合流地點にソフィたちが到著すると、すでにニーアとディーダは來ていた。

『やはり君も參加するか。』

ニーアが開口一番ソフィを見ていった。

『彼がEランク冒険者なのが、おかしいくらいですからね。』

ディーダもこの前のアウルベアの一件を思い出して、

苦笑いを浮かべていった。

「む………。お主たちも前に見た時より、だいぶ強くなったのではないか？」

『流石、分かるみたいだね。』

【ニーア　魔力値234戦力値15154】

【ディーダ　魔力値59　戦力値9770】

ニーアの魔力値だけを見れば、

【名付けネームド】となったベアと肩を並べる程である。

「対抗戦とやらに出る者たちが、どれほどの強さなのかが分からないが、

今のお主たちならば、決勝に出ることは容易そうに見えるぞ。」

ソフィがそういうと、ニーアは苦笑いを浮かべて首を振った。

『ソフィ君、このミールガルド大陸は広い。

そしてミールガルドのギルドの中に、【サシス】という町がある。

そこのギルドに、とんでもない強さの冒険者がいてね。

去年の一回戦、私はまだ代表ではなかったのだが、

我がギルドの代表選手は今の私と同じランクCで、

とても強い選手がいたのだが、あっさりと相手に負けてしまったんだ。

その時の相手が、【サシス】の町のギルドの代表で、

冒険者ランクAのリディアという選手なのだ。』

「ほう、優勝候補と予選の一回戦で、當たってしまったというわけだな？」

ソフィの言葉に頷くが、まだ話は終わっていなかった。

『リディアのほかにも、ローランドのギルドのマケドや、

リルバーグのギルドの”スイレン”さんも同じく冒険者ランクAで、

彼らも桁違いの強さを持っているんだ。』

その中で【グラン】のギルドは最高でもCランク勲章。

これはディラックが必死だったのも、頷ける話だとソフィは思うのだった。

「我はランクEで出場するわけなのだが、我以外にもEランクがいるのか？」

ソフィの言葉を聞いてニーアたちは顔を見合わせるが、

苦笑いを浮かべるだけであった。

「……いないのか？」

『去年までは最低でもDランクが出場していたが、

今年は分からんからな。』

目を合わせずに、ディラックは口を開いてそういった。

「まぁよい、我はこのギルドに世話になっておるしな。

出場するからにはグランのギルドを優勝させてやろう。」

『それでこそソフィよね。』

ソフィの言葉に喜んだ三人が聲をかけようとしたとき、

の聲が突如、聞こえてきたのだった。

その聲を聞いたソフィは、すぐに誰なのか理解するのだった。

『やっほ～！』

聲の主は、忍者のリーネであった。

『リーネ君、どうしてここに？』

『私の家の窓から、あなた達の姿が見えたから、

こんな朝早くに何だろうと思って、確認しにきたの。』

そういえば町のり口はリーネの家の近くだったな。

と、ソフィは家の方角の方を見上げた。

『それで今年はソフィが、ギルド対抗戦に出場するのね？』

「うむ。お前は出ないのか？」

リーネは複雑な顔を浮かべた後、憂いを帯びた顔で斷った。

『………うん、私は私のなすべき事をするまでは、

私の町のギルドからは、退するつもりはないわ。』

ソフィはリーネの言う為すべき事というのが、何なのか気にはなったが、

他者の事であるだけに、深くは追及しなかった。

「そうか………。まぁ代わりに我がこのギルドを優勝させてやろう。」

『頼りにしているぞ、ソフィ君。』

その場はディラックの言葉で締められて、

一行は対抗戦が行われる街【サシス】に向かうことにした。

サシスへは隣町【コーダ】の町から馬車便と呼ばれる移サービスを使い、

馬車に乗りながら近くまでいき、距離が近づいたところで、

徒歩で【サシス】にるつもりであった。

対抗戦が近づくと、ミールガルド大陸中から観客や出場者、

商人たちが溢れかえり混雑が予想される。

そして何より活躍したギルドには翌年以降、

有名人と同じギルドにりたいと願う、若者冒険者たちが大量に、

所屬するという期待もあるので、

この対抗戦はまさしくギルドにとっては命懸けとなる。

グランの町のギルドは、毎年一回戦か二回戦敗退ばかりが続いていて、

決勝どころか予選リーグから進んだことすらなかった。

グランは冒険者自は多いが、

基本的にはFからDの冒険者が目立っている。

