《異世界でもプログラム》第三十八話 今後の方針

エヴァと連れ立って、食堂に降りる。

皆がそろっているようだ。

所定の位置に座る。ラウラとカウラの場所を、誰もが見つめている。

「それで?」

「アルの話の前に、皆、すまなかった」

それだけ言って、ユリウスは、皆に向かって頭を下げた。

何が有ったのか、想像ができるが、話が進まなくなりそうなので、スルーさせてもらおう。

「クリス。それで?」

「私ですか?」

クリスが盛大にため息をつく

「ユリウス様。よろしいのですか?」

「ダメだ。俺から、話をする」

「と、いうことですわ。アルノルト様」

「アル。いや、アルノルト・フォン・ライムバッハ。貴殿の弟君である、カール・フォン・ライムバッハが正式に、ライムバッハ家の當主となる事が決定した。ただし、であるために、クヌート・アイゼンフートが後見人となる。クヌート・アイゼンフートは、本年度を持って、教師の任を解かれ、準備が整い次第、カール・フォン・ライムバッハ辺境伯と、ライムバッハ領に赴き、前ライムバッハ辺境伯エマール及びアトリアの葬儀を執り行う」

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ユリウスは、ここで一息いれる。

「ルグリタ及びロミルダ両名も、カール・フォン・ライムバッハ辺境伯の名で葬儀を行うとする。ユリアンネ・フォン・ライムバッハは、カール・フォン・ライムバッハ辺境伯を、命がけで守った功績を持って、王都教會での葬儀執り行う事とする。なお、クヌート・アイゼンフートには次の者が隨員としてライムバッハ領に赴き、後見人の手助けをするものとする」

「クリスティーネ・フォン・フォイルゲン。イレーネ・フォン・モルトケ。ギルベルト・シュロート。ザシャ・オストヴァルト。ディアナ・タールベルク。ユリウス・ホルトハウス・フォン・アーベントロート」

一人ずつ立ち上がる。

「ギード、ハンスの両名は、ユリウス・ホルトハウス・フォン・アーベントロートの従者として隨員することとする」

俺と、エヴァを除いて全員が立ち上がった事になる。

エヴァは、クリスあたりから話を聞いていたのだろう。この狀況になる事がわかっていたようだ。皆と行く事もできたのだろうが、ユリアンネとラウラとカウラの墓守をする事を選んでくれたのかも知れない。

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そっとエヴァを見ると、微笑みで返してくれる。聖の聖たる由縁なのかも知れない。そんな笑顔だ。

「ユリウス。最高の布陣だよ。ありがとう」

「アル。俺は」「ユリウス様。誰がではありませんわ。これから、どうするのかを話さなければなりませんわよ」

クリスが俺の方を向いた。

「それで、アルノルト様はどうされるのですか?」

「あぁエヴァには話したが・・・え?」「アル!ダメ!」

なんで、俺、睨まれなければならない?

エヴァが俺の事を、アルと呼んだ事で、圧力が強くなる。何だよ。俺が悪いのか?

「イレーネ。ザシャ。ディアナも落ち著きなさい。それで、何を話されたのですか?」

3人がお互いを見て苦笑している。

「あぁ俺の目的のために、アルノルト・フォン・ライムバッハは隠居する。領地で、弟に全部押し付けて遊んでいる・・・と、でも思わせる事にする。俺は、今日から、ただの冒険者”シンイチ・アル・マナベ”として生きる。なくても、俺の目的を果たすまでな」

「目的?」

ユリウスだけが反応した。

他の者は、當然というような顔をしていることから、おおよその見當ができているのだろう。

「そうだ、”あの方”と呼ばれている奴から、俺が失った””を取り戻す。そして、クラーラを殺す」

俺の宣言をユリウスは黙って聞いている。

「わかった。アル。何か手がかりはあるのか?」

「手がかりであないが、繋がる糸は3本ある」

「3本?」

皆を見回す。

2本だと思っていたのだろう。し以外な表をしている。

「その前に、座れよ」

クヌート先生には、後でしっかりとお禮を言っておかないとならないな。

皆が座ったの見計らって、エヴァの母親が、飲みを持ってきてくれた。エヴァがそれを手伝っている。飲みが行き渡ったのを確認した。

「アル?」

ユリウスがしびれを切らした。クリスを見るが、お手上げのポーズを取る。

まぁいい。これが、俺たちの皇太孫であるユリウスなのだ。

「あぁ3本だ。1本は、エヴァ・・・と言うよりも、教會の力を頼ろうと思っている。襲撃者の中に、ボニート・ルベルティが居た。どういう経緯で、ボニートが襲撃に加わったのか?」

「そうか!」

「どうした。ギルベルト」

本當に、皇太孫は我慢というのができないのか?

