《異世界でもプログラム》第六十一話 ホーム改造
ユリウスとクリスとおまけでギルが、正式に査察としてウーレンフートを訪れることが決まったようだ。
當初は數日後と言われていたのだが、ライムバッハ領都での作業が殘っていたらしく、約1ヶ月後に延期されることになった。
問題が解決に向かった事や、”シンイチ・アル・マナベ”がホームを得て狀況を変えていると報告したことが大きいようだ。”マナベ商會”のことを彼らは知っているので、アルノルトが絡んでいると判斷して、急いでくる必要がなくなったと考えたのだろう。
査察から冒険者マナベにありがたいお手紙が屆いた。
いろいろ書いてあったのだ、簡単にまとめると”逃げるな”だけだ。
”逃げるな”も何も・・・。どう考えても逃げられるような狀況ではない。
ここでホームを放り出してダンジョンの探索や奴らの捜索を開始したら、ユリアンネやカウラやラウラだけではなく父にも母にも怒られてしまうだろう。それでなくても、ライムバッハ家が行った施策のを突かれた形になっているのだ、ゴミ掃除をして立て直すのは俺の役目だろう。
「マスター!」
「どうした?ダーリオ?」
「マスター。職人たちがマスターを探しておりました。建のことでお聞きしたいことがあるということです」
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「わかった。そうだ、演習場の場所は決めたか?」
俺は、ダーリオたちに訓練する場所を作るように指示を出した。
現狀のホームには訓練を行える場所がなかった。
「そのことですが、マスター。街の外にある場所を使うことはできませんか?」
「職人村にしようとした場所か?」
「はい」
うーん。あの村を維持するかも決まっていないからな。
職人たちを集めようとは思っていたけど、ホームの中やウーレンフートの中での仕事が多いのも事実だ。
「どうするのがいいのか皆でアイディアを出してくれ、外の村を使うのは問題ない」
「わかりました。セバスをえて考えます」
「頼む。あっ生産職を2つに分けるか?」
「2つに分ける?」
「職人も、武や防の職人とそれ以外に分けて、武や防は外の村に居住してもらって、街の中には建築や日用品の職人にすれば棲み分けもできるだろう。どうせ、俺たちのホームだし行き來も自由にできるし、問題はないだろう?」
「わかりました。話し合いには、職人の頭たちを含めて行います」
「頼む」
ダーリオもなにか憑が落ちたような表をしている。
周りを見れば、建ができ始めている。職人ドワーフたちは優秀だな。
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プレキャスト工法のような工法を提案したのだが、もう自分のにしてしまっている。広い空き地にどんどん建っている。
人もかなり増えた。
孤児院を最初に建築したのだが、スラム街に居た子供を合流させたことや、街の外壁近くにできていた難民キャンプにいた者たちを招きれたことで急激に増えた。子供の數は、今では200名に屆こうとしていた。スラムに居住していなかったが、街中でストリートチルドレンになっていた者たちも、孤児院に居た子供たちが探し出して保護してくる。
子供が増えたことで、孤児院の設計思想を大幅に見直した。この時に、プレキャスト工法の説明を行った。コンクリートはなかったが、魔法がある世界だ。意外と似た素材が作れてしまった。鉄筋部分も素材があるので、なんとかなってしまったのだ。
孤児院は、俺の覚では”寮”のようになった。
大部屋と4人部屋と個室が作られることになった。個室は、卒院人が近い者がることに決まった。部屋數は十分あると思ったのだが、作り足すことになってしまった。
孤児院のほかにもホームの空き地には宿屋と食堂を作った。公衆浴場も作った。水風呂とサウナと普通の風呂だ。風呂文化はすでに存在しているのだが、サウナが一般的だ。庶民は、風呂にるようなことがない。そのために最初は戸いのほうが大きかったのだが、職人ドワーフたちが使い始めてから、ホームのメンバーが使って、が綺麗になったり、髪のが綺麗になったり、疲れが取れたと宣伝したことから、ホーム以外からも風呂にりに來るようになった。料金は安めに設定して食堂や宿を使ってもらうように導する事にした。
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もともとあったホームは完全に宿屋に侵略された。浴場を隣接させたことで、行商人やフリーで活していた冒険者が泊まるようになったのだ。
最初は、ホームの半分くらいで十分だと思っていたのだが、部屋が足りなくなって、結局ホームの全部を宿屋で使うことにした。従業員用の建は、孤児院と同じように立てることにした。獨り者には個室を用意した。セバスとダーリオがまとめた資料から、部屋數を算出する。足りなくなっても困るので、現在の倍の數を用意することにした。
これが従業員元奴隷から喜ばれた。ランドルたちは個室なんて用意していなかった。雑魚寢できればいいほうだったのだ。劇的な改善と言ってもいいだろう。
食堂もホーム以外にも開放することにした。ヘルマンの料理を楽しみにしていた冒険者が居ることから、ホームで獨占はしないほうがいいだろうというセバスからの進言があったからだ。
「ヘルマン!」
「おっどうした?」
「問題がないか確認をしている。何か問題はあるか?」
「問題か・・・」
ヘルマンにはなにか問題が有るようだ。
