《異世界でもプログラム》第三十七話 旅立ちの前に

/*** シンイチ・アル・マナベ(アルノルト・フォン・ライムバッハ) Side ***/

久しぶりに寮に戻ってきた。著替えがしくなった事もあるが、ユリアンネとラウラとカウラの事が気になってきた。

尋問八つ當たりも俺ができる事は、終わったと思っていいだろう。対面してわかったが、あいつらを相手していると、虛しいとさえ思えてくる。”あいつら”ではダメだ。

俺が使っている部屋にった。

エヴァは、3人が眠る場所を作ってくれたようだ。俺の部屋・・・こんなに広かったのだな。ラウラ。カウラ。お前たちの聲が聞こえてきそうだな。散らかしたら・・・ラウラ。怒って片付けに來ないか?今なら、生き返る事も許してやれそうだぞ。

ドアがノックされた。

「だれ?」

「エヴァです」

「あぁってくれ」

「よろしいのですか?」

「エヴァがイヤじゃなければな」

意地悪な言い方だな。そうだな、鬼のように、わがままに生きてみるのもいいかも知れないな。

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ドアが開けられて、エヴァが部屋にってきた。

「どうした?」

「え?あっユリアンネ様とラウラとカウラに、安らかに眠ってもらいました」

「ありがとう。寮の裏?」

「はい。後でご案いたします。あの・・・それで、母が、アルノルト様にお願いがあるそうです」

「え?あっなに?いいよ。居るのだろう?」

「あっはい」

エヴァの母親がってくる。

「アルノルト様」

「はい」

「いえ、お願いと言うのは、私に、エヴァの代わりに、ここで、ユリアンネ様とラウラさんとカウラさんの眠りの手助けをさせてください」

墓守をしてくれるという事なのか?

「え?いいのか?誰かを雇うつもりで居たのだけど?」

「はい。ユリアンネ様とはご面識はありませんが、ラウラさんとカウラさんとはお會いしていました。全く知らない者が世話をするよりも、私の方がよろしいかと思います」

「でも、いいのか?せっかくエヴァと・・・いや、エヴァいいのか?」

エヴァに問いかける。

「うん。最初、私がやるつもりだった、でも、母が、私は私でやる事があると教えてくれた」

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「やること?」

「うん。まだ、教えられない。アルノルト様も、やる事が見つかったのでしょ?」

「あぁ見つかった・・・じゃないな。もともと、解っていた事を、認識したが正しいだろうな」

「アルノルト様」

エヴァと、母親が俺を見つめているのがわかる

「頼めるか?」

母親の方を向いて頭を下げる

「頭をお上げください。私が、アルノルト様に変わって、三方の世話をさせていただきます」

「頼む」

ドアが暴に開けられて、びっくりして、ドアの方を見てしまった。

皇太孫が今にも怒鳴りそうな顔でこっちを見ている。

「ユリウス。何かようか?」

「アル!おまえ、スカットーラ夫人の、生活を、自分の資金から出すつもりだっただろう?」

「いきなり、ユリウス。順序立てて話せよ」

クリスが後ろからってくる

「クリス。お前が居たのなら、皇太孫殿下の暴走を止めてくれよ」

「アルノルト様。それは、できませんわ。今回は、私は、ユリウス様の側ですわ」

「はぁ?どういう事だ?」

「おわかりになりませんの?」

「あぁわからん!」

クリスは盛大にため息をついた。

「アルノルト様。私だけではなくて、皆。ラウラとカウラとお別れをしたかったのですよ?」

あっそうか、エヴァに仕切ってもらうという事は、教會仕切りになる。

そうなると、王家に連なる者は出席が難しい。

「すまん」

「いえ、意地悪な言い方をしてしまったのは、私の方ですね。ユリウス様が言うように、エヴァンジェリーナ様が取り取り仕切ったのですから、世話は、教會でやるのが筋でしょうね」

「あぁそうだな。それに、俺としても、信頼できる人に、頼みたい」

「それですわ!」

「そうだ、アル!俺では、頼りないのか?」

はぁ?

