《魔王様は學校にいきたい!》魔王と王

「さっきから聞いてたら、なんて失禮な奴だ!」

「姫様への侮辱は許さない! 覚悟しなさい!!」

ウルリカ様に突きつけられる剣や杖。

にもかかわらず、ウルリカ様はマイペースだ。

「やる気じゃのう! 元気じゃのう! 良いことじゃ!!」

ポリポリ……ポリポリ……。

「まだクッキーを食べ続けているなんて、信じられないわ!」

「生意気な娘だ、よほど痛い目を見たいらしいな!」

クッキーをほおばるウルリカ様を見て、ますます怒りの聲を上げる子達。

そんな中、第三王と名乗ったが、靜かに口を開く。

「みんな、武を収めなさい」

「でも姫様……」

「こんな子供を寄ってたかって痛めつけたって、みっともないだけでしょう?」

第三王の命令をけて、子達はしぶしぶと武を収める。

「それにワタクシのことを知らないなんて、よっぽどド田舎に住んでいたってことよ。田舎者で可哀そうじゃない、許してあげましょう。ふふっ」

「姫様はお優しいですね。それにしても、どんな田舎に住んでいたのでしょうね? ププッ」

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「笑っては悪いですわ、クスクス……」

笑われるウルリカ様だが、相変わらずクッキーをほおばり続けている。

ポリポリ……ポリポリ……。

「妾は魔界におったから、人間界のことは詳しく知らんのじゃ」

「魔界? くくくっ……なら教えてあげますわ。ワタクシの名はシャルロット・アン・ロムルス。ロムルス王國の第三王よ」

「ほほう、ゼノンの娘か! 妾はウルリカ・デモニカ・ヴァニラクロスじゃ、よろしく頼むぞ」

「まあ、國王陛下を呼び捨て? いくら田舎者でも許されないことがあるのよ?」

ウルリカ様の態度に、シャルロット王は眉を寄せて不快をあらわにする。

ピンとしたが走るが、そんな空気などまったく気にしないウルリカ様。

「妾とゼノンは友達じゃからの、呼び捨てでも問題ないのじゃ。ところでシャルロットは妾になにか用事か? もしや妾と友達になりたいのかのう?」

「友達? 第三王であるワタクシが田舎者のあなたと? 冗談でしょう!?」

不快を強めるシャルロット王

取り巻きの子達もウルリカ様を睨みつけている。

「いいかしら、ロムルス王家はあなたが思っているよりもずっと高貴な一族なの。ワタクシを含む四人の兄姉もみんな特別な存在なのよ。あなたのような田舎者が友達になれる相手ではないの」

「そうなのか?」

「當然でしょう! いいわ、教えてあげる。父のゼノン王は賢王として大陸中に名が知れ渡っているわ。兄は聡明で頭が良く、知略においては父をも凌ぐほどよ。上の姉は魔法の天才で、國には並ぶ者のいない実力者。下の姉は聖騎士にも勝る剣の達人なのよ」

「流石はシャルロット様です、王家の偉大さが深く伝わってきました!」

シャルロットに向けて、子達から次々と稱賛の聲が上がる。

「どうかしら? しはロムルス王家の偉大さが理解できたかしら?」

鋭い目つきのシャルロット王

オリヴィアはビクビクと怯えた様子だ。

「ウルリカ様、謝った方がいいかもしれませんよ……」

ウルリカ様の耳元でこっそりと話しかけるオリヴィア。

その姿を、シャルロット王が目ざとく発見する。

「あら、そこにいるのはオリヴィアじゃない。沒落した元貴族の娘が、こんなところでなにをしているのかしら?」

「……お久しぶりですシャルロット様。ゼノン王のご厚意により、本日からウルリカ様のお世話係をさせて貰っております」

「ずいぶんと落ちぶれたものね、以前は國有數の大貴族だったのに、ふふっ」

「くすくすっ」

達からも笑われて、オリヴィアはつらそうに俯いてしまう。

そんなオリヴィアの顔を、ヒョイッとウルリカ様が覗き込む。

「リヴィは貴族だったのか、それで學校に通っておったのじゃな!」

「はい……そんなことより早く謝った方がいいですよ……」

「ん? なぜじゃ?」

「なぜって……」

キョトンと首を傾げるウルリカ様。

「そんなことも分からないの? 第三王であるワタクシに失禮な態度を取ったのよ? ロムルス王家の第三王であるこのワタクシに!」

「それは分かったが、お主は一何者なのじゃ?」

ウルリカ様の質問に、シャルロット王はティーテーブルを叩いて聲を上げる。

「あなた! ワタクシの話を聞いていなかったの!?」

「聞いておったが、ゼノンや兄姉の話ばかりで、お主自の話は全く聞かせて貰っておらぬ。これではお主のことが分からぬのじゃ」

「は……?」

凍り付く場の空気。

オリヴィアも取り巻きの子達も、青い顔で固まってしまう。

「もしやお主、王家に生まれたから自分が偉いと思っておるのか? 兄姉が優れているから自分も優れていると勘違いしておらぬか?」

「なっ……なにを!?」

「妾から見れば、お主などただの小娘じゃぞ」

「小娘!?」

「そうじゃのう、ただ話が長いだけの娘じゃな。味しいクッキーを作れるリヴィの方が、よっぽど価値ある人間じゃ」

怒りのあまり、プルプルと震えるシャルロット王

我に返った子達から、次々と怒りの聲が上がる。

「シャルロット様に向かって、なんてことを言うの!」

「許せないわ!」

顔を赤くしていたシャルロット王だが、突然冷めた表へと豹変する。

「……あなた、學校に通いたいのよね……?」

「その通りじゃ!」

「ワタクシも今年から學校に通うのよ、二日後には試験で一緒ね……」

「そうなのか! それは楽しみじゃのう」

「ええ、本當に楽しみね……いくわよみんな!」

「あ、待って下さいシャルロット姫様!」

「あの娘は放っといていいのですか?」

達を無視してテラスを後にするシャルロット王

慌てて子達もテラスを去っていく

「ワタクシをこけにして、許さないわ! 試験では覚えてなさい!!」

こうして、王の恨みを買ってしまったウルリカ様。

果たして無事、學園に學できるのか。

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