《じゃあ俺、死霊《ネクロマンス》で世界の第三勢力になるわ。》4章 1-1 易都市ラクーン
1-1 易都市ラクーン
「うわー、でっかい町だなぁ」「うわー、大きい街ですねぇ」
俺とウィルは、そろって嘆の聲を上げた。
俺たちは今、巨大な城壁に囲まれた都市・ラクーンの前にいた。午後の斜めの日差しのもと、幅の広い道がまっすぐ町へと続き、り口である堅牢な門へと向かっている。
この一日前、俺たちは亡霊と化した騎士が守る幽霊城に赴き、そこに囚われ続けていた、かつての城民たちの魂を自由にする手伝いをした。俺たちはその行いの対価としてしの金品を手にれ、この世界にきて初めての買いをするために街を目指しているんだ。
ところで、その時に獲得したのは品だけじゃない。もう一人、新たに俺たちに仲間が加わったのだ。その仲間が町のほうを手で示した。
「あそこがラクーンの町でございます。易都市であり、その品數の多さは王都にも匹敵すると言われています……が、ことさらに発展したようですな」
壯年の聲で言ったのは、鎧の騎士・エラゼムだ。彼自もまた、町の外観に驚いているようだ。
Advertisement
「吾輩のいた時代からかな街ではありましたが、この百年でさらに大きくなっております。まったく大したものだ」
「へえ、そのころから大きな町だったんだ」
「はい。吾輩の時代から、ここは複數の街道がわる流地點でしたから。人とが多く集まる町です」
そう話すエラゼムの聲は、虛空にこだまするような獨特の響きをしている。それもそのはず、なぜならエラゼムの鎧の中は空っぽ、空だからだ。彼は、本當は百年以上前の時代に生きていた人なのだ。今はわけあって亡霊となり、鎧に憑りついているのだった。
「なぁ、ところでなんだけどさ。あの向こうに見えてる、門みたいなのってなんだ?どうして町のり口に門があるんだろう」
「あれは関所ですよ」
「関所?」
「ええ、ラクーンは様々な旅人が訪れる町。なかにはよそから流れてきた無法者や、流刑の犯罪者などが混じっていることがあるのです。そういった輩をはじくために、ああして最初に検問をしているのです」
「な、なんだって……」
それを聞いて、俺はさーっと青ざめた。や、やばいじゃないか。
「桜下殿?なにも、そんなに恐れることはございませんぞ。検問といっても、簡単な質問をされるだけです。旅の目的や荷車の中を確認される程度で……」
「それがやばいんだよ。いちおう、俺は分を隠して旅をしてるんだぜ。まぁ俺が勇者ってことはさすがにバレないと思うけど、お前たちは……」
「む、おぉ?そうでございましたな……」
そうなのだ。今俺と旅をしている仲間たちは、俺以外全員人間じゃない。その訳は、ゾンビ、ゴースト、鎧の亡霊メイルレイス、そしてしゃべる魔法の鈴だ。ずいぶん豪華なメンツだな?
