《魔王様は學校にいきたい!》大改造!!
「みんなで教室を改造します!」
「「「「「「「改造!?」」」」」」」
待ちに待った初授業、その授業容を発表するヴィクトリア王。
しかし生徒達は、キョトンと首をかしげてしまう。
「あら? みんな黙っちゃって、どうしたのかしら?」
首をかしげている生徒達を見て、ヴィクトリア王もキョトンと首をかしげる。
全員で首をコクリコクリ、頭の上は“?マーク”でいっぱいだ。
そんな中、ウルリカ様は元気いっぱいに手をあげる。
「ハーイなのじゃ! 質問なのじゃ!!」
「はい、ウルリカちゃんどうぞ!」
「教室を改造するというのは、どういうことなのじゃ?」
「そうね、もうし詳しく説明してほしいわよね」
ウルリカ様からの質問に、ヴィクトリア王はニコリと笑顔で答える。
「まず第一に、ステキな授業をするためにはステキな教室が必要だと思うのよ。だからみんなで、この小屋をステキな教室に改造するのよ」
ヴィクトリア王は、パッと手をあげて小屋を指し示す。
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「次に、みんなで仲よくなるためには、みんなで一緒に“なにか”をするのが一番だと思うのよ」
「ふむふむなのじゃ」
「だからみんなで教室を改造するの! みんなで協力しながら、自分達の教室を自分達で作る。絶対に仲よくなれると思うわ!」
「うむ! 確かになのじゃ!」
ヴィクトリア王の答えに、納得した様子のウルリカ様。
すると今度は、ナターシャから質問があがる。
「あの……勝手に小屋を改造して、學園から怒られたりはしないでしょうか?」
ナターシャからの質問にも、ヴィクトリア王はニッコリと笑顔で答える。
「ハインリヒ君はこう言ったの、『ここで好きに過ごしていて構わない』、『お前達の教室はここだ』、『上級クラスや一般クラスの邪魔はする』、そうよねヘンリー君?」
「ええ、間違いありません」
「ということは……この場所にいて、他のクラスを邪魔しなければ、あとは好きにして構わないということよね。だから小屋を改造するだけなら、なんの問題もないはずなのよ」
「なるほど、ありがとうございます!」
スッキリとした顔のナターシャ。
キョトンとしていた生徒達も、コクコクとうなずいている。
その様子を見て、ヴィクトリア王は生徒達に、真っ白な紙を配っていく。
「それでは、質問もなくなったところで授業をはじめましょう! まずはどういう教室にしたいか、いろいろ案を出してみましょうか」
「ハーイなのじゃ!」
「出來る出來ないは一回忘れてね。こんな教室だったら楽しいかもって、自由に考えてみて?」
紙を手に取り、考える生徒達。
しかし、「う~ん」と唸るだけで、中々答えを出すことは出來ない。
そんな中、元気いっぱいに手をあげるウルリカ様。
「思いついたのじゃ! 妾は“お菓子いっぱい教室”にしたいのじゃ!!」
「「「「「「「お菓子いっぱい教室?」」」」」」」
「どこもかしこも、クッキーやマカロンでいっぱいの教室なのじゃ! お菓子を食べたくなったら、いつでも食べられるのじゃ!」
ウルリカ様の突飛な発想に、全員ポカンとしてしまう。
しかし次第に、沈黙は笑い聲へと変わっていく。
「フフフッ……お菓子って、ウルリカらしいわね」
「はい、ウルリカさんにピッタリの教室です!」
「いいわねウルリカちゃん、とっても楽しそうな教室だわ」
「うむ! そうであろう!」
和んだところで、ポンっと手を叩くヴィクトリア王。
「さ、みんなもウルリカちゃんを見習って、考えてみましょう!」
「……それでは、ボクは本に囲まれた教室を希しますね」
「ワタクシは大きな世界地図のってある教室にしたいですわ」
「自分は天井の高い、風通しのよい教室を求む!」
「だったら私は──」
ウルリカ様の“お菓子いっぱい教室”をきっかけに、次々と案を出す生徒達。
こうして、はじめての授業は徐々に盛りあがりを見せていく。
✡ ✡ ✡ ✡ ✡ ✡
そして時刻はすっかり夕方。
