《異世界でもプログラム》第十話 カルラからの報告.1

カルラが地上から戻ってきた。俺に報告があるようだ。ギルドの事は、皆にまかせてしまっている。もうしわけなく思えてくるが、彼らならダンジョンに関わる問題が発生していない限り、対処は可能だろう。

執務室代わりに使っている部屋で、カルラから外の様子を聞きながら報告を聞く。

カルラからの報告は、報告書になっていると、口頭での報告があると言われた。

「まずは、報告書を頼む」

「はい」

カルラは、渡している書類ケース(容量は増量済み)から、書類の束を出す。

「え?これ?」

「はい。報告書と一緒に、提案書や要書があります。併せて、マナベ様の決済が必要な書類もあります」

「・・・。わかった。まずは、報告書を見るよ。ギルド関連?」

「はい」

出された書類の束から、カルラが報告書を選び出す。

の1/3程度が報告書のようだ。

書類を読んでいくが、ほとんどが各部門の収支報告だ。

概ね・・・。問題は・・・。もう一度、釘を差しておいた方がいいかもしれないな。

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「カルラ。ホーム関連の報告はこれだけか?口頭でもないのか?」

「いえ・・・」

「孤児たちか?」

「はい。ウーレンフートだけでなく、近隣の街や村からも流れてきていまして・・・」

やはり・・・。一つの部門を除いて、予算の枠で運営ができている。

部門ごとに報告書を出すように伝えている。報告書のチェックとして、他の部門に見せるように指示している。連続で同じ部門に確認させるのではなく、必ず違う部門に確認するようにしている。

その中で、孤児たちの數が増えている現象が報告されている。それだけではなく、予算を圧迫し始めている。まだ慌てるほどではないが、増えていく傾向にあるのなら、なにか対策を考える必要がある。各部門も、予算の枠ではあるが、人員の増加で対処が難しい場面が見られるようになっている。

カルラを見ると、まだなにかを隠しているようだ。言い難いのだろうか?

「カルラ。孤児に関して、口頭での報告があるのなら、先にしてくれ」

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「え?」

「なにかあるのだろう?」

「・・・。マナベ様。まだ、確定している報では無いのですが・・・」

「構わない。確定している容は無いのか?」

「報告書には記載しませんでしたが、近隣の子爵家と男爵家から苦が寄せられています」

「は?苦?なんの?」

「いろいろ裝飾はされていましたが、簡単にいうと”住民を奪うな”という容です」

「・・・。ハハハ。そうか、住民か・・・。無視しろ。カルラ。それだけでは無いのだろう?」

それだけなら、カルラが戸う理由はない。

それに、苦が寄せられているという事実があるのなら、”未確認”の報には當たらない。

「はい。現在、調査をさせていますが、孤児たちは、周辺の貴族が治める街や村から流れてきています」

周辺と言っているが、ライムバッハ領は王國でも大きな領地を持つ、辺境伯にふさわしい領地の広さだ。周辺の貴族領は、それほど多くない。ほとんどが、辺境伯か侯爵か伯爵の寄り子が治めている街だ。

獨立している貴族も存在するが、騎士爵は1つの街と周辺の村を領地としている。男爵家は1-2つの街を、子爵家は3-4の街を治める。そして、多くの貴族は、侯爵や辺境伯や伯爵の領地を任される代として領地を治めている。

