《じゃあ俺、死霊《ネクロマンス》で世界の第三勢力になるわ。》1-2
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『それで、どこに向かっているんですか?』
「決まってるだろ。こういうのは最初、村で報収集するのが王道なのさ」
俺たちは森へ向かう前に村をたずねることにした。RPGの基本だろ?ばあちゃんの家は、村のずいぶん外れの方にあったけど、道のずっとさきには何軒かの集落が見えた。きっとあそこなら話を聞けるだろう。
左右に石垣の積まれた道は、一直線だから迷いはしない。垣の外には緑の若草がさらさらと風に揺れていた。
「のどかなところだなぁ」
『そうでしょうか。面倒なところですよ、田舎というものは』
「緒のないヤツ……あ、そいえば」
一つ気になっていたことがあった。俺はガラスの鈴を見下ろしてたずねる。
「お前、なんて名前なんだ?」
『はい?私ですか?』
「うん。いつまでもお前ってわけにもいかないだろ」
『別に私は構いませんが』
「俺がイヤなの!ほら、教えてくれよ」
『と言われましても、私に貴方達のような個の名前というのはありませんから……製品名はエゴバイブルです』
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「それは何というか、犬に“おい犬!”って言ってるみたいじゃないか?」
『はあ。あ、一応銘柄は魂の寫本ビブリオ・ジ・アニマといいます。私たちを作った職人のエゴバイブルは皆この名前ですね』
「へえ。アニマ……なんかカッコいいな」
『ええ。卓越した技を持つ名工です。魔道の職人としては、この大陸でも五本の指にるでしょう。ちなみにその腕前は他にも……』
「よし!じゃあお前はアニだな!」
『……はい?』
「アニマだから。それともビブとかのほうがいい?」
『……語はアニの方がいいと思います』
「そうだろ?じゃあお前は今から、アニ!」
『好きに呼んで下さい。呼稱にこだわりはありませんので』
ふふふ。口ではなんのかんの言いつつ、実は喜んでいるんだろ。俺には分かる。
「じゃあさっそく、アニ~」
『うわ、うっざいですね。やめてもらっていいですか』
こいつ時々、ほんと辛らつだよな……
『それよりも。あそこにいるのって、會いたがっていた村人なんじゃないですか?』
おっと、しょぼくれてて気づかなかったけど、いつの間にか村のすぐそばに來てたんだな。畑作業の息抜きだろうか、中年のおばさんが腰をさすって、道端に腰掛けていた。
「休憩中なら、話しかけやすいな。じゃあさっそくインタビューしてみるか。すぅ……おーい!」
「んん?誰だいあんた、見ない顔だね?」
「ええ。通りすがりの、えー……勇者です。こんにちは」
俺がぎこちないなりに、懸命の笑顔で挨拶すると、おばさんはぷふっとふきだした。
「勇者だって?くぁっはっは、そりゃまた、つまんない冗談だねぇ」
「え?いやあ、あはは」
おかしいな、冗談だと思われたらしい。ばあちゃんにも疑われたし、俺そんなに勇者っぽくないのか?
「えーと、いちおう、本當の勇者なんですけど」
「あん?……あんた、笑えないと言ってるんだよ」
な、なんだ?おばさんが急に無想になった。
「いや、噓じゃなくて、ホントのことなんですけど……」
「ハッ、ならなおのことお斷りだよ。下らない悪ふざけがしたいだけならとっとと行っとくれ。あたしゃ忙しいんだ」
おばさんはそれで話は終わりだとばかりに腰を上げた。
「あ、ちょっ、ちょっと!待ってください、なんだか、勇者が嫌いみたいですけど……?」
「……嫌いだって?この國で勇者を好きなヤツなんていやしないだろ。あんたも大概にしないと、いつか痛い目見るよ。さ、もういっとくれ、仕事の邪魔だよ!」
おばさんはしっしと手を振ると、腰を叩きながら行ってしまった。後にポツンと殘された俺は、アニにぼそりと話しかける。
「……アニ、今の話、どう思う?」
『ごく一般的な反応かと思います。この國の住民は勇者をよく思わない傾向にありますから』
「えー!それ、もっと早く言ってくれよ!」
『聞かれなかったので。字引は聞かれた事にしか答えられません』
ほんとか、こいつ?さっきじゃけんに扱ったから、ここで仕返ししてるんじゃないだろうな。
「なら聞くけど、どうして勇者が嫌いなんだ?だって、召喚したってことは、自分たちが招いたんだよな」
『ええ。十三年前に復活した魔王を倒すべく、異界より召喚されるのが勇者です。しかし、過去に勇者が原因で國が荒れた事で、人々は勇者に対して疑いを持っているようです』
「なんだよ、先輩のせいか。じゃあ勇者ってことは隠した方がいいのかな」
『皆が皆ではないでしょうが、その方が賢明でしょうね』
「騙してるみたいで、あんまりいい気分はしないけどな」
やがて道幅は広くなだらかになり、そのまま進むと村の大通りらしい道へと出た。流石に人も多く、俺は手當たり次第に話しかけたけど、よそ者の俺に警戒したのか、あまり多くを聞くことはできなかった。
「の子ぉ?村はずれの森に?バカ言うな、あんなとこ大人でも近づかないよ。確かだっていうのか?なら今頃モンスターの腹の中にでもいるんじゃないか?」
「何だって?婆さんの孫?ああ、村はずれの……ヴォルドゥールさんのとこか。あの婆さんも年だからな、あんたも間にけない方がいいぞ」
「三年前に居なくなった? ああ、そう言えばそんな事もあったかもな。だとしても不幸な事故だ、それ以上話す事もないよ」
とまあ、この調子だ。うーむ、手強いな。けどなんだろう、村人たちの態度は、俺を怪しんでいるのを差し引いても、どうにも淡白な気がしてならない。人ひとりいなくなったって言ってるのに、全然とりあおうとしてくれないなんて。そんなことを繰り返していたら、話を聞いてくれる人はほとんどいなくなってしまった。それでも殘ってくれた人といったら……
「村はずれの森にぃー!の子が行ったっきりなんだぁー!」
「あぁんだって?」
「だから、の子がー!」
「おお!オナゴならワシも好きじゃぞ。ワシは若い頃はそりゃもててなぁ〜」
「くっ……」
この有り様だ。俺が半ばヤケクソで聞き込みをしていた、その時だ。
「そこのあなた。何大聲を出しているの」
「はぁ、はぁ、え?」
つづく
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