ボロ小屋の前は、賑やかな雰囲気に包まれていた。
「それにしても、シャルルの意見は面白かったですわ。“筋力増強特別教室”って、面白すぎますわよ」
「なっ!? シャルロット様も人のことは言えないぞ! “優雅なるお茶會教室”は流石にないでしょう!」
「くすくすっ、どちらの案もおかしいですよ?」
「いや……ナターシャの出した、“世界の珍味教室”よりはマシだろ……」
「ところで、私は生徒ではありませんけれど、案を出しちゃってよかったのでしょうか?」
「いいと思いますよ? オリヴィアさんはもうすでに、ボク達と同じクラスのようなものですよ」
ヴィクトリア王の狙い通り、生徒達は授業を通じてすっかり仲よくなった様だ。
頃合いを見て、ヴィクトリア王は全員の注目を集める。
「それじゃあみんな、いよいよ教室の改造をはじめましょう!」
「ハーイなのじゃ!」
「とは言っても、時間も遅いわね。とりあえず今日は、出してもらった案をまとめていきましょうか」
大量に散らばった紙、その一枚一枚を全員で確認していく。
「“金ぴか黃金教室”、“研究書大量教室”、“太の天使様教室”……興味深い案ばかりですね」
「ヘンリーの言う通り、確かに興味深いですわね。だけど改造するなら、実際に出來そうかどうかも大事ですわ」
「だったらサーシャの案は全滅ですね……」
「リヴィ!? 酷いです!」
ワイワイと意見を出しあう生徒達。
そんな中、シャルロットはある違和に気づく。
「あら? ウルリカはどこへ行ったのかしら?」
「そう言われれば、ウルリカ様はどこに……あっ、あそこにいます!」
オリヴィアは小屋の方を指差す。
小屋の前には、一人ポツンとウルリカ様が立っている。
「ウルリカさんは一人でなにを……?」
「ワタクシ、なんだか嫌な予ですわ……」
「さて、ヴィクトリア先生に言われた通り、改造をはじめるのじゃ~」
上機嫌に獨り言を呟きながら、バッと両手を広げるウルリカ様。
次の瞬間、濃な魔力を立ちのぼらせる。
「ウルリカ様、待って──」
慌てて止めようとするオリヴィア。
しかし時すでに遅く、ウルリカ様の口から魔法の言葉が紡がれる。
そして──。
「──創造魔法、デモクラフト──!」
渦を巻く大量の魔力。
度を増した魔力は、次第にその形を変化させる。
石の壁、木の柱、ガラスの窓、機や椅子、本棚、教卓。
さらには広々とした調理場や、豪華なティーテーブル、訓練に使うなど、様々なものを作り出す。
そうして作られたものは、宙を舞い空高く積みあがっていく。
ボロ小屋は一瞬にして、見あげるほどの巨大な塔へと姿を変える。
あっという間の出來事だ。
「うむ! 完じゃ!!」
全員あっけにとられる中、一人満足そうなウルリカ様。
ヴィクトリア王は、混しながらもなんとか頭を落ちつける。
「ふぅ……えっと、ウルリカちゃん? これは一なにかしら?」
「ヴィクトリア先生に言われた通りにしたのじゃ! 『教室の改造をはじめましょう』と言っておったからのう、改造してみたのじゃ!」
「た……確かに言ったわね。それで、どういう風に改造してくれたのかしら?」
ヴィクトリア王からの質問に、ウルリカ様はもの凄い答えを返す。
「創造魔法を使ったのじゃ! みんなの意見を全部実現した教室じゃ!」
「「「「「「「全部!?」」」」」」」
「そうじゃ、“みんなの希全部乗せ教室”じゃな! せっかく考えたのじゃ、それも楽しいものばかりなのじゃ。どれかを選ぶのはもったいないのじゃ!」
そう言って、自信満々に塔を見あげるウルリカ様。
流石のヴィクトリア王も、ウルリカ様の常識外れっぷりに驚いてしまっている。
「ウルリカちゃん……凄すぎるわね……」
「褒められたのじゃ! 嬉しいのじゃ、ヴィクトリア先生!!」
「え、えぇ……よかったわ」
ピョーンと飛んで喜ぶウルリカ様。
こうして下級クラスの初授業は、とんでもない大改造で終わりを迎えるのだった。
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