「そうか・・・。親が文句を言い始めているのか?」

「いえ、違います。どうやら、ヘーゲルヒ辺境伯が、公爵と手を結んで・・・」

「カルラ!」

「はい!確認は、できていません」

「すまん。そうか・・・。アイツら・・・。なのだな」

「はい。マナベ様。クリスティーネ様にご報告して・・・」

「そうだな。クリスにまかせたほうが良さそうだな」

「ありがとうございます」

「やつらの狙いは解ったのか?」

「噂程度の話ですが・・・」

「かまわない」

「はい。噂ですが、孤児を帝國に売っているという話がありました」

持っていた、コップを握りつぶしてしまった。

コップが割れる音で、我に返ったが、怒りが沸々と湧き出てくる。

「カルラ!」

「・・・。はい」

「クリスに伝えろ、ウーレンフートは・・・。違うな、ホームは無制限に孤児をれる。あと、生活が苦しくなった農民も!全てだ!」

「よろしいのですか?」

「問題ない。マナベ商會の資金を投する。全部使っても構わない」

ホームに孤児をれ続けることで、帝國との関係に楔を打つことが出來る可能が出てきた。綻びができれば、何かが変わる可能だってある。

「そうだな。書狀を作る。ウーレンフートに居るギルに渡してくれ」

「はい」

カルラが心配そうな表を浮かべる。

「あぁ安心って違うけど・・・。気にするな。マナベ商會が持つ権利を、ホームに委譲する。その手続きを、ギルに頼むだけだ」

「え?」

「孤児が増えれば資金が居るだろう?それに、農家が増えれば、村の運営を行う初期投資が必要になる。一時的には、俺の資金だけで維持は出來るだろうが、恒久的な施策を考えるのなら、マナベ商會の権利を使うのがベストだろう。俺は、日々生活できるだけの資金があれば困らない」

絶句するカルラを宥めながら、ギルに委託する文章を書いていく、ギルなら俺の意図を汲んで行してくれるだろう。

孤児たちだけでは面白くないな。

「カルラ。配下でける者は居るのか?」

「はい。潛している者もおります」

カルラは、敏い。

俺がんでいる狀況を把握して、先回りをして返事をくれる。

「そうか、近隣の領主だけではなく、関連する街や村に”噂”を流せるか?」

「”噂”ですか?出來るとは思いますが?」

「それなら、頼む」

「どの様な噂ですか?」

「『ウーレンフートのホームが孤児だけではなく、農民のれを行っている。犯罪歴がなければ、誰でも構わない』らしいとな・・・。それから、『辺境伯ヘーゲルヒ家が、寄り子の貴族に稅を更に上げるように指示した』と噂を流してくれ」

「・・・。付隨する”噂”を流してもよろしいですか?」

「ん?」

「曰く『孤児や農民やは、帝國に高値で売れるから、稅が払えなければ差し出せ』と言い出していると・・・」

「いいだろう。その”噂”話を、ウーレンフートの中や周りに拡散してくれ」

「かしこまりました」

他の報告書を読み込んでいく、俺が読んでいる間は、カルラは側で待機して、俺が出した報告書の補足をしてくれている。

孤児の増加以外は、大きな問題はなさそうだ。

「カルラ。それで、口頭での報告は?」

「はい。先程の、孤児の噂に関わる可能がありますが、とある辺境伯家が資を買い漁っております」

「ん?ライムバッハとフォイルゲン以外のどこだ?」

「ヘーゲルヒ辺境伯家です」

「クリスには?」

「クリスティーネ様からも同様の報が來ております。ユリウス様が、ヘーゲルヒ辺境伯が”事を興す”としたら、ウーレンフートが最初のターゲットになるだろうとおっしゃっているようです」

「そうか・・・。どうした?カルラ?お前は違う意見なのか?」

「・・・」

うなずくが、自分の意見を言おうか迷っているようにじる。

「カルラ。俺は、現場に一番近いお前の意見を參考に聞きたい」

「はい。ヘーゲル辺境伯家は、跡継ぎ問題でめています」

「ん?あっ続けて」

「はい。跡継ぎは、妾の子である長男と、正妻の子である三男が爭っています」

「次男は?」

「・・・。死にました」

「・・・。わかった。それで?」

「長男の方が、能力も人もあるのですが・・・」

「母親の家柄か?」

「はい」

「くだらないな。それで?」

「三男が治める街で、暴が発生して、鎮圧はできたのですが、三男は長男が仕組んだことだと・・・」

「それで、資を長男が集め始めていると・・・。カルラは、長男と三男の跡継ぎ問題から発生している話だと思っているのだな」

「・・・。はい。クリスティーネ様には、”甘い”と言われてしまいました」

「うーん。カルラ。辺境伯領には、忍び込ませているのだろう?」

「はい」

「それなら、長男にも三男にも付いていない陣営はわかるよな?」

「もちろんです」

「その陣営の向を調べてほしい」

「え?長男でも三男でも、領都でもなく・・・。ですか?」

「あぁそいつらが逃げ出すようなら、部的な紛爭が激化する。逃げ出さなければ、外に向けて武力を振るうつもりだろう」

「・・・。マナベ様」

目を見開いて俺を見ているカルラが居る。

ドアがノックされて、カルラが我に返るまで沈黙の時間が流れた。

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