《魔王様は學校にいきたい!》下級クラスの教室!

「爺様、なぜここに!?」

「なんじゃ、ハインリヒではないか」

ノイマン學長の姿を見て、ハインリヒはギョッと驚いた表を浮かべる。

その様子に疑問をじるヴィクトリア王。

「爺様って? もしかして、ノイマン學長とハインリヒ君はご親類なのかしら?」

「その通りですな。ワシの名はノイマン・マックスウェル。彼の名はハインリヒ・マックスウェル。同じマックスウェルの一族なのですな」

「まあ、そうだったの? 知らなかったわ」

「あまり公には言うておりませんからな、知っている者はないのですな」

そう答えて、ノイマン學長はハインリヒの方へと視線を移す。

「久しぶりじゃな、ハインリヒよ」

「久しぶりですね……爺様はこんな所で一なにをしているのです?」

「ウルリカ様の作られた塔を見學に來たのじゃよ。ハインリヒこそ、生徒會の仕事はどうしたのじゃ?」

「まさに今、生徒會の仕事をしている途中ですよ。學園の敷地に勝手に塔を建てられましてね、これから破壊するところです」

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ハインリヒの答えを聞いて、ノイマン學長は表を曇らせる

「ウルリカ様の作られた塔を破壊? バカなことを言うでない」

「バカなこと?」

キッと目を尖らせて、怒りの表を浮かべるハインリヒ。

「“バカなこと”ではないでしょう? 勝手に學園の敷地に塔を建てるなんて、許されるはずない。破壊して當然です」

「果たしてそうかのう? 勝手に塔を建ててはいかん、という校則でもあるのか? ワシの知る限り、そんな校則はないのじゃな」

ハインリヒは「うっ」と言葉を詰まらせる。

しかし、怯むことなくノイマン學長に反論する。

「下級クラスの教室は、例のボロ小屋だと決まっていたのです。それを勝手に──」

「わざわざボロ小屋で授業をけさせる必要はないじゃろう? よりよい環境で生徒に學んでもらえる、よいことではないか」

ノイマン學長は冷靜に話を進める。

「これほどの立派な塔、建ててくれたことに謝してもよいほどじゃな。それを破壊するなどと、まさしく“バカなこと”であろう?」

「くぅっ……しかし、下級クラスなのですよ……」

「ハインリヒよ、お主は下級クラスに対して、あまりにも偏見を持ちすぎじゃ。し頭を冷やしなさい」

「……納得いかない……下級クラスのくせに……っ」

ノイマン學長とハインリヒの間に、ピリピリとしたが流れる。

そんな中、マカロンを食べながらパッと手をあげるウルリカ様。

相変わらずの自由さである。

「ノイマンに質問なのじゃ! 妾達はこの教室を使ってもよいのじゃよな? ……パムパム……」

「もちろんですとも! この場所は好きに使っていただいて構わないのですな」

ノイマン學長の言葉に、ハインリヒはピクリと反応する。

「ちょっと待ってください! 爺様は下級クラスに関する意思決定から外されています。勝手に決めることは出來ませんよ!」

得意気に笑みを浮かべるハインリヒ。

一方ノイマン學長は、「ふむ」と呟き、落ちついた様子で答える。

「ハインリヒよ、それは間違っておるぞ。ワシが意思決定から外されたのは、下級クラスの授業中止、および教室をどの場所にするか、それだけじゃ。新たに教室を建て、それを下級クラスに割り當てる。これは別の問題じゃな」

「だからと言って勝手に──」

「ワシならば勝手に決められる」

ニヤリと、しわくちゃの笑顔を浮かべるノイマン學長。

「なぜならワシは、學園長じゃからな」

そう言って、じっとハインリヒの目を見つめる。

深く重い、無言の圧力だ。

「さて……異論はあるかの?」

「……くそっ、爺様はおかしくなってしまった! どうして私ではなく、下級クラスの味方をするのだ!!」

聲を荒げながら、その場を去っていくハインリヒ。

その背中を見ながら、ノイマン學長は大きくため息をつく。

「まったく、ハインリヒにも困ったものですな。自分の思い通りにならないからと、ああも反抗的になってしまうとは……」

しんみりとするノイマン學長、その肩をツンツンとつつかれる。

振り向くとそこには、笑顔のヴィクトリア王の姿があった。

「ふむ、どうかしましたかな?」

「生徒達と教室を守ってくれて嬉しかったわ、どうもありがとう」

「ホッホッホッ、大したことではありませんな」

ヴィクトリア王のお禮をきっかけに、生徒達も次々のお禮の言葉を口にする。

「ワタクシからも謝しますわ、カッコよかったですの!」

「ボクもお禮を言わせてください。それにしても、生徒會長を追い返してしまうとは、流石は學園長ですね」

「ノイマン學長ってただの奇行老人だと思っていました……そうではなかったのですね……」

「ちょっとサーシャ!? 奇行老人は言いすぎですよ!」

「ワシは奇行老人ですかな……」

微妙な表のノイマン學長に、ウルリカ様は小さな包みを差し出す。

「ありがとうなのじゃ! お禮にマカロンをあげるのじゃ! パムパム……」

「ひひぃっ!? ありがたき幸せですじゃ~!!」

ひざまずき、涙を流しながら包みをけ取るノイマン學長。

その様子に生徒達からは「やっぱり奇行老人?」と呆れた聲があがる。

こうして、ウルリカ様の作った教室塔は、正式に下級クラスの教室となったのだった。

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