《魔王様は學校にいきたい!》ウルリカ様、襲來

──ズズンッ!!──。

ここはロムルス王國。

かな自然に囲まれた、人間界でも歴史の古い王國だ。

その首都である王都ロームルスに、衝撃が走っていた。

揺れる大地。

震える空気。

渦巻く暗雲。

王都全を、天変地異のような現象が襲う。

特に國王の住むロームルス城は被害が大きい。城壁は剝がれ、窓は々に割れていく。

ロームルス城の謁見の間は、悲鳴に包まれていた。

「今の揺れは一なんだ?」

「地震か? 火山の噴火? 天災の類か!?」

「どけ! 邪魔だ! 早く避難しなければ!」

悲鳴を上げているのは、豪華な裝にを包んだ貴族の男達だ。

でっぷりと太った腹を揺らしながら、我先に逃げ出そうとする貴族達。

その時、玉座から威厳のある聲が上がる。

「落ち著け、まずは狀況を確認するのだ!」

聲の主はロムルス王國の國王、ゼノン王。

の髪が特徴的な、壯年の國王だ。

ゼノン王のどっしりと落ち著いた態度を見て、貴族達も冷靜さを取り戻す。

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徐々に混が収まっていく謁見の間、そこに若い兵士が飛び込んでくる。

「國王陛下、大変です!」

「どうした?」

「はぁっ……はぁっ……城の前に……ま……ま……」

「ま?」

「城の前に、魔王が現れました!!」

シンと靜まり返る謁見の間。

しばらく沈黙が流れたあと、貴族達から呆れ半分の聲が上がる。

「魔王とは……伝説に出てくるあの魔王のことかな?」

「魔王はおとぎ話の中の存在だ、現実に現れるなどあり得ないことだ」

「まったく、報告は正確にして貰わねば困るな、ハハハッ」

笑いながら軽口を叩きあう貴族達。

ゼノン王だけが真剣な表で若い兵士を見つめている。

「兵士よ、先ほどの報告に間違いは──」

「國王はおるかー?」

ゼノン王が兵士に問いかけようとしたその時、可らしい聲と共に、一人のが飛び込んでくる。

「おおっ! お主が人間の國王だな!!」

「……確かに俺はこの國の王だが、そういうお前は何者だ?」

「妾の名はウルリカ・デモニカ・ヴァニラクロス、魔界の王じゃ! 國王よ、お主に頼みがあるのじゃ!」

謁見の間の中央で仁王立ちをするウルリカ様。

そんなウルリカ様へ、貴族達から失笑まじりの聲がかけられる。

「ハハハッ、面白いお嬢さんだ」

「これはこれは、可らしい魔王様もいたものだな」

「この子が伝説の魔王様か……クククッ……おっと失禮」

笑いに包まれる謁見の間。

キョトンとするウルリカ様の前に、一人の騎士が歩み出る。

「陛下の前で戯言を吐いた罪、といえども許されるものではないぞ……?」

「おお! ゴーヴァン殿ではないか!!」

「ゴーヴァン殿といえば、騎士の最高峰である“聖騎士”! そして王國屈指の実力者ですな!!」

「聖騎士殿、そちらの魔王様を優しく捕まえて差し上げるのだ」

聖騎士の登場に歓聲を上げる貴族達。

歓聲の中、ゴーヴァンは鋭い目つきでウルリカ様を睨みつける。

「俺は相手が子供だろうと手加減はしない、力づくで貴様を拘束する。怪我をしたくなければ抵抗しないことだ」

「おお! 妾に勝負を挑む気か? そんな命知らずは魔界にはおらんかったからのう、嬉しいのじゃ!」

「魔界? 魔王? そんなものは実在しない! 戯言もいい加減にしろ!!」

目にも止まらぬ速度で駆け出すゴーヴァン。

一瞬にしてウルリカ様との距離を詰め、強引に摑みかかる。

常人では反応すら出來ない速度、しかしウルリカ様は軽やかな作で、逆にゴーヴァンの腕を摑みとってしまう。

「なっ!?」

驚きのあまり、ピタリときを止めるゴーヴァン。

「ほれ、しっかり踏ん張れ!」

次の瞬間、重い鎧と屈強な筋に覆われたゴーヴァンのが、フワリと浮かび上がる。

なんとウルリカ様は、片手の力だけで軽々とゴーヴァンを持ち上げてしまったのだ。

「うおぉ!? ぐおあぁっ!!」

「どうしたのじゃ? もっと踏ん張らぬか」

ブンブンと布きれのように振り回されるゴーヴァン。

大の男をのようなウルリカ様が軽々と振り回して見せる。その異様な景に、ゼノン王も貴族達も言葉を失って固まってしまう。

「う……ぐおぉ……」

「む? 気を失ってしまったのじゃ」

ポイッと手を放すウルリカ様。

空中で放り投げられたゴーヴァンは、壁を突き破り消え去ってしまう。

「もう終わりか、つまらぬのう……」

「馬鹿な、王國屈指の聖騎士があっさりと……」

「今のは一……なにが起きたんだ?」

「まさか……本の魔王!?」

ウルリカ様の強さを目の當たりにして、表を凍り付かせる貴族達。

誰もが顔を青くする中、ゼノン王だけが落ち著いた表を崩さない。

「ゴーヴァンを軽々と……本の魔王かどうかはさておき、お前の実力は十分に分かった。で、俺になんの用だ?」

「そうじゃ、肝心の要件を忘れるところじゃった!」

「悪いが無理な要求はのめないぞ、暴力に屈することも絶対にない。それを踏まえたうえで──」

「妾は學校にいきたいのじゃ!」

「おい、そんな無理な要求は……んん?」

ウルリカ様の要求を聞いて、首を傾げるゼノン王。

「待て、今なんと言った?」

「だから! 妾は學校にいきたいのじゃ!!」

「「「「が、學校!?」」」」

予想外の要求に、ゼノン王も貴族達もそろって驚きの聲を上げる。

こうして、王國に乗り込んだウルリカ様。

王國の混は続く。

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