「どうした。言ってくれ、できる限り改善する」
「あぁ・・・問題ってわけじゃないのだが、人手がしい」
「人手?」
「商売は問題ない。廚房も問題があれば職人がすぐに直してくれる」
「あぁ」
「客席の數や配膳も、指示された方法で改善した」
ヘルマンには、セルフ式を教えた。アルが廚房の手伝いではなく、ホームの手伝いがしたいといい出したので許可している。
朝と晝は、セルフ式で回すことにして、夜は食堂を閉めて作り置きしたを取り分ける方法で酒を主に取り扱う店にした。ホームでの食事は、部向けに用意する事にしたのだ。それで廚房の手が足りなくなることはなくなったと思っていた。
「あぁ」
「宿の方が足りない」
「そうか、宿も本格稼働を始めたのだったな」
「思った以上の客足で首が回らない」
「人手か・・・何が足りない?」
「部屋の清掃や案だな。雑務だな」
「そうか、子供でもよければ、孤児院に聞いてくれ」
「いいのか?」
「あぁしっかり要を聞いてくれよ。それだけ守ってくれれば問題ない」
「わかった。雑務が回りだせば、問題はないと思うぞ」
「よかった。孤児院には話を通しておく」
孤児院には、ホームの中の仕事を手伝ってくれたら賃金を出すと言ってある。
そこで子供たちが自分で仕事を選べるようになれば嬉しいし、そうじゃなかったとしても経験は無駄にはならないだろう。
ホームには建が増えたし、人も増えた。出りする業者の選定をし直した。ほぼ一新したと言ってもいいだろう。袖の下を要求した奴らは全部切った。貴族の紐付きになりそうな商隊との取引は表面上だけにして小するようにした。
それでも、ホームはホームとして存在していた。
そんな中で、一番変わったのは外の村に繋がっている地下通路かもしれない。
職人たちにお願いしてレールを敷いてもらった。ほぼ直線だったために、歪みも気にする必要がなかった。
手押しトロッコの説明をして、作ってもらった。荷を運んだり、人を運んだり、通路を使うのにも便利になるだろうと考えた。職人たちも今まで、外に売るための武ばかりを作っていたのだが、実際に使う人の顔が見えて便利になっていくを作るのは嬉しいようだ。
ベルメルトに依頼していたことも順次報告が上がってくる。依頼してから數日後には第一報が屆けられた。
第一報から10日後に、ベルメルトが訪ねてきた。
「マナベ様」
「報告は読んでいる。やはり、かなり危ない狀態だったようだな」
「そうなります」
「それで?」
「?」
「俺の顔を見るためだけに來たわけじゃないのだろう?」
「どうですかね?」
「資金が足りなくなったらセバスに言ってくれ、多分用意できると思う」
ホームの改築にかなり使ったが、まだまだ十分な資金が殘されている。
賭けで勝った分も有るのだが、商業ギルドにあずけているマナベ商會の資産をホームで使うことにしたのだ。
マナベ商會の預金をホームに移させた。これから振り込まれる分を含めてすべてホームの資産になるように手配した。セバスとヘルマンとダーリオに権限を渡した。俺の覚では”あぶく銭”なので使ってしまっても構わないと思っている。
「違います。これを・・・」
ベルメルトが一枚の羊皮紙を取り出した。
け取って容を確認する。
ベルメルトからの提案が書かれていた。
簡単に言えば、スラム街の取り込みだ。他の街や都市のスラム街との渡りをつけて、諜報活を行うということだ。
全部の街や都市で可能ではないと書かれている。スラム街でも顔役が居ない場合などもあり、そのような場所では組織をまとめることから始めなければならないということだ。まとまった資金が必要になるようだが確かに有効な手だ。俺がしい報を集めやすくなるかもしれない。
「いくつか條件がある」
「伺います」
「ベルメルト。お前がこの組織をまとめろ。スラムの顔役は引退してもらう。ホームの取りまとめの一人になってもらうことだ」
「は?儂が・・・。ですか?」
「そうだ。ベルメルト、お前が裏の組織をホームにってかせ」
「マナベ様。ホームの取りまとめは、儂が一人で行うわけじゃないのでしょう?」
「あぁ。食堂と宿屋は、ヘルマン。冒険者の取りまとめは、ダーリオ。それ以外をセバスがやっている。お前には、表向きにはセバスがやっている部分の外向きの事を頼みたい」
「外向きとは?」
「どうせ暫くしたら”タカリ”や”強請り”が來るだろう。そういう輩の相手を頼む」
「ははは。儂向きの仕事ですな」
「あぁ商人の相手は、セバスができるだろうが、二人で擔當してもらう事になるだろう」
「わかりました。これは、1つめの條件ですよね?」
「あぁ諜報活は、行おうと思っていた。部の調査もだが、外部向けには、ライムバッハ家と敵対している貴族家を優先的に頼む」
「かしこまりました。他には?」
「そうだな・・・。お前、娼館には顔が利くか?」
「そりゃぁそれなりに・・・」
「ホームに作るつもりは無いが、外の村になら作ってもいいだろう。頼めるか?」
「よろしいのですか?」
「外の村は、冒険者の訓練施設にするつもりだからな。飲み屋や娼館を周りに配置すれば、隔離もできるから丁度いいだろう」
「承ります。儂はすぐにけないので、代理の者にやらせますがよろしいですか?」
「問題ない。あぁライムバッハ家から査察が來るから、それが終わってからいてくれ、下準備は進めていいからな」
「わかりました」
ベルメルトは、全ての條件を飲んだ。
當初からそのつもりだったようだ。
數日後に、ベルメルトが俺を訪ねてきた。。
「マナベ様。コイツらがそれぞれのスラムに赴きます」
全部で100名位だろうか?
