《魔王様は學校にいきたい!》本當のご褒

鬼討伐の翌日、ロームルス城。

謁見の間には、數多くの貴族や大臣、騎士が集まっていた。

玉座に座り、穏やかな笑みを浮かべるゼノン王。

視線の先では、三人のが膝をついている。

シャルロット、オリヴィア、ナターシャの三人だ。

「シャルロット、オリヴィア、ナターシャ。今回の吸鬼討伐、大儀であった」

厳粛な雰囲気の中、響き渡るゼノン王の聲。

「お前達のおかげで、ロームルスの町に平穏が戻った。國を代表して謝の意を伝えよう」

玉座から立ちあがり、三人の前へと歩み寄るゼノン王。

「頑張ったなシャルロット。オリヴィアとナターシャも、娘を助けてくれて謝する」

「お父様……」

顔をあげるシャルロット、目にはうっすらと涙を浮かべている。

しかし、直ぐに涙をぬぐい、キリッと表を引き締める。

「國王陛下より仰せつかった大役、無事に果たしましたことを報告します。ここにいるナターシャとオリヴィア、そしてウルリカのおかげです」

立派な態度のシャルロットに、惜しみない賞賛と拍手が送られる。

ゼノン王も満足そうにうなずいている。

「シャルロット、本當に長したな。ところで……」

ゼノン王はキョロキョロと辺りを見回す。

「ウルリカはどうしたのだ?」

「えっと……」

言い辛そうに顔を伏せるシャルロット。

オリヴィアとナターシャもそっと視線をそらしている。

「ウルリカは……寢坊ですわ……」

シンッと靜まり返る謁見の間。

「ね……寢坊だと……?」

「はい……何度も起こしたのですが……まったく起きるそぶりを見せなくて……」

小刻みに肩を震わせて、顔をうつむけるゼノン王。

次の瞬間、ゼノン王は大きな聲をあげる。

「ハッハッハッ! 寢坊? 褒を取らそうという日に寢坊だと? 信じられんな! 流石はウルリカだ!!」

お腹を抱えてをよじるゼノン王、人目もはばからず大笑だ。

しばらく笑した後、ようやく落ちつきを取り戻す。

「はぁ……久しぶりに笑わせてもらった」

「お父様……笑いすぎですわ……」

「すまんすまん。さてシャルロットよ。いや、太の天使様と呼んだ方がよいか?」

「お父様! からかわないで!!」

「いい呼び名ではないか、國民からの謝の証だ」

顔を真っ赤にするシャルロット。

の天使の名は、王城にもしっかり屆いているのである。

「シャルロット、オリヴィア、ナターシャ。お前達に褒を取らそうと思うのだが、なにか希はあるか?」

ゼノン王からの問いに、三人は同時に答える。

「「「ありません!」」」

「……なに? 褒はいらないのか?」

「すでにご褒はもらいましたわ。ナターシャとオリヴィア、そしてウルリカから」

シャルロットからナターシャ、そしてオリヴィアへ。

順番に互いに、三人は視線をあわせる。

そして、三人揃って大きくうなずく。

「四人で一緒に特訓したこと、一緒に作戦を練ったこと、一緒に戦ったこと。そうして絆を深められたこと、それ以上のご褒はありませんわ!」

「はい! シャルロット様ともサーシャとも、とても仲よくなれました。これ以上のご褒はないです!!」

「私も同じです! それに、ウルリカさんとも仲よくなれました! もう十分にご褒はもらっています!!」

立ちあがった三人は、まっすぐな瞳でゼノン王を見つめる。

しい三人の姿に、自然と拍手が沸き起こる

「そうか……分かった!」

大きくうなずくゼノン王。

「では褒は用意しない。しかし、謝していることに変わりはないぞ」

「ええ、理解していますわ」

「うむ、お前達に心から謝する! そして、三人とも本當によく頑張ったな!!」

「「「はい!!」」」

こうして、ウルリカ様不在のまま、吸鬼討伐は幕を閉じるのだった。

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