「魔王も真祖も飽きたのじゃ！　妾は學校にいきたいのじゃ!!」

ここは魔王城。

魔界の中心に建つ巨大な城だ。

恐ろしい雰囲気の魔王城に、不釣り合いな可らしい聲が響いていた。

「學校じゃ！　學校にいきたいのじゃ～!!」

魔達の集う謁見の間。

豪華な玉座に座り、パタパタと足をばたつかせるがいる。

十歳ほどのい見た目をしたそのこそ、魔の頂點にして魔王城の主。

魔王ウルリカ様だ。

突然のウルリカ様の駄々に、困った様子の魔達。

「ダメですよ、ウルリカ様は最強の力を持つ魔の王、そして高貴なる吸鬼の真祖なのです。これからも偉大な魔王様として君臨し続けていただかないと」

そばに控えていたタキシード姿の魔、ウルリカ様の補佐役である宰相ゼーファードがなだめにかかる。

しかしウルリカ様は、全く聞く耳を持とうとしない。

「嫌じゃ！　魔王も真祖も嫌なのじゃ!!」

「なぜですか？　ウルリカ様が魔界を支配して千年以上、戦爭も反も起きておりません。皆がウルリカ様を慕っている証拠です、なにも嫌なことはないでしょう？」

「それが嫌なのじゃ！　魔界はなにも面白いことが起こらぬ、退屈なのじゃ！」

「とても良いことではないですか。それに學校とは……一どういうことですか？」

「よくぞ聞いてくれたのう！　つい先日、あまりにも退屈すぎて人間界を覗いておったのじゃ。すると學校という場所を見つけてのう、そこでは沢山の若者が剣や魔法を學んでおったのじゃ」

ワクワクとした表で、學校の様子を説明するウルリカ様。

「人間界の學校ですか……なぜウルリカ様は學校にいきたいのですか？　ウルリカ様の実力であれば、剣も魔法も學ぶ必要は無いでしょう？」

「ゼファは分かっておらぬのう、學校では共に學ぶ者のことを友達と呼ぶのじゃ。友達と過ごす學校生活はとても楽しそうじゃった。妾も友達がしいのじゃ！」

「友達でしたら學校にいかずとも魔界でつくれば──」

「出來るわけがないのじゃ！　魔王と友達になりたい魔がどこにおる？　とにかく妾も學校にいってみたいのじゃ!!」

興した様子のウルリカ様は、ピョンと玉座から飛び降りる。

そのままゼーファードの言葉も聞かずに、スタスタと歩き出してしまう。

「お待ちください！　魔界と人間界は次元が分かれております、人間界にはいけません」

「分かれているのではない、妾が次元を分けたのじゃ」

ウルリカ様の言葉に、ギクリと顔をしかめるゼーファード。

「ゼファも知っておろう？　千年前に妾が時空間魔法で世界を分けたのじゃ。その妾が人間界に渡れぬわけがなかろう？」

「魔界はどうするのですか？　ウルリカ様が人間界にいってしまうと、魔界を統治する者がいなくなります！」

「うるさいのう！　魔界はゼファに任せる、いいじに統治しておくのじゃ!!」

「そんなっ!?」

「さて……いくかのう……」

謁見の間の中央に立つウルリカ様。

呼吸を整えると、靜かに魔力を集中させていく。

「お前達、早くウルリカ様を止めろ！」

ゼーファードの指示をけて、慌ててウルリカ様を止めにる魔達。しかし、ウルリカ様の魔力が強すぎて、近づくことも出來ない。

そうしている間に魔法の準備を整えたウルリカ様。空気が歪むほどの魔力を放ちながら、大きく両手を広げる。

「時空間魔法！　発するのじゃ!!」

ウルリカ様の言葉を合図に、大量の魔法陣が浮かび上がる。

魔法陣に囲まれて、ウルリカ様のが徐々に薄れていく。

「ウルリカ様、お待ちください～！」

「ゼファ！　皆の者！　後のことは頼むぞ!!」

満面の笑顔で魔法陣に飲み込まれていくウルリカ様。

「妾は學校にいってくる!!」

こうして、ウルリカ様は人間界に転移するのだった。