昔はCからBの冒険者もそこそこいたが、

ほとんどが対抗戦の後に別の町へ移住したり、

ギルドを変えたりして引き抜かれていったのだそうだ。

グランはギルドが自治としていることもあり、

別の街のように貴族が多くいる訳でもない。

それがいい所でもあり不便なところもあるのだった。

今からいく隣町のコーダは漁業が盛んではあるが、

グランのようにギルドはなく、

若者がない悩みを抱えて例年過疎が進んでいた。

定期便として馬車移サービスがあることが救いで、

そのおかげで商人ギルドから商売人が、

派遣されて商品が流通していて、

ある程度の不便さはなんとか緩和されている狀態である。

コーダに向かう途中ソフィは、

コーダの魚のうまさなどを聞かされながら歩いていた。

當然のようにリーネもついてきてはいるが、

対抗戦に參加するわけでもないので、完全に観気分である。

そしてグランの町を出発してから二時間程が過ぎ、

隣町のコーダと、グランの中間地點というところまで來る。

ソフィたちは休憩の意味も込めて、皆で食事をとることにした。

基本的に冒険者たちのキャンプ中にの食べといえば、

獣のを干したが主流である。

味しさよりも、空腹を抑えるための食事と言った様子で、

嬉しそうでも無く皆、事務的に食べ始める。

貴族たちが移の時など、お抱えのシェフを引き連れて、

キャンプ場で調理などをすることもあるが、

一般的な冒険者には、縁遠い話であった。

「それにしても隣町へ行くだけでも相當に遠いのだな。」

ソフィは干しを齧りながら、し不満をらす。

魔王であった頃は基本的に魔王城で過ごし、

何かあれば魔法で別の町に移していたので、

久々にこれだけの距離を歩いたことになる。

『昔はもっと大変だったんだ。

今みたいに道も整備されておらず、魔がもっと活発的でな。』

ディラックは遠い目をして昔を思い出しながら聞かせてくれる。

『それにもうし治安が悪い時期があって、

盜賊なんかもよく、出沒していましたよね。』

ディーダはまだ年齢も若いが、昔のことをよく知っているようだった。

『ああ。盜賊が頻繁に出てくるので、

今みたいに商人が、個人で來るようなこともなくてな。』

當時のグランは今の名になっている店通りなどはなく、

月に數回商人がまとまって來る、

キャラバンという形で商売をしていたらしい。

『ソフィ君の好きな、レグランの実なども売り手がなくて、

日用品や盜賊と戦うための、武がメインだったな。』

ディラックがそういうとソフィは、苦笑いを浮かべながら、

その時に、この町に來なくてよかったと告げるのだった。

リーネが『アンタはレグランの実があればいいものね。』

というとソフィを除いた一行は、笑いに包まれた。

そうこうしているうちにようや、く一行はコーダに到著した。

漁業が盛んというだけあって、海には停泊している船が多くみられる。

「おお、ここがコーダか！リーネ、見よ、

魚市場があるぞ、魚を見に行こう。」

ソフィは珍しさから、レグランの実を見つけた時くらいの興であった。

『え、うん、行こう行こう！』

リーネは嬉しそうなソフィを見て、

自分もうれしくなってついて行こうとする。

『ちょっと待つんだ君たち！

我々は遊びに來たんじゃないんだぞ！』

ディラックは慌てて、駆け出そうとしていた二人を呼び止める。

傍から見れば十歳と十四歳の子供たちを窘める、

お父さんのように映ったことだろう。

『もうすぐ定期便の時間なのだ、

観は帰ってきてからにしてくれ。』

ソフィは渋々といったじで頷いた。

「む、そうだったな。よし、我への報酬は好きな魚を

食べさせてもらうことにしようか。」

クエスト報酬について考え始めたソフィだったが、

ニーアとディーダはそれでいいのか……と、ソフィを見ていた。

『サシス方面、五人分。』

『あいよ、子供料金一人、大人四人で銀貨五枚だよ。』

ディラックが馬車便の商人に料金を支払っていたが、

ソフィは自分が子供料金で支払われている事に、

複雑な面持ちで見ていた。

馬車の者に挨拶をして、

屋付きのそこそこ豪華に見える馬車に五人は乗り込んでいく。

『それではここからサシスの近くまで行くが、

道中魔が出ることがあるので油斷せずにいてくれ。』

ディラックの言葉に皆が頷いたのだった。