『ぐ、はっ……。』

ニーアはその場に倒れた。

そして、審判がムラマサに勝利コールをかけようとしたが、

その瞬間にムラマサも意識を失ってそのまま倒れる。

両者ノックダウンとなる。

『むっ……。』

審判がムラマサとニーア両方の意識を確認するが、

どちらも意識が戻りそうにない為に、

両者引き分けドローの判斷を下した。

これでグランは０勝１分となり、勝ち抜き戦ルールなので、

大將ソフィを殘すのみとなった。

観戦室を含めて、観客席も大いに盛り上がる結果となった。

『負けたけど、今の魔法使いはすげぇよ！』

『ああ、ニーアって言ったか？　あの魔法使いは今後に期待だな。』

冒険者ランクCのニーアが、

多種多様に魔法を展開して、格上と戦い引き分けたので、

拍手が雨のように降り注いで、健闘を稱えたのだった。

………

……

…

『うむ、素晴らしい試合でしたな。』

ヘルサス伯爵がそういうと、

マーベル侯爵も頷き、ニーアに拍手を送るのだった。

ディラックは今の勝負の結果に満足はしたが、

今回も決勝へは進めなかったかと、半ば諦めのを顔に浮かばせていた。

ソフィがいかに強いといっても、この後二連戦をしなければならない上に、

前回準優勝へと導いた冒険者Aのスイレンが控えている為に、

諦めの聲が、発せられるのも無理はなかった。

擔架を持ってきた救護班が、ニーアとムラマサの両者を慎重に、

擔架に乗せて醫務室へと運んでいった。

その様子を見ていたソフィは、歩を進めてリングに上がる。

ついに対抗戦の盤上に、姿を現すのだった。

そして、ムラマサの後に出るミラリという魔法使いも、

次いでリングに上がってくるのであった。

『あのガキが大將か、どうやら今のニーアって選手が本命だったんだろうな。』

『ああ、數揃えであの子を、

大將に持ってきたのだとしたらもうだめだな。』

観客席にいるものたちは、ニーアの試合がとてもよかっただけに、

殘念そうに話始めたのだった。

ディラックやリーネも、ソフィが強いのを知ってはいるが、

冒険者ランクAのスイレンとの二連戦は流石に厳しいとじていた。

この場にいる全ての者が、リルバーグの勝利を疑わなかった。

――こ　の　時　ま　で　は。

『それでは、試合開始！』

審判が合図を開始するが、両者はこうとしない。

冒険者ランクBの魔法使いミラリは、格下のランクE、

それも10歳くらいの子供が相手ということで、

どう手加減をして、怪我を最小限に抑えるかを考えていた為である。

しかし、ソフィは……。

「………どうした？　悪いが我は貴様には興味がないのでな、

さっさと終わらせてしまってもいいかね？」

『なっ……！』

遙か格下のランクEが急に、でかい口を叩いてきたのが、

気にらなかったのか、ミルリは手加減してやろうと思っていたが、

一切とその気はなくなった。

『てめぇに痛い目を見せてやる』

――上位魔法、【炎渦フレイム・ボルテックス】。

無詠唱で放たれる上級炎魔法が発されて、

ソフィの周りを瞬く間に炎の渦が迸り、

ソフィを囲むように渦が出來上がっていき、

ばちばちと大量の火のがソフィに向かって飛んでいく。

とても10歳の子供が耐えられるではないと、

その場にいる全員が確信する。

………だが次の瞬間、その場にいる者たちの予想は裏切られた。

炎の渦に巻き込まれた筈のソフィは、笑い聲をあげているのである。

「クックック」

『……な、なんだこの魔力は、ぐっ……。』

ある程度相手の魔力を測れる上級魔法使いであるミラリは、

異様な魔力の圧をじて、吐き気を伴いながら恐れ慄き始めた。

「殘念だが、我にこの程度の魔法は通じぬ。』

そういうと、炎の渦に巻き込まれているソフィは、

何事もなく、その中心で魔法を唱える。

「………喜べ、我が本當の炎の魔法を教えてやる。」

――超越魔法、【終焉の炎エンドオブフレイム】。

瞬間、會場は迸る閃に包まれた。

ソフィの純至高な魔力によって生み出された炎は、

ミルリの炎をあっさりと飲み込み、そのままミルリを包んで、

一気に燃やし盡くそうとする。

『あ……ヒッ……し、死ぬ……』

「クックック、殺しては失格になるのでな。

使う魔力を最小限に押し留めておいてやる。」

炎はミルリを飲み込み數秒燃えていたが、

燃やし盡くす寸前になって炎はあっさりと消えた。

例えソフィが、この形態であっても【終焉の炎エンドオブフレイム】を全力で放てば、

こんな規模の會場ならば全てを飲み込んで、

數秒に満たぬ間に完全に消し炭になるが、

全力の一割にも満たぬ魔力だった為に、

救護班がすぐに手當てをすれば、命に別狀もなく済むであろう。

リングの上には笑みを浮かべたソフィが、勝者として殘るのであった。