《魔王様は學校にいきたい!》鬼事件

早朝、ロームルス城。

國王の執務室に、三人の男が集まっていた。

一人はロムルス王國の王、ゼノン王。

もう一人は、大臣ルードルフ。

そして最後の一人は、學園の最高責任者、ノイマン學長である。

テーブルを囲む男達は、深刻な表を浮かべている。

「ルードルフよ、報告容に間違いはないのだな?」

「間違いありません、私も直接確認しました。死となって見つかった、首筋に噛まれた跡が殘っていました」

テーブルの上には、いくつもの紙が雑に並べられている。

その中の一枚を、ルードルフは読みあげていく。

「被害者の名前はロゼッタ、ロームルス學園の教師です。昨夜は友人達と遅くまで飲み歩いており、その後一人で歩いて帰ったそうです。最後に目撃したのは友人の。そして、今朝になり全を抜かれた狀態で発見されております」

「……吸鬼……か……」

シンと靜まり返る執務室。

「ええ……吸鬼の仕業で間違いないかと思われます」

「くそっ、よりによって王都に現れるとは……」

「奴らは人類の敵ですな、最も邪悪と言われている生きの一つですぞ」

「數年前を思い出しますね……吸鬼との大規模な戦い、あの時は大変な被害を出しました」

「人間と吸鬼の爭いは長いですからな、相容れない存在なのでしょうな」

執務室に重苦しい空気が流れる。

「とにかく、厄介なことになりましたよ。吸鬼と人間、見た目はほとんど同じです。どこに潛んでいるかも分かりません」

「事件のあった場所からするに、パラテノ森林のどこかですかな。あるいは學園部の可能もありますぞ」

「陛下、どのように対処しますか?」

目を閉じて、じっと考え込むゼノン王。

ゆっくり目を開くと、ルードルフに指示を出す。

「王都全域で夜間外出を止とする、警備隊を総員して國民を守れ。それと、速やかに討伐部隊の編だ!」

「かしこまりました」

「それとノイマン學長──」

「みなまで言いなさるな、ワシを呼んだ理由は察しておりますでな」

ノイマン學長は、片手をあげてゼノン王の言葉を制する。

「被害者は我が校の教師……學園部も安全とは言えないでしょうな。しばらくは休校といたしましょう」

「話が早いな、禮を言う」

普段は仲の悪い王家と學園。

しかし今回に限っては、速やかに協力関係を築いている。

それほど吸鬼という存在は、人間にとって脅威なのである。

「さて……ここからが本題なのだが……」

深刻な表を浮かべるゼノン王。

よりいっそう、重苦しい空気が流れる。

「休校ということは、明日予定されていたウルリカの初登校も延期になる……どうしたものか……」

「どうしましょうかね……」

「どうしたものですかな……」

黙り込む三人の男達。

鬼の話の時よりも、はるかに深刻な雰囲気である。

「ヴィクトリアから聞いた話だと、ウルリカは初登校をとてつもなく楽しみにしているらしい」

「とてつもなく、ですか……」

「ああ、とてつもなく、だ」

「はぁ」とため息をつくルードルフ。

ゼノン王は頭を抱えてしまっている。

「休校によって登校出來ない、ということになれば……」

「……國家滅亡ですか……?」

「「「……」」」

シーン……と靜まり返る執務室。

その時、バーンッと扉が開き、小さな影が飛び込んでくる。

「ゼノン! おるか~?」

學生服にを包んだ、小さな魔王様の登場である。

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