「アルが今言った事だが、確かにおかしい。ボニートは、エヴァの一件から、帝國本土に連れ戻らさせられて、”教會”預かりの分になっているはずだ。跡継も弟に決まったはずだ」

「そうだろうが。それのどこがおかしい?」

「ギル。いい。俺から話す。いいか、ユリウス。ボニートは、帝・國・に居るはずだな」

「そうだな」

「それが、どうして襲撃できる?國境はどうした?検閲は?一番の謎は、ルットマンの襲撃に、ボニートがなぜ加わる事ができた?帝國から、襲撃現場まで、一日やそこらで移できない。その間の費用は誰が出した?ボニートは教會預かりで、資金的な援助はなかったはずだぞ」

「あっでも、アル。そんな事、調べられるのか?」

「どうだろうな。それこそ、商人の出番じゃないのか?なぁギル?」

「え?俺?」

ギルは、し考える。

「そうか、金の流れを追うのだな」

「そうだ。人と金。この流れをたどっていけば、目的地にたどり著ける。違うか?」

皆が納得してくれる。帝國の事だから、そううまく行かない事はわかっている。でも、圧力をかける事で、反応があるのも間違いない。反応を読み間違えなければ、目的地にたどり著ける。

「そして、次の1本は、もっと簡単だ。ヘーゲルヒ辺境伯を圧迫する」

「そうだな。裏で糸を引いている可能が高い」

「ユリウス。違う。違う。ヘーゲルヒ辺境伯も駒の1つだ。その駒に、圧力がかかってきが鈍くなったり、潰されたらどうする?」

「新しい・・・そうか、そこで、何かしらのアクションが発生するという事か?」

「あぁただ、國が荒れるだろうから、あまりこちらから積極的にきたくはない。ただ、向こうから手を出してきたら、容赦なく潰す」

「わかった。ヘーゲルヒ辺境伯の事は、俺たちも注視しておく」

「頼む。それで、最後が一番確実だと思われる1本だ」

飲みを飲み干す。

近くに座っていた、エヴァがカップに新しい飲みを注いでくれる。

「クラーラ。エタン。ブノア。小だけど、ボニートは、”あの方”の作った組織に屬していると思われる」

皆がうなずく

「その組織には、序列があって、序列上位者が、エタンとクラーラだという話だ。そして、ボニートの話からだが、その序列は”強さ”によって代わるらしい。そして、ボニートは、闇魔法によって、アンデットのようになっていた。それが”あの方”の力だと言っていた。ボニートが、いつからそんなになったのかはわからない。わからないが、かなり前から、ボニートは、”あの方”の組織に屬していたのではないかと思う」

「なぜ。そう思う?」

當然の疑問だ。

「闇魔法で、アンデット化した人や魔を倒すのにはどうしたら・・・ハンスならどうする?」

「俺?そうだな。火で炙り殺す」

「そうだな。通常はそうだろう。エヴァ。教會ならどうする?」

「そうですね。人なら、聖魔法で癒やします。魔なら、聖水をかけて弱った所を核を壊します」

「ボニートは、誰を求めた?」

「そうか!聖!聖魔法の使い手か!」

「そうだ。あいつは、エヴァを求めた。そして、俺に阻まれた。俺が邪魔だったのだろうな。その辺りの事は、今は関係ない。ボニートは序列を上げるために、エヴァを求めたのだと、俺は考えている」

「ちょっとまて、アル。おかしくないか?闇魔法に対抗するために、聖魔法を求めるのなら、わかるが、闇魔法の使い手の組織で、なんで聖魔法を求める?」

「ギルの疑問はもっともだ。でも、それは、組織が一枚巖だった場合だ。もし、この寮で、そうだな。俺とユリウスが大喧嘩したとしよう。勢力が二分されて、相手陣営の苦手とする所を攻めるのではないか?」

「アルノルト様。そのたとえだと、わかりにくいですわ。ハンスとギードは、従者ですから、ユリウス様に従うかも知れませんが、他の者は、全員1人の例外もなく、アルノルト様の下に集いますわよ」

