《魔王様は學校にいきたい!》國家滅亡対策
ウルリカ様の初登校から一夜明けて。
ロームルス城の會議室は、々しい雰囲気に包まれていた。
集まっているのは、ゼノン王、ヴィクトリア王、ルードルフ大臣の三人。
そして、シャルロット、ナターシャ、ベッポ、シャルル、ヘンリーの、下級クラス五人だ。
「それではこれより、國家滅亡対策の急會議を開催する!」
靜かな會議室に響き渡る、ゼノン王の大きな聲。
下級クラスの教室倒壊、および授業の中止をけて、急の対策會議を開いているのである。
ちなみに、ヴィクトリア王の參加理由は、ただの賑やかしだ。 
急會議の噂を聞きつけて、どこからともなく紛れ込んだのである。
「さて、本題へとる前に確認だ。シャルロットよ、ウルリカは今日どうしている?」
「學生寮にいますわ、昨日からワタクシ達の共同部屋に閉じこもっていますの」
「あら……いつも元気なウルリカちゃんなのに、閉じこもっちゃうだなんて」
「昨日の一件でずいぶん落ち込んでいますわ、今はオリヴィアにめてもらっていますの……」
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「ふむ……そうか……」
暗い雰囲気の流れる中、一人の生徒が手をあげる。
「あの~……」
手をあげたのは、男子三人組の一人。
元シャルロットの取り巻き年、ベッポである。
「どうして俺達は、突然王城に呼ばれたのでしょうか? そしてなぜ、國王陛下や王陛下と會議をしているのでしょうか?」
「あ、それはボクも知りたいですね。今朝いきなり王城に呼ばれて、そのまま會議に參加させられましたので、狀況を把握出來ていません……」
ベッポとヘンリーの質問をけて、ゼノン王はルードルフに耳打ちをする。
「おい、ルードルフよ。ちゃんと事を説明していないのか?」
「とにかく急いで生徒を集めろ、と指示をけましたからね。説明も省きましたよ」
「そ……そうか……そうだったな……」
耳打ちを終えたゼノン王は、ベッポとヘンリーの質問に答える。
「この會議は、ウルリカを學校に通わせることを目的としている。その為に、クラスメイトであるお前達からも意見も聞きたくて呼んだのだ」
ゼノン王の答えを聞いて、今度はシャルルが手をあげる。
「質問です! 國家滅亡対策とはどういう意味でしょうか! ウルリカ嬢を學校に通わせることと、どう関係しているのでしょうか!」
「そうか、お前達はウルリカの事も知らないのだったな……」
コホンと咳払いをするゼノン王。
「実は、ウルリカは魔王なのだ」
「「「……は?」」」
ゼノン王の答えに、揃って首をかしげる男子三人組。
「ウルリカの正は、魔界から人間界へとやってきた魔王なのだ」
「「「はぁ……」」」
「ウルリカのみは學校に通うことだ。とにかく學校に対して、非常に強い思いを抱いている。しかし現狀は學校に通えていない、これは非常にマズい狀態だ」
真剣な聲で、ゼノン王は話を続ける。
「魔王ウルリカの力をもってすれば、國家など一瞬で滅亡するだろう。そのウルリカの機嫌を損ねる事態が起きている。つまり現在、ロムルス王國は國家滅亡の危機に瀕しているということだ。故にこうして、國家滅亡対策の會議を開催している。分かったか?」
「「「は……はい……」」」
男子三人組は、なんとも言えない表で頷く。
ゼノン王の話を信じきれていない様子だ。
しかしゼノン王は、構わず會議を先へと進める。
「では本題だ。ウルリカを學校に通わせたいのだが、王家の権力も學園には通用しない。なにか解決策を考えなくてはならないのだが……よい解決策を思いつく者はいるか?」
「ワタクシは……思いつきませんわね……」
「あの無垢なを、これ以上悲しませるのは辛いですが……自分も思いつきません!」
「陛下の権力も通用しないとなると……難しいですね……」
ゼノン王もルードルフも、下級クラスの五人もみんな、頭を悩ませ唸っている。
そんな中、冷ややかな聲をあげるヴィクトリア王。
「あなた……人にばかり考えさせてちゃダメよ? 國王なんだから、自分でしっかり考えて」
「うっ……そうだな……」
ヴィクトリア王からの圧力をけて、必死に考え込むゼノン王。
「うーむ……シャルロットよ、ハインリヒという生徒會長からの話を、もう一度詳しく教えてくれ。出來るだけ詳しく、正確にな」
「ええと……それは……」
ゼノン王の問いに、シャルロットは言いよどんでしまう。
「お恥ずかしながら、あの時はかなり興していたもので……あまり覚えておりませんのよ」
「そうか、學園からの通達容を詳しく知ることが出來れば、解決策に繋がると思ったのだが……」
再び目を閉じて考え込むゼノン王。
すると、話を聞いていたヘンリーが、靜かに手をあげる。
「生徒會長の話でしたら、正確に覚えていますよ」
「ほう? お前は確かヘンリーといったな、詳しく教えてくれるか?」
「では、『今日から、お前達の教室はここだ』、『下級クラスごときに説明してやる義理はない』、『教室はここにある、下級クラスにはこれで十分だ』、『下級クラスの授業は全て中止となった。學園からの授業は一切ない。お前達はここで好きに過ごしていて構わない』──」
まるで読みあげているかのように、ヘンリーはハインリヒの言葉を暗唱していく。
「──『今年は下級クラスに教師はつかない。教師がほしければ自分達で見つけてきたらいい』、『嫌ならさっさと辭めてしまうことだ』、『控えろ、私は生徒會長なのだぞ』──」
「待て待て! そこまで分かれば十分だ」
片手をあげて話をさえぎるゼノン王。
會議室にいる全員が、ヘンリーの記憶力に驚いている。
「凄いですわね、そんなにはっきり覚えているなんて」
「大したことではないです、ただの特技ですね」
「いえ、とても凄い特技ですよ! ビックリしてしまいました」
シャルロットとナターシャは、ヘンリーに稱賛の言葉をかける。
暗い雰囲気だった會議室に、し緩んだ空気が流れる。
その時、ヴィクトリア王はポンッと手を叩いて立ちあがる。
「そうだわ!」
「ん? どうしたヴィクトリア」
「ヘンリー君の話を聞いて、閃いたのよ」
自信満々、というか妙に楽しそうなヴィクトリア王。
その様子に、ルードルフは怪しむそぶりを見せる。
「ヴィクトリア様……なにを閃いたのですか……?」
「フフッ、下級クラスのみんなに、授業をけてもらえる方法よ!」
ヴィクトリア王はゼノン王へと視線を向ける。
「あなた、ここは私に任せておいて」
そして、下級クラスの五人へと視線を移す。
「みんなの為に、一いじゃうから」
こうして、ヴィクトリア王は、ニッコリとしい笑顔を浮かべるのだった。
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