《魔王様は學校にいきたい!》ウルリカ様の學試験

第一の試験、筆記試験。

靜かな大教室に、カリカリとペンの走る音だけが響く。

機に向かってペンをかす、大勢の験生達。

ウルリカ様も試験をけているのだが……。

「ううむ……まったく分からぬのじゃ……」

頭に“?マーク”を浮かべるウルリカ様。

試験の問題は、ロムルス王國の歴史や貴族社會でのマナー等。

魔界で暮らしていたウルリカ様には、分からないことばかりだ。

「うむぅ……分からぬ……分からぬのじゃ……これはマズいのじゃ……」

「そこ、試験中は靜かに!」

「う、うぅむ……」

注意されてションボリしてしまうウルリカ様。

そのまま時間だけが過ぎていく、そして──。

「そこまで! 験生はペンを置くように!!」

「なんと! もう終わってしまったのじゃ!!」

真っ白なままの答案用紙を前に、頭が真っ白になるウルリカ様。

ウルリカ様の學試験、早々に暗雲が立ち込めるのだった。

✡ ✡ ✡ ✡ ✡ ✡

続いて行われるのは、魔法実技の試験である。

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校庭に並ばされる験生達。

し離れた場所には、人の形をした木製の的が並んでいる。

「これより魔法実技を開始する! 一人ずつ順番に、的に向かって魔法を放て。魔法は好きに使ってよい。魔法の度と威力を見せてくれ!!」

「「「「「はい!」」」」」

験生はいくつかの列に並び、順番に魔法を放っていく。

「炎よ! 焼きはらえ!!」

「雷よほとばしれ!」

「つらぬけ! 氷の槍!」

うまく的を破壊する者もいれば、狙いを外す者、威力の足りない者もいる。

そんな中、列の先頭から大きな歓聲が上がる。

歓聲の中心にいるのはシャルロット王だ。

構えた杖の先では、木製の的が々に砕かれている。

「流石シャルロット姫様! 素晴らしい魔法でした!!」

「他の験生とは比べものになりませんね!」

「教師ではなくシャルロット姫様に魔法を教わりたいくらいですわ」

「フフフッ、ワタクシなんて上のお姉様に比べたらまだまだよ」

「謙虛なところも素敵ですわ」

「憧れます~」

一方ウルリカ様とオリヴィアは、シャルロット王とは違う列の最後尾に並んでいた。

「もうすぐ妾の番じゃ!」

「もう一度言っておきますよ! くれぐれも本気は……」

「分かっておる、ちゃんと手加減するのじゃ」

そしていよいよ列の最後尾、ウルリカ様の順番となる。

「次で最後か、お前は……験生か?」

「そうじゃ、よろしく頼むのじゃ!」

他の験生と比べて、明らかに小さなウルリカ様。

試験の教師は怪しむそぶりを見せるが、そこへオリヴィアがサッと割ってる。

「こちらがウルリカ様の験票です!」

「む……本の様だな。分かった、では魔法を見せてくれ」

「よぉし!」

意気揚々と杖をかざすウルリカ様。

小さくつぶやきながら、目を閉じて集中する。

「最小最低の力で……手加減しすぎるくらい……」

ポッという音が鳴り、杖の先端に髪のほどの細さの炎がともる。

その炎を自信満々に見せるウルリカ様。

「どうじゃ!」

「おい、それが魔法か? それで全力なのか?」

「うむ! これ以上は無理なのじゃ」

「そ、そうか……」

小さすぎる魔法を見せられて、呆れた顔の試験

周りで見ていた験生は、クスクスと笑い聲をあげる。

「なにあれ? 本當に魔法なの?」

「子供のおままごとじゃないか」

大勢の験生に笑われながら、それでもまったく気にしないウルリカ様。

パタパタと走ってオリヴィアの元へと戻っていく。

「どうじゃった?」

「えっと……今のは魔法なのですか?」

「もちろんじゃ! ゼノンに言われた通り、最小最低の力で手加減しすぎるくらいの魔法を使ってみたのじゃ。あれ以上小さな魔法は無理じゃ」

「そ、そうですか……」

申し訳なさそうに頭を抱えるオリヴィア。

ウルリカ様の學試験、まだまだ続く。

✡ ✡ ✡ ✡ ✡ ✡

続いては剣実技の試験である。

験生が二人一組になり、模擬戦形式で行われる試験だ。

校庭のいたるところで、験生達の気合のったび聲があがっている。

「とおおぉっ!」

「そこだ!」

試験用の木刀を使い、激しく打ち合う験生達。

中でも注目を集めているのはシャルロット王だ。

「おりゃあぁっ!!」

「甘いですわ!」

「なに!? ぐあぁっ」

シャルロット王へと切りかかる対戦相手の年。

しかし、あっさりとかわされて逆に打ち倒されてしまう。

「流石はシャルロット姫様! 剣の腕も素晴らしいです!!」

「見惚れてしまいました!」

「フフフッ、下のお姉様には遠く及ばないわ、まだまだ進が必要ね」

盛り上がるシャルロット王と取り巻きの子達。

一方ウルリカ様は、校庭の端っこで試験をけていた。

「あの……ナターシャです……よろしくお願いしますぅ……」

「ウルリカじゃ、よろしくのう!」

ナターシャと名乗ったが、ウルリカ様の対戦相手である。

クリクリとしたオレンジ髪の、可らしいの子だ。

「さて、やるかのう!!」

張り切るウルリカ様の橫で、オリヴィアがそっと耳打ちをする。

「ウルリカ様、本気でやっちゃダメですよ」

「分かっておる、約束じゃからの」

木刀を構えるウルリカ様とナターシャ。

二人の間に、試験の教師が立つ。

「では……試合開始!」

「やああぁぁっ!」

試験の號令と同時に、ナターシャは木刀を振り上げる。

対するウルリカ様は、ゆったりと木刀を構えて防勢だ

グッと足を踏み込み、木刀を振り下ろすナターシャ。

それを見たウルリカ様は、驚いた表を浮かべて、そっと木刀を下してしまう。

「てやあぁ!!」

ポカッと音を立て、ウルリカ様の頭に木刀が直撃する。

「……え?」

「うむ、ナターシャの勝ちじゃな!」

予想外の決著に、オリヴィアも試験も、ナターシャでさえポカンと呆けてしまう。

「し……勝負あり!」

我に返った試験が、試験終了の合図を出す。

キョトンとしたまま、一禮してその場を後にするナターシャ。

殘されたウルリカ様に、オリヴィアが質問をする。

「ウルリカ様、負けてしまってよかったのですか?」

「うむ、リヴィはナターシャの実力をどう思った?」

「どうって……普通だったと思いますが」

「リヴィもまだまだじゃのう、ナターシャは剣の才能に溢れておるのじゃ」

「才能ですか……?」

「素質だけでいえば、人間界で出會った誰よりも優れたものを持っておった。まだまだ荒削りじゃが、あの一太刀はかわすには惜しいと思ったのじゃ」

「私にはよく分かりませんが……試験結果が負けになってしまいましたよ?」

うたれた頭をナデナデするウルリカ様。

負けたことなどまったく気にしていない。

「仕方ないのじゃ、気を取り直して次じゃな!」

ウルリカ様の學試験、次は最後の実地試験だ。

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