ユリウスは盛大に勘違いしているかも知れない。

「ユリウス。お前は、俺が持っているカードの中で最強なだ。それは理解してくれ」

「あぁ」

「俺は、お前を頼りにしている」

「!!」

「なんだ。だから、一番俺がしてしい事を、お前に頼んだ」

「・・・すまん」

ユリウスは気がついてくれたようだ。

「クリス!」

「なんでしょうか?アルノルト様」

「お前はどうなんだ!」

「私は・・・」

「お前は、ユリウスを支えるのだろう?俺のために考えてくれるのは嬉しい。だけどな。ユリウスの事を考えてくれ」

「そうですわね。ふぅー。わかりました。申し訳ありません。いろいろ有って、取りしてしまいましたわ」

皆が余裕をなくしていたのだろう。俺の事を気にしてくれるのは嬉しい。嬉しいが、それじゃダメだ。

「ユリウス。それで、さっきなにかんでいたが?」

「あっ」「アルノルト様。それは、私から・・・」

「あぁそれでクリスどういう事だ?」

クリスの話では、俺がエヴァに、ユリアンネとラウラとカウラの事を頼んだ=教會が仕切る。と、思い込んだようだ。

俺としては、世話係にエヴァの母親が、名乗り出なかったら、ギルドに依頼するか、老夫婦を雇うか、一家で奴隷落ちした家族を買うつもりで居た。

何年かかるかわからないが、ダンジョンを踏破して、”あの方”からきっちりと取り立てて、クラーラを殺す。これだけの事をすまで、ユリアンネたちの世話ができなくなってしまう。それだけは避けたかった。だから、教會に仕切りを任せたという意識は一切なかった。

でも、ユリウスやクリストしては、俺が、教會にユリアンネたちの事を頼んだので、お別れができないと思っていたらしい、クリスが怒り、ユリウスは俺が全部1人で背負おうとしていると思って、世話係くらいユリウスを頼れと怒り、さっきの行につながったようだ。

正直に言おう

「ユリウス。クリス。そんな事まで読めるか!いいか、俺は、ユリアンネたちが眠れるように手配しただけだ、未來永劫誰かに任せるつもりはない。ユリアンネは、妹で、ラウラとカウラは、俺の従者だ。かけがえのないな」

エヴァと母親はうなずいてくれている。解ってくれているようだ。

クリスも納得しては居るようだが、が著いてこなかっただけなのだろう。問題は、ユリウスだな。クリスにフォローをまかせてしまおう。

「アルノルト様」

「ん?」

「エヴァの件はわかりました。私の思い過ごしでした。申し訳ありません。それで、1つご提案があります」

「なに?」

「ユリウス様も申しておりましたが、アルノルト様は、夫人の生活費をご自分が持とうと思っておいでですよね?」

「あぁ」

エヴァと母親がびっくりした表をする。

墓守なんてそんなものだろう?

「やはりですわね。アルノルト様。夫人の生活費や、この寮というよりも、アルノルト様の邸宅の維持管理は、王家で行います。ユリウス様それで良いですわよね?エヴァンジェリーナ様も?」

「あっクリスティーネ様。それに、アルノルト様。その件で、司祭から言付けを預かっております。まずは、これをお読みください」

エヴァから渡された、數枚の羊皮紙を渡された。

教會の印が押されている事から、正式な文章なのだろう。

最初は、お悔やみの言葉から始まっている。永眠を取り仕切った事が書かれていて、その後に費用の算が書かれていた。

費用:1ワト

エヴァを見る。澄ました可い顔をしているが、知っていたのは間違いない。もしかしたら、なにかしらの取引を教會としたのかもしれない。

読み進める。訳が書かれている。教會への供は書かれていない。お気持ちということなのだろうか?

エヴァ仕切りでやった事もあり、祈りに関しては、0となっている。

それ以外の、永眠のための建や埋葬費に関しては、金額が書かれている。かなりの金額が必要になる事がわかる。伯爵相當の仕切りでやったようだ。ユリアンネだけではなく、ラウラとカウラも同じだ。差を付けなかったのだ。嬉しく思う。

こちらの世界では、の防腐処理を行う事が一般的だが、魔法が有る世界だ。跡やダンジョンから見つかるアーティファクトを使った処理方法もある。通常、王家やそれに近い人にしか施されない。防腐処理は、蔵を抜き取り、処理をするのだが、それをしないでも、生きていた當時の狀態で本當に眠ったように処理できるアイテムがある。それを、3つ使って処理を行った事が書かれていた。

びっくりするくらいの費用になるはずだ。

エヴァや夫人を見るが、全部知っているようだ。

そして、次の羊皮紙には、今後の事が書かれている。夫人が3名の世話を行う事。その費用を今後30年間教會が負擔する事が明記されていた。夫人の分は、教會からの出向という形ではなく、アルノルト・・・要するに、俺が許可を出して、俺が夫人に依頼する形になる。

