《魔王様は學校にいきたい!》下級クラスの教室?
暗雲立ち込めるロームルス學園。
下級クラスの三人とオリヴィアは、生徒會に連れられて學園の敷地の端まで來ていた。
先頭を歩くハインリヒは、ボロボロの小屋の前で足を止める。
「著いたぞ、ここだ」
「……ここはなんですの?」
「黙って中にれ」
「ちょっと! どうしてこんな所に連れて來たのか、説明はありませんの? それに、授業の中止についても理由を──」
「うるさい! いいから早く中にれ!」
抵抗するシャルロットとナターシャ。
しかし、背中を押されて、無理やり小屋へと押し込まれる。
一方ウルリカ様は、オリヴィアに支えられながら、フラフラと小屋にっていく。
まったく抵抗することなく、まるで魂が抜けてしまったようだ。
「授業は中止……授業は中止……授業は中止……」
グルグルと目を回しながら、ブツブツと呟いている。
授業の中止を言い渡されて、茫然自失になっているのである。
「一なんなのよ……あら? あなた達は……」
小屋の中では、三人の男子生徒が椅子に座って待っていた。
ベッポ、シャルル、ヘンリーの、男子三人組である。
「よし、下級クラスはこれで全部だな」
子生徒を外に殘して、一人小屋へとってくるハインリヒ。
偉そうに腕を組んで、小屋の中をジロリと見回す。
「では今日から、お前達の教室はここだ」
「なっ!? 突然なにを言ってますの!」
シャルロットは聲を荒げながらハインリヒに詰め寄る。
顔を真っ赤にして大激怒だ。
「納得いきませんわ! ちゃんと理由を説明してくださいですの!!」
「ふんっ、下級クラスごときに説明してやる義理はない!」
「おかしいですわよ! 下級クラスにも教室はあるはずですわ!!」
「教室はここにあるではないか、下級クラスにはこれで十分だろう?」
言い爭うシャルロットとハインリヒ。
そんな中ウルリカ様は、茫然自失の狀態からハッと我に返る。
「授業は! 妾の授業はどうなったのじゃ!?」
「話を聞いていなかったのか? 通知の通り、下級クラスの授業は全て中止となった。つまり學園からの授業は一切ない、お前達はここで好きに過ごしていて構わない」
ハインリヒはペラペラと通知書を見せびらかす。
「先生は! 妾達の先生はおらんのか!?」
「ああ、言い忘れていたな。今年は下級クラスに教師はつかない。教師がほしければ自分達で見つけてきたらいい」
「ぐぬぬぅ……あんまりなのじゃ~!!」
ウルリカ様の目から、ポロポロと涙がこぼれ落ちてくる。
泣きじゃくるウルリカ様を見て、ハインリヒは「ふんっ」と鼻を鳴らす。
「嫌ならさっさと辭めてしまうことだな」
シャルロットはウルリカ様の涙を、優しくふいてあげる。
そして、キッとした目つきでハインリヒを睨みつける。
「下級クラス相手だからって、いくらなんでも酷すぎるのではなくて?」
「控えろ、私は生徒會長なのだぞ!」
「だったらなんだと言うのです!」
ダンッと床を踏み鳴らして、立ちあがるシャルロット。
あまりの迫力に、下級クラスのクラスメイト達はビクリと肩を震わせる。
しかし、ハインリヒはまったく怯んだ様子はない。
「はっ! 太の天使などと呼ばれて、調子に乗っているようだな? しかし、學園ではお前の人気など通用しないぞ?」
「調子になんて──」
「黙れ! とにかく下級クラスの授業は中止! お前達の教室はここだ!!」
扉を開けて、小屋から出ていくハインリヒ。
「くれぐれも上級クラスや一般クラスの邪魔はするな! 以上だ!!」
バタンッと扉を閉めて、立ち去ってしまう。
事も分からぬまま、七人は小屋に取り殘される。
「どうしてなのじゃ~! 酷すぎるのじゃ~!!」
バタバタと泣き喚くウルリカ様。
「こうなったら、世界を滅ぼし──」
ウルリカ様が騒なことを口走った、その時──。
「ウルリカ様あぁっ!」
勢いよく開く扉。
飛び込んでくる一人の老人。
顔面蒼白の、ノイマン學長の登場である。
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