クリス。なんて事を言う。

また、ユリウスが拗ねだすかも知れない。

「クリス。たとえの話だ。例・え・ば・だ!」

「はい。はい。そうですわね。でも、その組織が、一枚巖でない事はわかりますわ。我が國も同じですわね」

「あぁ」

ユリウスが認めた事で、この話を終わらせる事ができる。

「話を戻すぞ。序列がある組織なら、強い者が組織にる事ができるかも知れない」

「え?おま」「アルノルト様!あまりにも危険では?」

ユリウスとクリスは、この作戦の危険がすぐにわかったようだ。

「大丈夫だ。ライムバッハではなく、マナベ家の者だ。そして、俺の事を知っているのは、クラーラ/エタン/ブノアだ。コイツラに対抗しようとしている奴らも組織には居るだろう。俺が強く有名になっていけば、聲がかかるかも知れない。同時に、強さも手にる。一石二鳥以上の価値がある」

「どうやって?有名になる?」

ギルの疑問は當然の事だ。

「簡単だよ。ギル。そうだな、ギードならどうする?」

「俺なら、武闘大會に出まくるかな。そうすれば、強さの証明にはなるだろう?」

「俺もそれは考えた。でも、それじゃ、組織から聲がかからないのではないかと思った」

「なぜだ?」

「金だよ」

「金?」

従者で來ていた人間なら、単純な強さの証明ができればいいのだろう。

でも、組織の人間とするのには、それでは足りない。

「あぁそうだ。イレーネ。男爵家ならどうする?」

「へ?私の所?そうですね。確かに、武闘大會や魔法戦闘で勝ち上がった人なら、雇いたいとは思いますが、多分雇いませんね」

「食客とかなら別ですけど、男爵家として雇うにはお金がかかりすぎます」

「そうだろうな」

「それだけの価値があると思わせればいいのではないのか?」

「うん。ギードやハンスならそうだろう。でも、組織として考えるときには、それだけじゃ足りない。できるだけ、自分で、自分の食い扶持を持っているヤツのほうが好ましい。その上で、組織として味しいを與えられればいいのだからな」

「あぁぁぁそうか!」

ギルが急に大聲をあげた。

「アル。マナベ商會!」

「そうだ。そのマナベ商會の資金を目當てに近づいてくるだろう。その上、マナベ商會の會頭が、闇魔法/聖魔法の使い手で、ダンジョン踏破者だとしたら、どう思う?」

「俺なら速攻で調べて、どこかの紐付きじゃなければ、聲かけるな。紐付きなら、紐が切れないか考えるな。切れそうになかったら、罠にはめるかな」

ギルの答えが語っている。

俺が求めるのは、俺が組織に必要な人間だと錯覚させる事だ。

クラーラには、俺の加護はある程度バレているが、と闇はバレていない。多分、雷も使っていない。それに、武の加護を全面にした戦い方をしていけば、奴が知っている俺とは結びつきが弱くなる。はずだ。

「アル。お前の考えは解った。俺は、お前を全面的に支持する。だが」

「なんだよ?」

「必ず、帰ってこい。それだけは約束してもらうぞ」

「あぁもちろんだ。お前たちが居る。それに、ここには、ユリアンネとラウラとカウラが眠っているからな。俺の帰ってくる場所だ。そして、この場所に帰ってきたときに、お前から、”ライムバッハ”の名前で呼ばせてやる」

「わかった。期待して待っている。カールの事は任せろ。俺が責任持って辺境伯にさせる」

「いや、そこは、クリス。イレーネ。ギル。頼む。カールが、ユリウスみたいになったら、俺は、ユリアンネや父上や母上。それに、ルグリタに顔向けできん!」

「なっアルノルト!お前!いや、今日から、シンイチ・アル・マナベだったな。表にでろ!いろいろ決著を付けてやる」

「いいけど、皇太孫が、先日冒険者になったばかりの若造に負けたらいいわけができないぞ!それでもいいのか?」

「アルノルト様!ユリウス様!皆が困ってしまいますわ」

「ハハハ」「そうだな」

ユリウスが手を出してきた。何を意味するのかはすぐに分かる。

ユリウスの手を握りながら

「ユリウス。頼む!」「あぁ任せろ!」

クリス。ギル。ハンス・ギード。イレーネ。ザシャ。ディアナ。握手をして、カールの事を頼んだ。

エヴァだけが一歩下がった。自分は違う道をゆく事が決めたのだろう。

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