《魔王様は學校にいきたい!》実技演習 ~剣編~

気を取り直して、剣実技の演習。

試験の容は、木刀を使った一対一の模擬戦闘だ。

訓練場には、本番さながらに演習にはげむウルリカ様の姿があった。

片手に木刀を持ち、ピョンピョンと飛び回るウルリカ様。

相手役である聖騎士のゴーヴァンが、巧みな剣技でウルリカ様に切りかかる。

「奧義、牙連斬がれんざん!」

連続で突き出されるゴーヴァンの剣。目にも止まらぬ速度の奧義だ。

しかしウルリカ様は、軽々としたきで全ての攻撃をかわしてしまう。

「ほれ、しっかり狙うのじゃ」

「くそっ! なぜ攻撃があたらない!?」

「それはお主の剣が遅いからじゃ」

「遅い? そんな馬鹿な!」

攻撃の速度を上げるゴーヴァン。

「奧義、疾風雙刃しっぷうそうじん! さらに奧義、猛襲虎連撃もうしゅうこれんげき!!」

息もつかせぬゴーヴァンの攻撃。だがウルリカ様は平然とかわし続ける。

「はぁ……はぁ……くっ!」

きが鈍っておるぞ、ほれっ」

「なっ、ぐあぁっ!?」

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宙を舞う木刀。

地面に倒れ込むゴーヴァン。

ウルリカ様の繰り出したカウンターが、ゴーヴァンを弾き飛ばしたのだ。

「馬鹿なっ……」

「もうお終いか? けないのう」

子供のような見た目のウルリカ様が、屈強な聖騎士であるゴーヴァンを見下ろしている。

その異様な景に、見學していたゼノン王とオリヴィアは開いた口が塞がらない。

「ゴーヴァンを子供扱いとは……演習の必要などあるのか……?」

「ウルリカ様……強すぎます……っ」

「なんだこれは! この力の差は一なんだ!?」

地面を毆り、聲をあらげるゴーヴァン。

一方ウルリカ様は、缶からクッキーを取り出して口に放り込む。

ゴーヴァンとは対照的に呑気な様子だ。

「そもそもお主、基本が全く出來ておらん……ポリポリ……」

「基本が出來ていない!? 聖騎士である俺が?」

「お主の肩書きは知らぬが、とにかく基本が中途半端じゃ。テクニックに頼り過ぎじゃな」

「中途半端……!?」

遠慮のないウルリカ様の言葉に、ゴーヴァンは放心狀態だ。

「剣での戦いなど、切る、突く、ける、避けるがしっかり出來ておれば事足りる。細かいテクニックや奧義などは必要はないのじゃ……ポリポリ……」

ピシャリと言い切ったウルリカ様。

ゴーヴァンは激しい口調で反対の意を示す。

「剣とはそんなに淺いものではない! 複雑な型や高度な技を組み合わせて、はじめて完するものだ!!」

「それは基本が完璧に出來ている前提の話じゃな。基本の出來ていないお主が言うことではないのじゃ……ポリポリ……」

「納得出來ん、技に勝るものなどない!」

「ならば実際に見せてやるのじゃ」

「実際に?」

クッキーを缶にしまい、スタスタと歩き出すウルリカ様。

ゴーヴァンから十分な距離を取ったところで、木刀を両手で構える。

「見様見真似じゃが、お主の技を借りるぞ……ざ・れ・ん・が・ん・っ」

たどたどしい掛け聲。

そして鋭すぎるのこなし。

ウルリカ様が繰り出した技は、ゴーヴァンの奧義である牙連斬がれんざんだ。

しかし、速度と度はゴーヴァンとは桁違い。一瞬にして凄まじい衝撃波と突風が発生する。

衝撃波に抉られて崩れ落ちる城の外壁。

巻き上がった突風は竜巻を発生させ、木々をなぎ倒す。

「どうじゃ? お主と同じ技を使ってみたが、威力が違うじゃろう? 妾は基本がしっかりしておるからじゃ、基本は大事じゃ」

フフンッと自信満々にを張るウルリカ様。

だが、それを聞くゴーヴァンは目を見開いたまま固まっている。

「いや……基本とか……そういう話じゃないような……? あと……俺の奧義は……牙連斬がれんざんだ……ざ・れ・ん・が・ん・じゃない……」

固まっているのはゴーヴァンだけではない。

繰り出された技の威力に、呆然とするゼノン王とオリヴィア。

「國王陛下……」

「どうしたオリヴィア?」

「本當にウルリカ様に試験をけさせていいのですか? 學園が崩壊するかもしれませんよ……」

「あぁ……ちょっと後悔してきたところだ……」

しばらくの間呆けていたゼノン王。

我に返り、ウルリカに向かって聲を張りあげる。

「ウルリカ! お前本気を出すの止な!!」

「なに!? どういうことじゃ! まだ一割も力を出しておらぬぞ!!」

「一割? 一割の力で俺はあしらわれていたのか……!?」

ショックのあまりガックリと崩れ落ちるゴーヴァン。

しかしゴーヴァンを気にとめる者は誰もいない。

「では言い方を変える! 試験の本番は最小最低の力で、手加減しすぎるくらい手加減すること、いいな!!」

「ううむ……ゼノンがそう言うならば仕方ないのう……友達じゃからのう……」

つまらなそうなウルリカ様、口を尖らせながらそっぽを向いてしまう。

「オリヴィア、頼みがあるのだが」

「はいっ、なんでしょうか!」

「試験中お前がウルリカに同行出來るよう、學園に頼んでおく。ウルリカがやり過ぎないよう見張っておいてくれ」

「もっ、もちろんです!」

「それにしても……はぁ……心配だ……」

「はい……心配です……」

「まあよい、試験が楽しみじゃのう!」

心配するゼノン王とオリヴィアを橫目に、試験に向けて意気揚々なウルリカ様。

こうして、実技演習を終えたウルリカ様。

いよいよ明日は、學試験の本番だ。

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