「たぶん、フランはどうにかごまかせる。あんまりじろじろ見られると、ちょっと苦しいけど……それにウィルも平気だな、幽霊だから」
俺はゾンビのフランと、ゴーストのウィルのほうを見た。フランは、が紙のように真っ白だが、パッと見はかわいらしいの子だ。ただし、その両手には巖をも溶かす毒爪が生えている。が、これはアニが出してくれた魔法のガントレットで覆い隠しているから、おそらく大丈夫だろう。ウィルはそもそも普通の人には見えないし、聲も聞こえない。幽霊だからな。
問題は、エラゼム。この鎧の騎士だ。
「エラゼムも、パッと見はふつーなんだけどなぁ……頭さえあれば」
そう、エラゼムはいわゆる首なし騎士なのだ。これでは一目で亡霊だということがバレてしまう。
「死霊だってことがバレると、芋づる式に俺がネクロマンサーで、勇者だってこともバレるからなぁ。どうにかしなきゃ」
「申し訳ありません桜下殿。吾輩のせいで……」
「いいって、責めてるわけじゃないよ。ほんとに真面目だな、エラゼムは……しかし、どうすっかな。なにか被せとこうか?」
俺はカバンの中をごそごそと漁る。む、鍋が出てきたぞ。し焦げてはいるが……俺がそれをじっと見つめると、エラゼムはギョッとしたように、慌てて手を振った。
「そ、そうですな。すっぽりと被れる頭巾などいかがでしょう。なにか、マントかローブのようなものがあれば……」
ふむ、確かにそれもいい。俺が鍋をしまうと、エラゼムはほっと息をついた。しかしそこで、ちょいちょいとウィルが手招きした。
「けど、桜下さん。エラゼムさんに布をかぶせても、結局頭のところがへっこんじゃうんじゃないですか?それだとさすがに怪しまれるんじゃ……」
「あ、それもそうだな。う~ん」
俺とウィルとエラゼムが頭をひねっていると(一名は比喩表現だ。頭がないから……)、フランがすっと自分の腕を突き出した。
「ねえ、なら“これ”は?」
そういってフランは、自分のガントレットを指さした。
「“これ”なら、頭にかぶせるようなもあるんじゃない?」
「あ、そうか。なるほど」
俺がポンと手を打つと、ウィルが不思議そうに首を傾げた。
「桜下さん、どういうことですか?」
「あ、ウィルは知らないんだっけ。あのガントレットは普通のガントレットじゃないんだ。バー……何とかって言って、魔法の素材でできてるんだよ」
そうだった、アニが出してくれたあの魔法の馬たちには、ほかにもいろいろな種類があった。うまいこと頭に乗っけられれば、兜の代わりになるかもしれない。俺たちはいったん道を外れて、近くの木立の中に移した。ここなら人目にもつかないだろ。
「ていうことでアニ、またあの道を出してくれよ」
『承知しました。では……』
アニはぶつぶつとつぶやくと、馬を呼び出す呪文を唱えた。
『スクレイルストレージ』
シュパァァァ。俺の足元に青くる魔法陣が浮かび上がった。の中に、いくつもの革製の鎧が現れる。鞍や蹄鉄、その他何に使うのかもわからないような魔法の馬たちだ。
「さて、この中から兜に使えそうなものと言えば……」
『あ、それなんかどうですか。馬用の兜、チャンフロンというのですが』
アニからの筋が放たれて、一つの馬を指し示した。細長い兜のようだ。なるほど、まさにウマヅラ用だな。
「人間のにしてはちょっと面長すぎる気もするけどな……エラゼム、試してみてくれないか?」
「承知しました。では……」
エラゼムはそのチャンフロンという兜を手に取ると、自分の首の上にそっとかぶせた。
「いかがでしょうか」
「んー……見た目うんぬんというよりか、中がないのが気になるなぁ、やっぱ」
兜の隙間から鎧の向こう側が見えてしまっている。これじゃ誰が見ても中がないとわかるだろう。
「中ですか……し待ってくだされ。では、これでどうでしょうか」
エラゼムはこんこんとの鎧を叩いた。何をしようっていうんだ?するといきなりエラゼムの首から、ごわっと黒い瘴気が吹き上がった。
「わっ。エラゼム?」
「む、し調整が難しいですな。もうし抑えます……」
そう言ったとたん、黒い瘴気はしゅっと弱まり、ちょうど兜の中に納まる程度になった。
「これで、中があるようには見えませんでしょうか?」
「おぉ。うん、真っ黒だけど、空っぽはなくなったな。いいんじゃないか」
ちょっと黒の騎士ってことにすれば、まぁごまかせる気がする……かな?ウィルがいぶかしげな視線を向ける。
「いいんでしょうか……?」
「だ、だいじょぶだよ、うん。それより、エラゼムのその、モヤモヤはなんなんだ?瘴気みたいだけど……」
