《魔王様は學校にいきたい!》魔王と達の日常
とある日の晝下がり。
シャルロット王とナターシャは、ロームルス城の中庭テラスにいた。
ティーテーブルに座る二人。向かい側には、ウルリカ様が座っている。
オリヴィアもえて、四人仲のよい雰囲気だ。
そこへやってくる、數名の若い男。
シャルロット王の取り巻きをしていた子達である。
「……シャルロット姫様、これは一どういうことですか?」
「どう、と言われても……」
「とぼけないでください! どうしてその田舎者と一緒にいるのですか? それに、試験の時のことは……一どうなって……」
言いよどむ年。
シャルロット王は、黙ってスッと椅子から立ち上がる。
「あなた達には怖い思いをさせたわね。悪かったわ、ごめんなさい」
ペコリとお詫びをするシャルロット王。
その行に、子達は驚き固まってしまう。
顔を上げたシャルロット王は、ベッポの姿を見つける。
「あら、ベッポも一緒だったのね」
「シャルロット姫様……あの……あの時のことは……」
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「試験中に見聞きしたことは、誰にも言ってないわよ。々と無理を頼んで悪かったわね」
「そんな……信じられない……っ」
ベッポの表は、不信で満ちている。
一方シャルロット王は、落ち著いた表を崩さない。
「そう……そうね、信じてもらえなくて當然ね……」
ふっと息を吐いき、優しい口調でベッポへと語りかける。
「ワタクシはもう愚かな行いは止めたの。だからベッポ、あなたも悪いことはお止めなさいな」
らかに微笑むシャルロット王。
太のを浴びて、キラキラとしい笑顔だ。
ベッポはカァッと顔を赤くしてしまう。
別人のようなシャルロット王の行に、取り巻きだった年は聲をあげる。
「おかしい……シャルロット姫様はおかしくなってしまった!」
「その通りだわ。ナターシャなんかと一緒にいて、しかも田舎者と沒落貴族も一緒? 正気じゃないわ!」
「みんな行こう! きっとドラゴンに襲われて、神を病んでしまったんだ」
ゾロゾロと去っていく子達。
シャルロット王は、子達の背中をじっと見つめている。
「行ってしまったのじゃ、よかったのか?」
「いいのよ……こうして去ってしまったということは、本當の友達ではなかったということだわ。それに……」
クルリと振り返るシャルロット王。
し張した様子で、三人を順番に見つめる。
「ウルリカ、ナターシャ、オリヴィア! ワタクシ、あなた達とお友達になりたいわ。本當のお友達に……!!」
「なんじゃと! 本當か!!」
聞いた瞬間、ピョーンと飛び跳ねるウルリカ様。
喜びでいっぱいの様子だ。
「嬉しいのじゃ! ならばシャルロットは……ロティは今日から妾のお友達じゃ!!」
「ロティ!! はうぅっ……」
「ロティ」と呼ばれたシャルロット王は、顔を真っ赤にして照れてしまう。
その様子を見ていたナターシャは、パッと立ち上がる。
「わ……私も! 私もウルリカさんとお友達になりたいです!!」
「なんと! ナターシャもお友達なのじゃ!!」
ピョンピョンと飛んで喜ぶウルリカ様。
そんなウルリカ様の手を、ナターシャはハシッと摑む。
「ウルリカさん、私にも呼び名をつけてください! ロティやリヴィのような、可らしい呼び名を!!」
「うーむ……ならばサーシャじゃな」
「サーシャですね、ステキです! ありがとうございます!!」
嬉しそうに笑うナターシャ。
ほっぺたに手をあてて、照れているシャルロット王。
そんな二人を、優しく見つめるオリヴィア。
こうしてウルリカ様に、新たなお友達が出來たのだった。
✡ ✡ ✡ ✡ ✡ ✡
らかな日差しの差し込むひと時。
ウルリカ様は、一人テクテクとロームルス城の敷地を歩いていた。
訓練場へと立ち寄ったところで、ふと足を止める。
「ロティではないか、どうしたのじゃ?」
「ウルリカッ、靜かにしてくださいですわ」
生垣ので、コソコソと隠れるシャルロット王。
人差し指で「しぃ~」とやりながら、ウルリカ様を近くに呼び寄せる。
シャルロット王の見つめる先では、二人のがベンチに腰かけていた。
オリヴィアとナターシャである。
日なたぼっこをしながら、仲良くお話をしているようだ。
「それにしても、シャルロット様は変わられましたね」
「はい、し前まではワガママで意地悪の、最悪王でした……」
「私の家が沒落した時は、延々と酷い悪口を言われましたよ」
「私も毎日いびられていました、本當に最悪な格でした」
ニコニコと笑いながら、なかなか毒っぽいことを言う二人。
シャルロット王に聞かれているとも知らず、楽しそうに話を弾ませる。
「金で高慢で、絵にかいたような悪王でしたよね」
「一緒にいた子達も、ずいぶん不満を溜めていましたよ」
ドロドロと続く二人の會話。
聞いているシャルロット王は、ズーンと沈んでいく。
「でも今は変わられましたよね。とっても素敵なお姫様です!」
「はい! 見た目もおしいですし、あこがれの王様ですよね!」
「ナターシャ様は──」
「待って」
オリヴィアの口を、ナターシャは手でパッとおさえる。
