《魔王様は學校にいきたい!》小さな救援

「グルオオォッ!!」

「くうぅっ……!」

爪を振り回し、暴れ回るレッサードラゴン。

逃げるシャルロット王は、泥だらけでボロボロだ。

「炎よ!」

必死に逃げながら、杖をかかげるシャルロット王

「炎よ! 出なさい、炎よ!!」

杖の先端がチカチカと點滅する。

しかし、魔法が発する気配はない。

「どうして? どうして魔法が使えないの!?」

思うように魔法を使えず、慌てて木のに避難する。

杖を見たシャルロット王は、驚きで言葉を失う。

「なに……これ……?」

黒く濁った寶石、醜くゆがんだ金の細工。

しかった杖は、見る影もなくボロボロだ。

シャルロット王の脳裏に、ウルリカ様の言葉がよぎる。

悪品……まさか本當に……?」

呆然とするシャルロット王、その背中に衝撃が走る。

「グオォンッ!」

「きゃあっ!」

レッサードラゴンの當たりによって、隠れていた木をへし折られたのだ。

倒れるシャルロット王へと、レッサードラゴンが襲いかかる。

その時──。

「シャルロット様、危ない!」

聲とともに、小さな影が飛び込んでくる。

「ナターシャ! どうして!?」

飛び込んできたのは、ナターシャだ。

スラリと剣を抜くと、レッサードラゴンの前に立つ。

「シャルロット様を置いて逃げるなんて、そんなこと出來ません!」

「ナターシャ……」

「ドラゴンは私が引きつけます、シャルロット様は安全なところへお逃げください!」

「そんなっ、ムチャよ!」

慌てて止めようとするシャルロット王

しかしナターシャは、レッサードラゴンの方へと駆け出してしまう。

「こっちです! 私が相手です!!」

「グォ? グルオォ!!」

爪を振り回すレッサードラゴン、しかしナターシャには屆かない。

軽やかなステップでかわし、時には剣でけ流す。

ダメージを最小限におさえる、見事な戦い方だ。

「そこです!」

「グオオオォォッ!?」

一瞬のスキを突き、ナターシャのカウンターが決まる。

レッサードラゴンの首元から、赤いが吹きあがる。

「やったわ! 凄いわナターシャ!!」

「まだです、この程度では──」

「グオオァッ!!」

大きく開かれる口、その中でメラメラと燃えあがる炎。

レッサードラゴンの口から、炎のブレスが吐き出される

撒き散らされる炎の一部が、シャルロット王へと襲いかかる。

「きゃあぁっ!?」

「シャルロット様!!」

ナターシャはシャルロット王を抱きかかえ、間一髪よけることに功する。

しかし、よけたはずのナターシャが、倒れたままかない。

「う……ぐぅ……」

「ナターシャ! そんなっ……」

ボロボロの姿で橫たわるナターシャ。

シャルロット王をかばって、全にダメージをけたのだ。

「シャルロット……様……早く……逃げて……」

傷だらけのナターシャは、健気にもシャルロット王を心配している。

シャルロット王の瞳から、ポロリと涙がこぼれ落ちる。

「ダメよ……ナターシャ……死んではダメ……」

シャルロット王は小さく呟く。

そして、ナターシャの剣を拾いあげ、レッサードラゴンの前に立つ。

「ワタクシが相手よ!!」

「シャルロット……様……」

震える手で、必死に剣を構えるシャルロット王

しかし、レッサードラゴンにとっては、ただのエサである。

「グオオオォッ!!」

レッサードラゴンの大きな顎が迫りくる。

「ひぃっ」と悲鳴をあげて、ギュっと目をつぶるシャルロット王

その時──。

「そこまでじゃ!」

突然の可らしい聲。

そして、ズシンッという重い音。

シャルロット王は、恐る恐る目を開ける。

その瞳に、レッサードラゴンを食い止める、小さな背中が映る。

「あなたは……!」

「うむ、間に合ったようじゃな」

そこには、小さな魔王様の姿があった。

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