《魔王様は學校にいきたい!》初授業は……?

ヴィクトリア王の作戦で、ハインリヒを追い返した下級クラス一行。

いよいよ初の授業を行うため、教室を目指し歩いていた。

「授業なのじゃ~! 楽しみなのじゃ~!!」

「ウルリカ様~、待ってくださ~い!」

初授業を目前にして、ウルリカ様は大はしゃぎだ。

「ウルリカちゃん、あんまり走ると転んじゃうわよ」

「大丈夫じゃ、妾は魔王じゃからな! 転んでも世界をケガさせてしまうだけなのじゃ!!」

「世界をケガ!? ダメですよウルリカ様~!」

さらに元気よくはしゃいで回るウルリカ様。

ウルリカ様を追いかけて、オリヴィアは全汗だくになってしまう。

そうこうしている間に、一行は目的地に到著する。

「さあ、到著……ね……」

目的地である教室の前で、ヴィクトリア王はきを止めてしまう。

ピタリと固まったまま、教室をじっと見つめている。

「お母様? どうしましたの?」

「ちょっとこれは……想像以上のボロ小屋だったわ……」

そう、目の前にあるのは、下級クラスの教室として言い渡されたボロ小屋だ。

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授業を中止にされた件は、ヴィクトリア王の作戦でどうにか解決に功した。

しかし、教室の倒壊については、流石にどうすることも出來なかったのだ。

そういうわけで、教室……という名のボロ小屋までやってきたのである。

「と……とりあえず中にってみましょうか」

扉を開けるヴィクトリア王。

ギイィ……と、嫌な音が耳に響く。

中へとっていく生徒達。

歩く度に、床からミシミシと不穏な音が鳴る。

最後尾で、扉を閉めるオリヴィア。

しかし、壁からヒュウヒュウと隙間風が舞い込んでくる。

まさしくオンボロ、と呼ぶにふさわしい有様だ。

「酷いわね……流石にこのままで授業は出來ないわ……」

「なんじゃとっ、授業は出來ないのか?」

不安そうなウルリカ様を、ヴィクトリア王はニッコリ笑って安心させる。

「心配しないでウルリカちゃん、このままでは出來ないっていうだけだから。ちゃんと綺麗にすれば授業も出來るわよ」

「しかしお母様、綺麗にすると言っても……これって綺麗になりますの?」

「うーん……そうねぇ……」

ヴィクトリア王は、小屋の様子を眺めながら、じっとうつむいて考え込む。

しばらくすると、突然ポンッと手を叩いて顔をあげる。

「ヘンリー君!」

「はい、なんでしょうか?」

「ハインリヒ君の言葉を、もう一度聞かせてもらえるかしら?」

「ええ、構いませんよ」

ヘンリーは「すぅ……」と息を吸い、口を開く。

「『今日から、お前達の教室はここだ』、『下級クラスごときに説明してやる義理はない』、『教室はここにある、下級クラスにはこれで十分だ』、『下級クラスの授業は全て中止となった。學園からの授業は一切ない。お前達はここで好きに過ごしていて構わない』『今年は下級クラスに教師はつかない。教師がほしければ自分達で見つけてきたらいい』、『嫌ならさっさと辭めてしまうことだ』、『控えろ、私は生徒會長なのだぞ』『太の天使などと呼ばれて、調子に乗っているようだ。しかし、學園ではお前の人気など通用しない』『とにかく下級クラスの授業は中止。お前達の教室はここだ』『くれぐれも上級クラスや一般クラスの邪魔はするな。以上だ』です」

淡々と、一気に、完璧に読みあげるヘンリー。

「凄いのじゃ! ヘンリーの記憶力は本じゃな!」

「ええ、本當に凄いわ。これは才能ね!」

「いえ、大したものではないですよ」

「「「「「……」」」」」

凄すぎる記憶力に、ウルリカ様とヴィクトリア王以外の五人は、唖然としてしまう。

「そして……フフッ、いいことを思いついたわよ」

「いいこと? なんじゃろうな?」

「とりあえず、みんな外に出ましょう」

そう言って、全員を小屋の外へと連れ出すヴィクトリア王。

小屋の前に全員を並べて、大きな聲で発表する。

「それではこれから、最初の授業をはじめます!」

「なんじゃと! 本當かヴィクトリア!!」

思わぬ発表に、飛び跳ねて喜ぶウルリカ様。

「なにをするのじゃ? どんな授業なのじゃ? 外でやるのかのう? ワクワクするのじゃ!」

「慌てないでウルリカちゃん」

ウルリカ様を落ちつけて、ヴィクトリア王は授業の説明をする。

「今日はこのクラスで最初の授業よね? クラスメイト全員で集まるのも初めてなのよね?」

「そうなのじゃ! 凄く楽しみにしておったのじゃ!!」

「そうね、早く授業をけたいわよね。でも実はね、はじめてクラスで集まった時は、まず最初にやるべきことがあるのよ」

「なんと! それは一なんなのじゃ?」

「それはね……」

じらす様に言葉を區切るヴィクトリア王。

パンッと手を叩いて答えを発表する。

「まずはみんな、仲よくなることよ!」

ヴィクトリア王の答えを聞いて、パァッと満面の笑顔を浮かべるウルリカ様。

「なるほど、それはとても大事なのじゃ! みんなともっと仲よくなりたいのじゃ!!」

「というわけで! 最初の授業は、みんな仲よくなるための授業をするわよ!」

「ハーイなのじゃ!」

ウルリカ様は、パチパチパチと大きな拍手をする。

「なにをするのじゃ? 早く教えてほしいのじゃ!」

「授業の容は……」

思わせぶりに笑顔を浮かべるヴィクトリア王。

そして、バッとボロ小屋の方へと手を向ける。

「みんなでこの小屋を……教室を改造します!」

「「「「「「「改造!?」」」」」」」

こうして、下級クラスの初授業が幕を開ける。

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