《魔王様は學校にいきたい!》深夜の執務室 その二

深夜。

鬼もぐっすりお休みの時刻。

ゼノン國王の執務室に、やわらかな明かりが燈っていた。

ソファに腰かけているのは、ゼノン王とルードルフの二人。

酒をあおりながら、靜かに會話をしている。

「それにしても、シャルロットの長には驚かされた」

「ええ、し前までの危うい雰囲気は消え去りましたね。今は立派な王族です」

「ウルリカと出會えたおかげだ、あの小さな魔王には謝してもしきれんな」

カランッと、グラスの鳴る音が響く。

「ところでルードルフよ……」

「はい、なんでしょう?」

「ウルリカの言葉を覚えているか?」

グラスを傾けながら、ゼノン王は問いかける。

問われたルードルフは首をかしげて考え込む。

「ウルリカの言葉ですか……弾発言だらけで覚えきれませんよ……」

ルードルフの返答に、ゼノン王は「クククッ」と笑みをこぼす。

「天井裏に潛んでいた吸鬼を捕えた時だ。城の吸鬼の存在を問うただろう?」

「あの時ですか、確かウルリカは『いない』と言っていましたね」

ぐっと酒を飲み干すゼノン王。

そして、ルードルフへと真剣な視線を向ける。

「正確には『今はいない』と言ったのだ……」

口元を手で押さえ、じっと考え込むルードルフ。

靜かな執務室に、時計の針の進む音だけが聞こえる。

「確かに……『今は』と言っていましたね……なるほど、そういうことですか……」

「流石に察しがいいな」

「つまり陛下は、『今はいない、しかし普段はもっといるぞ?』という風に解釈しているわけですね」

「その通りだ」

執務室に、ピリついた空気が流れる。

「シャルロット達の倒した吸鬼は、戦闘中に『あのお方』と言っていたそうだ」

「あのお方……何者でしょうか?」

「さあな……なくとも、我々人間にとっては敵だろうな」

「危機は去っていない、ということですね……」

「ああ、気は抜けないぞ……」

酒を注ぎ、カラカラと氷を鳴らす。

そして「はぁ……」と深いため息をつくゼノン王。

「陛下?」

ゼノン王の様子に、ルードルフは首をかしげる。

先ほどまでのはどこへやら、急に緩い雰囲気だ。

「あぁ……いろいろ問題はあるな……だが、まずは……」

「まずは?」

「ウルリカの初登校を、無事に終わらせなければな」

「あぁ……はい、そうですね……」

執務室に響く、ルードルフの呆れた聲。

こうして、ロームルス城の夜は更けていく。

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