ソフィは今日もまた日課のレグランの実を求めて店を練り歩く。

ソフィが毎日のように店に顔を出しては、

レグランの実を大量に買っていくので馴染の客となっていた。

冗談でもなんでもなく、

ソフィは毎日數十個のレグランの実を買い占めていく。

先日ギルドの場所を教えてくれた店主に、

レグランの実をざるごと買うといって、

手にれたばかりの”白金貨”を渡すと店主は、

『お、おい坊主！突然こんなもん渡されても釣りがねぇよ！』と、

慌てて突き返してきたがソフィがこのざる山のレグランの実と、

換でよい等と言って笑って持って帰ろうとする所を、

店の店主が呼び止めて金銭を立て替えてくれており、

それからもツケてくれているのである。

ソフィは本當に白金貨でも良いといったが、

店主はクエスト報酬がってからでいいと、

頑なにけ取らなかったのである。

それからこの優しき店主をいたく気にっており、

毎日最初にここでレグランの実を買っていくようになった。

そして今日も店で、

レグランの実を買おうとすると店主に聲をかけられた。

『しかし坊主よ、お前がこの町にきてまだ數日だっていうのに、

無一文から白金貨まで手にれてくるなんざまだ信じられねぇよ。』

「全て店主、お前のおかげだぞ。

店主がギルドを紹介してくれたからこそ、

我は【Eランク】になってこうして、

レグランの実を毎日たらふく食べられるのだからな！」

ご満悅といった顔を浮かべながら、ソフィは果実を食べる。

『……いや、Eランクになっても、白金貨は手にらねぇだろ……。』

Eランクのクエスト報酬は多くても銀貨三枚程であり、

白金貨を手にれてるためには、

コツコツクエストをこなしていては、

數日どころか數か月はかかる筈である。

それが數日で笑いながら白金貨を渡してくるのだから、

只者ではないと店主は思ったそうである。

『俺たちが金貨一枚を稼ぐのですら相當苦労するっていうのによ、

白金貨なんて渡されたらたまんねぇよ。』

「むぅ、だからレグランの実と換でいいといったではないか。」

二人が言い爭いを始めると、そこに……。

『ソフィ！早く私に會いに來てよ！』

『うおおおあ！』

音もなく突然忍者のリーネが現れて、驚きで店主は椅子から転げ落ちた。

「おお、リーネではないか。」

レグランの実を齧りながら、挨拶がてら手を挙げる。

『おお！……じゃないわよ！　あんたあれからギルドに全然來ないじゃない！

私がどれだけあんたを探したと思っているのよ……。』

リーネの言葉を聞きながら、ソフィはうーむと唸る。

「いや、まだあれから二日ではないか。

我は毎日ギルドに行くとはいってはおらんぞ。」

そういうとリーネは溜息を吐いて、信じられないといった顔で口を開いた。

『あのねぇ、アンタみたいな強さの冒険者が、

いつまでもEランクに留まってどうするのよ、

アンタがその気になればこのレグランの実なんて、

百個でも千個でも買えるようになるんだから、

ランクは上げておかないと損よ？』

リーネはもちろん自分とパーティを、

組んでもらいたいのが本音ではあるが、

今言った言葉もまた、決して噓ではない。

ソフィはリーネの目から見ても、適正ランクはB～Aだと思っている。

最低でも自分より弱い筈がないと。

「そうだな………、そろそろ一度くらいは、

クエストをけておかねばとは思っておったのだ、では行くか？」

そういうとリーネは笑顔になって頷いた。

そしてソフィとリーネが、

ギルドに向かって歩き始めたのを見て、店主は思うのだった。

（あいつまだ一度もクエストをけていないのにEランクなのか？）

――と。

そして二人がギルドの門を開けて、カウンターに向かって歩き始めると、

口々にソフィを噂する聲が聞こえる。

『お、おいあいつだろ？【アウルベア】を下僕にしたガキっていうのは……。』

『ああ、しかもあいつはEランク筆頭の両斧使いのジャックと、

その仲間三人を瞬殺したんだぞ。』

『とんでもねぇガキだ……！　絶対にアイツに喧嘩だけは売るなよ。』

 ひそひそといったじの聲だが、

ソフィの聴覚は人間より優れているために全て筒抜けであり、

その橫にいるリーネもまた元忍者であり、訓練の末に、

一般人とはかけ離れた聴覚を持っていた為、全て聞こえていた。

「我は別に誰も殺してはおらんのだがな。」

ボソッとソフィが呟くとリーネは、

”噂っていうのは、尾ひれがつくものよ、諦めなさい”と窘めていた。

そして二人がギルドの窓口に顔を出すと、

いつもいる人の付が笑顔で口を開いた。

『ようこそグランのギルドに、本日はどういったご用件でしょうか？』

き通った聲でギルドの付のお姉さんは、

言い慣れているのであろう言葉をかけてくる。

「ああ、クエ……」

ソフィが口を開こうとしたら、先にリーネが早口でまくしたてた。

『私とこの子、パーティ組ませて！Eランククエストを後でけるから。』