「ええ、そのとおり。瘴気です」
「え……」
「心配めされるな。ちゃんと抑えておりますので、桜下殿たちに悪さすることはございません。もちろん、ほかの人間にも」
「そ、そうか」
瘴気って、そんなふわっとした使い方をしてもいいのかな……?エラゼムが大丈夫っていうんだから、平気なんだろうけど。
つづく
====================
読了ありがとうございました。
続きは【翌日0時】に更新予定です(日曜日はお休み)。
====================
Twitterでは、次話の投稿のお知らせや、
作中に登場するキャラ、モンスターなどのイラストを公開しています。
よければ見てみてください。
↓ ↓ ↓
https://twitter.com/ragoradonma
剣聖の幼馴染がパワハラで俺につらく當たるので、絶縁して辺境で魔剣士として出直すことにした。(WEB版)【書籍化&コミカライズ化】【本編・外伝完結済】
※書籍版全五巻発売中(完結しました) シリーズ累計15萬部ありがとうございます! ※コミカライズの原作はMノベルス様から発売されている書籍版となっております。WEB版とは展開が違いますのでお間違えないように。 ※コミカライズ、マンガがうがう様、がうがうモンスター様、ニコニコ靜畫で配信開始いたしました。 ※コミカライズ第3巻モンスターコミックス様より発売中です。 ※本編・外伝完結しました。 ※WEB版と書籍版はけっこう內容が違いますのでよろしくお願いします。 同じ年で一緒に育って、一緒に冒険者になった、戀人で幼馴染であるアルフィーネからのパワハラがつらい。 絶世の美女であり、剣聖の稱號を持つ彼女は剣の女神と言われるほどの有名人であり、その功績が認められ王國から騎士として認められ貴族になったできる女であった。 一方、俺はそのできる女アルフィーネの付屬物として扱われ、彼女から浴びせられる罵詈雑言、パワハラ発言の數々で冒険者として、男として、人としての尊厳を失い、戀人とは名ばかりの世話係の地位に甘んじて日々を過ごしていた。 けれど、そんな日々も変化が訪れる。 王國の騎士として忙しくなったアルフィーネが冒険に出られなくなることが多くなり、俺は一人で依頼を受けることが増え、失っていた尊厳を取り戻していったのだ。 それでやっと自分の置かれている狀況が異常であると自覚できた。 そして、俺は自分を取り戻すため、パワハラを繰り返す彼女を捨てる決意をした。 それまでにもらった裝備一式のほか、冒険者になった時にお互いに贈った剣を彼女に突き返すと別れを告げ、足早にその場を立ち去った 俺の人生これからは辺境で名も容姿も変え自由気ままに生きよう。 そう決意した途端、何もかも上手くいくようになり、気づけば俺は周囲の人々から賞賛を浴びて、辺境一の大冒険者になっていた。 しかも、辺境伯の令嬢で冒険者をしていた女の人からの求婚もされる始末。 ※カクヨム様、ハーメルン様にも転載してます。 ※舊題 剣聖の幼馴染がパワハラで俺につらく當たるので、絶縁して辺境で出直すことにした。
8 123【書籍化】宮廷魔導師、追放される ~無能だと追い出された最巧の魔導師は、部下を引き連れて冒険者クランを始めるようです~【コミカライズ】
東部天領であるバルクスで魔物の討伐に明け暮れ、防衛任務を粛々とこなしていた宮廷魔導師アルノード。 彼の地味な功績はデザント王國では認められず、最強の魔導師である『七師』としての責務を果たしていないと、國外追放を言い渡されてしまう。 アルノードは同じく不遇を強いられてきた部下を引き連れ、冒険者でも始めようかと隣國リンブルへ向かうことにした。 だがどうやらリンブルでは、アルノードは超がつくほどの有名人だったらしく……? そしてアルノードが抜けた穴は大きく、デザント王國はその空いた穴を埋めるために徐々に疲弊していく……。 4/27日間ハイファンタジー1位、日間総合4位! 4/28日間総合3位! 4/30日間総合2位! 5/1週間ハイファンタジー1位!週間総合3位! 5/2週間総合2位! 5/9月間ハイファンタジー3位!月間総合8位! 5/10月間総合6位! 5/11月間総合5位! 5/14月間ハイファンタジー2位!月間総合4位! 5/15月間ハイファンタジー1位!月間総合3位! 5/17四半期ハイファンタジー3位!月間総合2位! 皆様の応援のおかげで、書籍化&コミカライズが決定しました! 本當にありがとうございます!