言葉は悪いが、教會は金だけだして、口は出さないと書かれているのだ。

今までの合計が計算されている。

その上で、教會側から俺に支払わなければならないとして書かれているがある。

エヴァが襲われた時の救出に対する報酬

ボニートの事が止められなかったことへの詫び料

これらを引いた金額が、1ワトとなるようだ。

はなっから、ワトをもらうつもりなんて無いような計算だな。

その上で、俺が教會に登録する事で、今後の活の支援を行いたいとまとめられていた。

支払いの期日に関しては、3年間の猶予を與えると書かれている。3年間で支払いができなかった場合には、支払い終了まで、エヴァンジェリーナ・スカットーラが、俺に対して取り立てを行うと書かれていた。支払いに関しては、分割は認めず、一括支払いで、エヴァンジェリーナ・スカットーラに渡すように書かれている。エヴァンジェリーナ・スカットーラがけ取らなければ、支払いは立しないと但書がされている

「エヴァ!」

「はい。アルノルト様?」

「おまえ、知っていたな?」

「何のことでしょう?」

そんなに、可く首を傾げられたら、何も言えなくなる。

「わかった、エヴァ。それに、夫人。ユリアンネとカウラとラウラの事を頼みます」

「うん」「もちろんです」

クリスは、やられたって顔をしている。似たような事をやろうとしていたのだろう。

ユリウスは、とりあえず、クリスに任せる事にしよう。

「クリス。お前たちもなにか有るのだよな?」

「もちろんですわ。ユリアンネ様とラウラとカウラの事は、エヴァンジェリーナ様にお譲り致しますが、カール様の件は、私・・・ユリウス様からご報告させていただきますわ」

「ありがとう」

「それでですけど、皆にも話が有ると思うので・・・」

クリスが、ユリウスを見る。

「あぁそうだ、アル。お前にも、言いたいことがあるが、今はそれではなく、これからの事を話したい。時間は大丈夫か?」

「大丈夫だ。カールのことなのだろう?時間がなくても、時間を作る」

「そうか、食堂で皆を集めて話しをしたほうがいいだろう」

「わかった。俺は、エヴァと夫人にし話をしてから、食堂に行く」

「わかった。皆を集めて待っている」

「頼む」

さて・・・と、エヴァと夫人を見つめる。

「さて、エヴァ。ここに、金貨1枚ある。これをけ取るつもりはないのだよな?」

すごい笑顔で

「もちろんですわ。アルノルト様。お釣りを用意しておりませんし、今日は領収した証を持ってきておりませんわ」

「俺が、お釣りがいらないと言って、領収した証も後日で構わないと言っても、ダメなのだろう?」

「もちろんです。それでは、私が自分を許せません」

「夫人。3年後と言っているが、俺が本當に3年で帰ってくるとは限らないぞ?」

「解っておりますし、待っております」

「3年後と言えば、18になってしまうぞ?エヴァなら大丈夫だと思うが、婚禮の機會を逃すかも知れないぞ?」

「大丈夫です。その時には、アルノルト・フォン・ライムバッハに責任を取ってもらいます。それに、3年後からは、取り立てのために、アルノルト様についていかせます」

「あっ」

二重の意味でやられた。

3年という期間に意味があるとは思っていたが、高等部への進學と卒業の期間なのか?

今のまま、エヴァがついてくると言っても、俺は、足手まといと言って、連れて行かないだろう。高等部卒業したらどうなるのか?”聖”という呼び名に恥じない”聖魔法”の使い手になっていたら、足手まといとじても、表立って斷るのは難しい。

それに、ギルドだけではなく、教會の後ろ盾は実際の話しとしてしい。帝國の報を調べるにも、教會は必要なのだ。ボニートの事を除いて考えても、”あの方”に繋がる糸は、帝國の教會にある。可能だってある。

「わかった。エヴァ。3年後に、支払いに戻ってくるが、その時までに、聖魔法を極めておけよ」

「うん。アルノルト様!」

「そうだ、エヴァ。今更だけど、アルノルト様ってやめてくれないかな?クリスに呼ばれているみたいで嫌だ」

「クスクス。わかりました、それではなんとお呼びすればいいですか?」

「みんなと同じで、アルでいい。それに、俺は、この寮を出たら、アルノルト・フォン・ライムバッハの名前を封印する」

「え?」

「俺は、冒険者のシンイチ・アル・マナベとして生きる。俺の目標を達するまでな」

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