《魔王様は學校にいきたい!》教室塔

初授業を終えて、翌日の朝。

下級クラスの一行は、小屋を改造した“教室塔”へと向かっていた。

「學校じゃ~! 教室じゃ~! 授業なのじゃ~!!」

楽しそうなウルリカ様。

勢いよくブンブンと鞄を振り回している。

「おっと、朝のマカロンも食べなくてはな……パムパム……」

かと思いきや、マカロンを取り出して口に放り込む。

あれやこれやと大忙しだ。

「ウルリカ様、カバンの中をこぼしてしまいますよ! マカロンもポロポロこぼれています!」

「むっ! それはいかんのじゃ……」

オリヴィアに注意されて、ウルリカ様はしゅんと大人しくなる。

その様子を、微笑ましそうに眺めるクラスメイト達。

そうこうしている間に、教室塔へと到著する。

「見えてきたのじゃ、妾達の教室じゃ!」

パタパタと一目散に駆けていくウルリカ様。

教室塔の前まで來たところで、不意に背後から呼び止められる。

「待っていたぞ、下級クラス共!」

「ふむ? お主は確か……ハイハイリンじゃな!」

「違う! 私の名はハインリヒだ、生徒會長の名前くらい覚えろ!!」

呼び止めたのは、生徒會長のハインリヒだ。

イライラとした表を浮かべ、ギロリとウルリカ様を睨んでいる。

しかし、ウルリカ様はまったく気にしない。

「そうじゃったかの、スマンのじゃ……パムパム……」

「舐めた態度をとりやがって……まあいい、それよりもお前達に聞きたいことがある」

そう言って教室塔を指差すハインリヒ。

「この塔は一なんだ?」

「もちろん下級クラスの教室ですわよ」

「はぁ? 教室?」

「ええ、それがなにか?」

キッと目を吊りあげて、ハインリヒの前に立つシャルロット。

睨みあう二人の間に、ピリピリとしたが流れる。

「わけの分からないことを言うな。下級クラスの教室は、例のボロ小屋のはずだろう?」

「例のボロ小屋は改造しましたよ。今日からこの塔で授業をけるのですよ」

ヘンリーも加わって、二人がかりでハインリヒを睨みつける。

「なにを勝手な……そんなこと、許されるはずないだろう」

「いいえ! あなたは確かに『ここで好きに過ごしていて構わない』と言いました。だから私達は好きに過ごしているだけです!」

さらにナターシャも加わり、三人がかりでハインリヒに迫っていく。

「くっ……黙れ!」

「黙りません! 私達の教室はここです!」

「うるさいぞ下級クラス! とにかく、こんな勝手なこと許されはしない!」

「許されなくて結構ですわ、ワタクシ達は生徒會長の言う通り“好きに”過ごすだけですもの」

追い詰められたハインリヒは、苛立ちのあまり聲を荒げる

「調子に乗るな! こんな塔、私の権力を使って破壊してやろうか? それか、お前達を退學にすることだって出來るのだぞ!!」

「教室を破壊する? 妾の友達を退學にするじゃと……?」

スッと表を曇らせるウルリカ様。

ほんの一瞬、ピリッとしたが流れる。

「なっ……なんだ小さいの、私に歯向かうつもりか?」

「授業を妨害されるだけなら、まだ我慢してやるのじゃ……しかし友達傷つけられたら、妾は我慢せんのじゃ……」

「我慢だと? お前のような下級クラスは我慢して當然──」

その時、気な聲とともに二人の大人がやってくる。

「おはようっ、みんな早いわね!」

ニッコリ笑顔で挨拶をするヴィクトリア王。

そして──。

「ほほぉ~! ウルリカ様の作られた塔というのはこれですな」

ノイマン學長の登場である。

教室塔を前にして、に打ち震えている。

「見事なものですな! 流石はウルリカ様……む? ハインリヒではないか」

「じ……爺様、なぜここに!?」

教室塔を巡る騒は、まだまだ続く。

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