5名程度のチームになって行するようだ。風呂にって、服も著替えてきたという事だ。それぞれに路銀をもたせて、街に散ってもらう事になる。分は、冒険者ギルドや商人ギルドに登録しているので大丈夫だという事だ。
「ベルメルト。無理はさせるなよ」
「大丈夫です。無茶はさせません」
「・・・。まぁいい。そうか・・・。わかった」
チームを見ると、商人風の者や、夫婦者が居る。潛捜査というじのようだ。
「ベルメルト。もう一度聞くが、大丈夫か?」
「はい。もともと、儂の命令で、いろいろな貴族や商人に紛れ込ませていた者たちです。実績もありますから大丈夫です。それに、殆どの者が、マナベ様に謝しております」
「俺?なにかしたか?」
ベルメルトが説明してくれた。
ここに居る者たちは、ランドルやテオフィラたちの犠牲者なのだ。親や兄弟姉妹や子供がハメられて、殺されたり、奴隷に落とされたり、他にも娼館送りになった者も居るようだ。復讐する為に、ベルメルトを頼っていたのだ。報収集をして、弱みを握るが・・・。権力で握りつぶされていた。俺が、純粋な力で奴らを排除した事や奴隷になっていた者たちを解放した事に恩義をじているという事だ。
「事はわかった。わかったが、最初に言っておく、無理も無茶もするな。死ぬことは許さない。俺に恩義をじているのなら、老衰以外で死ぬことは許さない」
”はっ!”
皆が俺に頭を下げる。
そんな人間でも無いのだけどな。俺は、目の前に居る奴らを俺の復讐をし遂げるために使おうとしているだけだ。
ベルメルトが連れてきた者たちは、明日にも各地に散らばる事になる。
「ベルメルト。彼らは?」
「はい。一旦スラムに戻って準備します。夜半には出立します」
「わかった。ヘルマンに伝えておくから、準備ができたら、食堂に集まってくれ」
「え?」
「ホームの為に街を出る者たちの見送り位させてくれ、好きなを食べて飲んで宿で休んでから仕事に取り掛かってくれ」
「ありがとうございます」
ヘルマンに事を伝えて夜に食堂を開けてもらう事にした。
足踏みだと思わないわけじゃない。
気持ちは焦っている。焦っているが、報を握るためには、奴らよりも大きく出遅れている組織を作るためにも必要な事だ。
俺は、セバスとヘルマンとダーリオが用意した俺の部屋で、セバスがれてくれた紅茶を飲んでいる。
遊んでいるわけではない。ユリウスたちに説明する資料を作っている。
「セバス」
「はい」
「俺は・・・。いや、いい。ここは住みやすくなったか?」
「はい。旦那様のおかげで子供の聲が絶えない場所になりました」
「そうか・・・。ここに取ってよかったのだな」
「はい」
しぬるくなった紅茶を飲み干して、新しい紅茶を頼んだ。
そうか・・・。數名かもしれないけど、俺は命を救えたのか?ユリアンネ。ラウラ。カウラ。間違って居ないよな?
ユリウスとクリスが來るまで、ダンジョンには潛らないほうがいいだろう。
何を言われるのかわからない。
ユリウスたちが來る前に、俺がやらなければならない仕事をしておこう。屆けられた報告書に目を通して・・・。
”炎龍よ、かの者を焼き盡くせ”
與える魔力を絞って、手乗りサイズの炎龍が俺の手にあった書類を焼き盡くす。灰さえ殘さないように、なかった事にした。容まで、なかった事になればどんなに気持ちが楽になるか・・・。
ベルメルトが今まで調べていた報。ベルメルトの部下たちが持ってきた報。セバスやダーリオから屆けられた報。
1つ1つでは気が付かなかったかもしれない。しの違和が殘るだけだ。しかし、全ての報を重ねると1つの結論に行き著いてしまう。
報を流していた奴を始末しなければならないな。
正直気が重い。
【書籍版4巻7月8日発売】創造錬金術師は自由を謳歌する -故郷を追放されたら、魔王のお膝元で超絶効果のマジックアイテム作り放題になりました-
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