人の付嬢はキョトンとしていたが、やがて頷いた。

『承りました。パーティを組むのでしたら、

お二人の冒険者ライセンスカードを、

提示していただく必要がございますが、宜しいでしょうか。』

二人はライセンスカードを付に渡した。

『ありがとうございます。』

付から提示したライセンスカードを、け取ったギルド職員が、

何やらスキャナーを通していく。

そして僅か數秒程で、ライセンスカードを返卻してくれた。

『お待たせ致しました。ライセンスカードをご確認下さい。』

二人は自分のライセンスカードをけ取り、裏面を見る。

提示する前にはなかった項目が増えており、

【パーティメンバー：ソフィ　リーネ】と書かれてあった。

『よし、これでパーティを組めたわね、

早速掲示板で、クエストを探しましょう。』

リーネに手を引っ張られてソフィは掲示板のほうへ向かう。

その様子に付のお姉さんは、笑みを浮かべて、

溫かい目で二人を見るのだった。

・ギルドのクエストのけ方は、

掲示板にクエストの容が書かれた紙が隨時られており、

冒険者がそれを見てけたいと希する、

クエストが書かれた紙を持って窓口に提出する。

そこでランク勲章とクエストレベルが合致していれば、

けることができるのである。

・原則的に一度クエストをけるとそのクエストを達するか、

破棄する旨を窓口で伝えなければ、他のクエストをけることができない。

・クエストは自分のランクより一つ上のランクまでは、

けることが可能できるが、無理に自分より上のランクをけて、

失敗した場合は、ギルド勲章に失敗と記載されて、

何度も繰り返していると、勲章ランクが下がる事がある。

※適正ランクであれば、

何度失敗しても勲章ランクが下がることはない。

・クエストを達した後、一週間以に達したことを、

ギルドに伝えなければ失敗扱いとなる。

・クエストを達すると、ポイントが加算されていき、

自分の階級のギルド勲章の上限までポイントが貯まれば、

ランクアップすることができる。

※ポイントはクエストをけるときの、

紙の右上に記載されており、隨時確認することができる。

『うーん、今りだされているクエストで一番高いポイントは30Pね。』

「ふむ、我は別に慌ててランクを上げようとは思っておらんぞ？」

自分よりもリーネの方が、真剣にソフィのクエストを、

選んでくれているのだった。

『そうね、Eランクなら上限もそこまで高くはないし、

最初はこの辺でもいいかも。』

【グランの町の近くの森に生えているキノコ、

『クラトマイタケ』を五つとってきてほしい。30P】

『単に森に生えているキノコを採ってくるだけっと……、

簡単に思えるけどあそこの森は、

最近までギルド指定されていた、アウルベアの縄張りがあるからね。

もう大丈夫って言われても信用できないのも仕方ないわね。』

そういって紙を渡してきた。

『でも、あんたならこのクエストは何も問題はないわね、

そもそもアウルベアは、あんたの下僕だし。』

厳には下僕というより、配下であるのだが、

まぁ似たようなものかと、口出しせずに紙をけ取った。

「うむ、これを窓口に提出すればよいのだな？」

『ええ、さっきのお姉さんに渡せばいいよ。』

そういってソフィの頭をでようとするので、ソフィはリーネの手を躱す。

躱されたことで口を尖らせていたリーネに、

ソフィは笑みを見せて、窓口に紙を提出する。

「このクエストをけたいのだが、これでよいのか？」

『はい、承りました。』

クエストをける冒険者もない時間帯なので、

二人の様子を眺めていた付嬢は含みのある笑い顔を見せながら、

それでいて気品あふれる振る舞いで仕事をする。

『クエストを破棄される場合は、早めにお伝えくださいね。

それではお気をつけて。』

クエストを理した付のお姉さんは、ペコリと頭を下げた。

『よし、行くわよソフィ！』

またリーネはソフィの手を引っ張って、ギルドの外に連れ出したのだった。

『さて、さっそくキノコを採りに行きましょうか。』

「うむ。それはよいのだが、手をつないだまま森へ行くのか？」

『ええ、森で迷子になったら大変でしょ？』

「それならば森にってから繋ぐものではないのか？」

『え、うんそうだけど、まぁいいじゃない。』

ぎゅっと手を握りなおしてくるリーネに、

仕方がないとソフィは、溜息をついて好きにさせるのであった。

そして二人がグランの街の外に出て、し歩いた先にある森の到著すると、

匂いを辿ったのかアウルベアたちが、

勢ぞろいして森の中からこっちに手を振っていた。

「おお、よく我が來ることが分かったな。」

『ええ、お久しぶりですソフィ様。」

ソフィ殿からソフィ様に呼び方が変わっていることに気づいたが、

ソフィはその點にはれないで置いた。

『それで、こちらの方は？』

