ソフィがこの世界に転移してきてもうすぐ一か月となる。

々なことがあったが、ソフィは元の世界に戻れるかという不安など一切なく、

別に戻れないのならこの世界で暮らしてもいいかなと思い始めていた。

「我にはレグランの実があれば、別にこの世界で暮らしていける。」

ソフィは街の中心付近のギルドの近くにある宿に、

この前のクエスト報酬である銀貨三枚で連泊していた。

部屋は質素ではあるがベッドが備えられており、

一通りそろってあり清潔なので、ソフィは何の文句もなく過ごしている。

今日もまた買ってきたレグランの実を齧りつつ、

ベッドでゴロゴロしていると、部屋をノックする音が聞こえてきた。

「む、ってよいぞ。」

ソフィが聲をかけると、この宿で働く若い従業員が部屋のドアを開けた。

『失禮します。ソフィ様、ギルドの使いと申される方が、

ソフィ様に面會を申し出ておられますが、いかがなさいましょうか。』

ここ最近リーネのいもあり、初クエスト以降二人でパーティを組んで、

クエストをこなしており、気が付けばランクEの120Pまできていた。

ソフィはもしかしたら、ランクアップの知らせが、

ギルドから來たのかもしれないと思い、面會の許可を出した。

『それでは、お通しさせていただきます。』

若い従業員は、恭しく頭を下げて部屋を出ていった。

そして數分後、ギルドからの使いというものが部屋にってきた。

『君がランクE冒険者のソフィ殿だな。』

ギルド職員かと思えば、腰に剣を差したいかにもな、

冒険者風な剣士が、部屋にってきた。

「うむ、そうだがお主は？」

『私の名前はサーリサ。

ギルドからの命令をけてソフィ殿に、伝言を頼まれてきた。』

ソフィは気づかれぬように出の魔法を唱えた。

【種族：人間　別：　名前：サーリサ　年齢：21

魔力値：104　戦力値：7795　職業：剣士　冒険者ランクD】

どうやら偽名というわけでもないし、

ギルドから本當に遣わされたのだろうとソフィは判斷した。

「ふむ、聞かせてもらえるかな。」

見た目が十歳の子供で、だいぶ偉そうな口調のソフィだが、

サーリサは特に、嫌な顔一つせずに頷いた。

『ギルドマスターからソフィ殿に指名依頼がっている、

詳しくは明日明朝五時にギルドに來てくれとのことだ。』

「指名依頼とはなんだ？」

ソフィには聞きなれない言葉があり、サーリサに聞いてみる。

『指名依頼とはギルドのクエスト等を通さずに、

直接名指しで依頼を頼むことだ。』

「なるほど、ディラックから、我に直接依頼をしたいというわけだな？」

『そういうことになる。指名依頼の報酬などは依頼主である、

ギルドマスターからお話になると思う。

指名依頼は絶対にけないといけないわけではないが、

普段のクエストよりかはポイントの付與が大きくなるので、

その辺は留意してもらいたい、以上である。』

サーリサの口調は非常に分かりやすく、ハキハキして聞き取りやすいが、

ソフィはまるでサーリサの事を見て、元の世界の人間の國の、

王宮の兵士と喋っているようだと、思うのだった。

「うむ、分かった、伝言謝するぞ。」

『禮には及ばない、仕事なのでな。それでは失禮する。』

一禮をしてサーリサは部屋を出ていった。

「指名依頼というのは初めてだな。

話を聞いてみないとわからないが、面倒でなければいいな。」

中斷していたレグランの実を食べながら、ソフィは呟くのだった。

翌朝、時間通りにソフィは、ギルドの門を開けた。

鍵が開いてはいたが、窓口なども締まり中は閑散としていた。

『おお、待っていたぞソフィ君。』

部屋の奧からディラックが顔を出した。

『とりあえず部屋にってくれ。』

ソフィが中にると、コーヒーとレグランの実を出してくれた。

「おお！気が利くではないか。」

『ふふふ、我がギルドのエース候補の、

好くらいは覚えておかないとな。』