「バレた!?」と張するシャルロット王。
「私のことはサーシャと呼んでください。私もリヴィと呼びたいです、仲良くしたいです!」
「そ……そうですか? では……サーシャ……」
「リヴィ……ちょっと照れくさいですね」
顔を赤くして、照れ笑いをする二人。
バレていなかったことに、シャルロット王はホッと息をつく。
「えっと……サーシャはなぜ、シャルロット様を助けたのですか? 散々いびられていたのでしょう?」
「はい……でも昔は違ったのですよ」
「昔ですか?」
昔を思い出して、空を見あげるナターシャ。
「私は昔からどんくさくて、周りからいじめられていました。でもシャルロット様だけは、私と仲良くしてくれたのです。ずっと味方でいてくれたのです」
オリヴィアは黙って話を聞いている。
「本當はとても心の優しい方なのです。だから私は、シャルロット様の味方でいると決めました。いびられもしましたけど……今は優しいシャルロット様に戻ってくれました!」
にっこりとほほ笑むナターシャ。
日のを浴びて、とてもきれいな笑顔だ。
一方、生垣ののシャルロット王は、ポロポロと涙を流していた。
「ううぅ……ナターシャ……そんな風に思ってくれていたのね……」
「そんなに泣いておったら、見つかってしまうのじゃ」
「ぐすん……そうですわね!」
ぐしぐしっと涙を拭いて、シャルロット王は生垣から出ていく。
「ナターシャ、オリヴィア! こんなところにいたのね」
シャルロット王の登場で、一瞬ビクリと震える二人。
しかしすぐに平靜を取り戻す。
「シャルット様、目が真っ赤ですよ。どうかされましたか?」
「なんでもないわ、それよりご一緒してよろしいかしら?」
「はい、もちろんです!」
こうして、緩やかな時間は過ぎていくのだった。
✡ ✡ ✡ ✡ ✡ ✡
「はいウルリカ、あ~ん」
「あ~ん……パムッ」
まったりとした午後の時間。
ウルリカ様とシャルロット王は、テラスでのんびりと過ごしていた。
とりどりのお菓子を、ウルリカ様に「あ~ん」してあげるシャルロット王。
そこへ、オリヴィアとナターシャがやってくる。
「シャルロット様……一なにをしているのですか?」
「ウルリカにマカロンをあげているのよ」
「うむ、可らしいお菓子じゃな!」
「まだあるわよ。はい、あ~ん」
「あ~むっ……パムパム……味しいのじゃ!」
パムパムと音を立てて、マカロンをほおばるウルリカ様。
シャルロット王は、おしそうにウルリカ様を眺めている。
まるで雛に餌をやる親鳥のようだ。
「シャルロット様が『あ~ん』ってしてます……異常行です……」
「いいえサーシャ……あれはニセ王かもしれません……」
「ウルリカは可いわね。はい、あ~ん」
「あむっ……パムパム……」
「フフフッ」
マカロンをあげながら、にまにまと笑うシャルロット王。
ウルリカ様にメロメロである。
一方、オリヴィアとナターシャは、引きつった表だ。
「「不気味です……」」
シャルロット王の幸せな時間は過ぎていく。
✡ ✡ ✡ ✡ ✡ ✡
ロームルス城の中庭テラス。
溫かい日差しの差し込む中、ゼノン王は一人くつろいでいた。
「今日はいい天気だ、いい日になりそうだな」
大きくびをするゼノン王。
不意に背後から聲をかけられる。
「あなた……」
ゼノン王の背筋に、ゾクリッと悪寒が走る。
ゆっくり振り返ると、そこにはしいが立っていた。
「ヴィ……ヴィクトリア……いつの間に休暇から戻ったのだ?」
「あら、私は休暇から戻ってはいけないのかしら?」
冷ややかな笑顔を浮かべて、ゆっくりと近づいてくる。
ゼノン王の妻にして、ロムルス王國の王。ヴィクトリアである。
「ルードルフに聞いたわよ、最近ウルリカちゃんっていう、小さなの子にご執心らしいじゃない?」
「おいっ、その言い方は──」
「最低だわ! いつの間に小児者になったのよ!!」
バチーン! と頬をはたかれて、ゼノン王はフラフラと倒れてしまう。
これ以上ないほどの、見事なビンタだ。
「違うぞ! 斷じて違う!! くそっ……ルードルフめ、きちんと説明しろ」
悪態をつくゼノン王。
その間もヴィクトリア王の怒りは収まらない。
「信じられないわ! 四人も子供がいながら!!」
「だから! 違うと言っているだろう──」
「ゼノ~ン!」
その時、可らしい聲とともに、小さな影が走ってくる。
ウルリカ様である、最悪のタイミングだ。
「あら、あなたは?」
「はじめて見る顔じゃな、妾はウルリカじゃ! ゼノンの友達じゃ!」
「まぁまぁまぁ、あなたがウルリカちゃんなのね! なんて可らしいのかしら!! 私はヴィクトリアよ、ゼノンの妻なの」
「ヴィクトリアか、よろしくのう!」
「可いわ~、お人形さんみたい!」
小さなウルリカ様を抱きかかえて、メロメロなヴィクトリア王。
「本當に可らしいわ~……ねぇ、あなた?」
一転して、ギロリッとゼノン王を睨みつける。
「いや、だから違うと言っているだろう……」
「こんな小さな子に……許せないわっ」
この後、ゼノン王の釈明は、日が暮れるまで続いたという。
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