メダルを持つアウルベアが、ちらりとリーネのほうを見る。

『初めまして、ソフィとパーティを組んでいるリーネよ。』

ギルド指定であった兇悪な魔として、懸賞金をかけられていた、

アウルベアを前にしても、堂々としているリーネを數秒程、

アウルベアたちは何かを確かめるように見ていたが、やがて頭を下げた。

『初めまして、リーネ殿。

どうやら貴方は、我々を恐れてはいないようですね？』

『そうね、ソフィと親しいのはわかっているし、

貴方たちならある程度、私の実力も分かるでしょうしね。』

先程リーネを値踏みするように見ていたアウルベアは、

戦力値を數値化しなくてもある程度判斷がつく。

もしアウルベアの群れではなく一対一の戦いならば、

リーネが勝つだろうという判斷を下したのだった。

アウルベアはギルド指定の魔ではあるが、

その指定レベルは”C”である。

冒険者ランクBであるリーネであれば、

討伐もできたかもしれない、といった戦力対比値であった。

『ところで今日はどうして森に？』

「ああ、今日はギルドのクエストで、

森の中にあるキノコを採りに來たのだ。」

『そうでしたか。どういったキノコかを教えていただければ、

我々も手伝いますよ。』

「おお、それは助かるな。

しかしどういったキノコかを口頭で説明するのも難しいな、

”クラトマイタケ”っていって分かるか？」

人間がつけた名稱では流石に分からなかったのか、

首を捻って同胞の顔を見るが、

皆一様に分からないといった様子であった。

『ああ、それなら私が絵を描くわ。』

そういって筆を取り出して、

サラサラとあっという間にキノコの絵と特徴を描いてくれた。

とてもリアルに描かれた絵で、を塗れば本當に、

絵がキノコに見える程の立であった。

『こ、これは凄いですね。』

リーネの絵描きとしての技に、アウルベアは嘆の聲を上げた。

『ふふ、當然よ。この絵のキノコあるかしら？』

『だいたい生えている場所は分かります、すぐにご案しましょう。』

そういうとアウルベアたちは、

同胞のアウルベアたちと頷き合うと、森の中にっていった。

ソフィたちも後を追う。

そして十分程で目當てのキノコが集まり、

アウルベアたちの縄張りに案されて、

そこでソフィたちは、アウルベアに歓待されたのだった。

アウルベアの用意したのを焼いて、皆で食べて歓談し笑い合った。

そして夜が近づいてきたので、

そろそろギルドに戻ろうかという話になった。

「うむ、とても素晴らしい日だった。」

『ええ、私も楽しかったわ。』

二人が満足そうな顔だったので、アウルベアたちも笑顔で頷いた。

『またいつでも來てください。

今度は、他の種族の者たちも呼んでおきますよ。』

「ははは、楽しみにしておこう……と、そうだ。」

『………？　どうされましたか。』

「うむ、これからお前のことは、ベアと呼んでもよいか？」

『え？もちろん構いませんが、

名前をいただいてもよろしいのですか？』

「うむ、というより稱みたいなものだが、

名前といえば名前になるかな？」

そしてソフィが【名前をつける】という認識を持ち、

それをアウルベアが【託】したことにより、

ここに【名付けられた魔ネームド・モンスター】が誕生した。

※【名付けネームド】とはこの世界における魔王、

またはそれに準ずる高位魔族によって、

個別に名前をつけられた魔が更なる力を持つことである。

「む、ベアよ名前をつけたら強くなったな？」

ソフィが出サーチを使いベアを確かめると戦力値が上がっていた。

【種族：アウルベア　名前：ベア（ソフィのネームド）年齢：77歳

  魔力値：244　戦力値24748　所屬：大魔王ソフィの配下】

『本當ですか！ありがとうございます。』

『名前をつけたら戦力値が上がるって、貴方魔王なの？』

冗談めかして告げるリーネだが、名付けネームドは、

魔王が名前を付けた時に力が強くなるものなので、

あながち間違ってはいない。だが自分が魔王と気づかれると厄介なので、

ソフィは苦笑いを浮かべて、有耶無耶うやむやにするのだった。

「さて、じゃあ我らはギルドに帰ろうか。」

『そうね、それじゃあなたたち今日はありがとうね！

またソフィとくるわ。』

『お待ちしております。それではソフィ様、お元気で。』

そういってベアたちは森のり口まで送ってくれた後、

その場所で片膝をついて、忠義の禮を盡くしたのだった。

「うむ、お前たちもな！」

ソフィたちが今日やったことはピクニックのようなもので、

非常に楽しいクエストとなった。

そして二人がギルドにキノコを屆けて、クエストを達したことを申し出ると、

付は容を確認して、クエスト完了のハンコを押してくれた。

これで無事に初クエストは功となった。

【種族：魔族　名前：ソフィ　年齢：？？？　別　男

魔力値999　戦力値？？？ 職業：冒険者：ランクE　30p】