そういってディラックは、

レグランの実の橫に、”書類”を三枚ほど置いた。

「むっ………、これは？」

手に取り読んでみると、ここからかなり離れた場所の地図と、

その場所へ行く為のルート等が書かれている。

『実は今日君を呼んだのは、私から君へ直接依頼したいことがあってね、

近々ギルド対抗戦が行われるのだが、その対抗戦に出場してしいのだ。』

「ほう、ギルドの対抗戦とな？」

『そうだ、このミールガルド大陸にある全てのギルドが參加する。』

「それはそれは……かなりの猛者たちが出そうだな。」

『うむ、我らのギルドも毎年參加はしているのだが、

まだ一度も決勝トーナメントにすら、いけたことがないのだ。』

ディラックは非常に悲しそうな顔をしながら話す。

「そうなのか？我から見れば、リーネ等はなかなかの逸材だと思うがな。」

リーネは冒険者ランク勲章はBで、さらに忍で姿を消すこともできる。

魔力知のできる者がいれば、彼の場所を探ることもできるが、

今までこの世界で見てきた者たちから判斷して、そうはいないだろう。

『いや、彼は対抗戦には出られないのだ。』

「出ないのではなくて、出られない？」

『彼はこのギルドの所屬ではなく、別のギルドの所屬の冒険者なのだ。』

「それならば再度、このギルドに所屬する、

手続きをすればよいのではないか。」

當然の疑問をディラックに投げかけるが、

彼はこのギルドには、所屬する意思がないらしく斷っているという。

『一度斷られている手前、そう何度も勧するわけにもいかないしな。

冒険者というのは、基本的に自由なものだ、

何度も勧するのは、冒険者ギルドとしてはよくない。』

「程、確かに。となると、今このギルドにいる者で他に誰が出る？」

『この前に私の護衛をしてくれたニーアと、ディーダが出る事になるだろう。』

ニーアとは冒険者ランクCの、魔法使いである。

「あやつらか……。」

ニーアは相手の魔力値も測れるほどの、

謂わば、ランクCに違わぬ中堅クラスであるのだろう。

しかし冒険者の平均がまだよくわからないソフィでも、

優勝は難しいのではと思ってしまう。

『ギルド対抗戦の出場枠は三名、君が出てくれないとなると、

冒険者ランクDの者から、選抜することになるだろう。

「このギルドにランクAやBの冒険者はいないのか？」

ソフィはこの町に転移してきて一か月ほど経つが、

リーネ以外のBランク以上を、見たことがないのだった。

「ランクAパーティとBパーティがそれぞれ1チームずつ所屬しているが、

どちらもクエストで、遠征していて參加することができないのだ。」

基本的にランクB以上になると遠征となるクエストが主流になり、

町の近くでけるクエストは、Cランク以下の冒険者が託するのだそうだ。

「ふむ、仕方ないな。他に出場する者がいないのならば我が出よう。」

ソフィの言葉にディラックは喜満面で口を開いた。

『おお！出てくれるかソフィ君！

よし指名依頼の報酬は、出來るだけみのを出そう。』

そういってディラックはをでおろしたのだった。

「それで対抗戦を行う場所が、この地図に書かれた町ということなのだな？」

『うむ。【サシスの町】の近くまでは、馬車の定期便が出るが、

ギルド対抗戦が近い今は人が多く、混雑することが予想されるのでな、

馬車で途中まで乗って、そのあとは歩いて行った方が早いだろうな。』

「分かった。その辺はお主らに任せよう。」

『參加してくれるのならば、この後すぐに町を出発してもらうことになるが、

準備があるならば、直ぐに用意をして來てもらいたい。』

「いや、我はこのままでよいぞ。」

『いいのか？………、分かった。それではニーアとディーダも、

待ち合わせ場所にもうすぐ來る頃合いだ、一度合流しよう。』

ソフィとディラックたちはギルドの建を出て、

そのまま、町の口の合流地點へ向かうのだった。

………

……

…