せるではないのだが、

別段見られても何も困らないソフィはそのまま渡す。

け取ったリーネはありがとうと言って、

自分のライセンスカードを取り出して何かをし始めた。

『これでオッケー。貴方のライセンスカードに、

私のライセンスカード報を載せてフレンド登録をしたから、

何かあればこれでいつでもギルドを通して、

私をパーティにれることができるわよ。』

突然そんなことを言われても、ソフィは意味が分からない。

「ん？　どういうことだ。

別に我は誰ともパーティなど組むつもりもないのだが。」

『そ、そんな寂しい事を言わないでよ、

私は冒険者ランクBで貴方よりもお姉さんなんだから、

いつでも私を頼っていいからね！

今度あなたの冒険者ランクを上げる手伝いをしてあげるから、

聲をかけなさいね！』

顔を赤くして早口でまくしたてるように言いながら、

ライセンスカードを返してくれた。

「あ、ああ分かった、ありがとう。」

『そ、それじゃあね！私はいつもギルドの掲示板のところで、

冒険者の似顔絵を描く仕事をしてるから、いつでも聲をかけて！』

そういって逃げるようにリーネは家の中にっていったのだった。

「う……む、よくわからんが、今度見かけたら聲をかけてみるか。」

自分が無意識にリーネを口説き落とした事にも気づかずに、

レグランの実を求めて店に向かうのだった。