8 87嫌われ者金田
こんな人いたら嫌だって人を書きます! これ実話です!というか現在進行形です! 是非共感してください! なろうとアルファポリスでも投稿してます! 是非読みに來てください
8 133クリフエッジシリーズ第三部:「砲艦戦隊出撃せよ」
第1回HJネット小説大賞1次通過、第2回モーニングスター大賞 1次社長賞受賞作品の続編‼️ 銀河系ペルセウス腕にあるアルビオン王國は宿敵ゾンファ共和國により謀略を仕掛けられた。 新任の中尉であったクリフォードは敵の謀略により孤立した戦闘指揮所で見事に指揮を執り、二倍近い戦力の敵艦隊を撃破する。 この功績により殊勲十字勲章を受勲し、僅か六ヶ月で大尉に昇進した。 公私ともに充実した毎日を過ごしていたが、彼の知らぬところで様々な陰謀、謀略が行われようとしていた…… 平穏な時を過ごし、彼は少佐に昇進後、初めての指揮艦を手に入れた。それは“浮き砲臺”と揶揄される砲艦レディバード125號だった…… ゾンファは自由星系國家連合のヤシマに侵攻を開始した。 アルビオン王國はゾンファの野望を打ち砕くべく、艦隊を進発させる。その中にレディバードの姿もあった。 アルビオンとゾンファは覇権を競うべく、激しい艦隊戦を繰り広げる…… 登場人物(年齢はSE4517年7月1日時點) ・クリフォード・C・コリングウッド少佐:砲艦レディバード125號の艦長、23歳 ・バートラム・オーウェル大尉:同副長、31歳 ・マリカ・ヒュアード中尉:同戦術士兼情報士、25歳 ・ラッセル・ダルトン機関少尉:同機関長、48歳 ・ハワード・リンドグレーン大將:第3艦隊司令官、50歳 ・エルマー・マイヤーズ中佐:第4砲艦戦隊司令、33歳 ・グレン・サクストン大將:キャメロット防衛艦隊司令長官、53歳 ・アデル・ハース中將:同総參謀長、46歳 ・ジークフリード・エルフィンストーン大將:第9艦隊司令官、51歳 ・ウーサー・ノースブルック伯爵:財務卿、50歳 ・ヴィヴィアン:クリフォードの妻、21歳 ・リチャード・ジョン・コリングウッド男爵:クリフォードの父、46歳 (ゾンファ共和國) ・マオ・チーガイ上將:ジュンツェン方面軍司令長官、52歳 ・ティン・ユアン上將:ヤシマ方面軍司令長官、53歳 ・ティエン・シャオクアン:國家統一黨書記長、49歳 ・フー・シャオガン上將:元ジュンツェン方面軍司令長官、58歳 ・ホアン・ゴングゥル上將:ヤシマ解放艦隊司令官、53歳 ・フェイ・ツーロン準將:ジュンツェン防衛艦隊分艦隊司令 45歳 (ヤシマ) ・カズタダ・キムラ:キョクジツグループ會長、58歳 ・タロウ・サイトウ少將:ヤシマ防衛艦隊第二艦隊副司令官、45歳
8 118太平洋戦爭
昭和20年、広島に落とされた原子爆弾で生き延びたヨシ子。東京大空襲で家族と親友を失った夏江。互いの悲しく辛い過去を語り合い、2人で助け合いながら戦後の厳しい社會を生き抜くことを決心。しかし…2人が出會って3年後、ヨシ子が病気になっしまう。ヨシ子と夏江の平和を願った悲しいストーリー
8 96加護とスキルでチートな異世界生活
高校1年生の新崎 玲緒(にいざき れお)が學校からの帰宅中にトラックに跳ねられる!? 目を覚ますと真っ白い世界にいた! そこにやってきた神様に転生か消滅するかの2択に迫られ転生する! そんな玲緒のチートな異世界生活が始まる 初めての作品なので誤字脫字、ストーリーぐだぐだが多々あると思いますが気に入って頂けると幸いです ※キャラの名前や街の名前は基本的に私が思いついたやつなので特に意味はありません 2018/11/8(木)から投稿を始めました。
8 126