《魔王様は學校にいきたい!》シャルロットと下級クラス

教室塔、二階。

並んで椅子に座る、ナターシャ、ベッポ、ヘンリー、シャルル、オリヴィアの五人。

そして、教室の隅でポリポリとクッキーを食べているウルリカ様。

教卓に立つシャルロットは、全員に向けて事態の説明をする。

「──というわけですの。恐らく明日は、魔との大規模な戦いになりますわ」

シンと靜まり返る教室。

そんな中、ヘンリーは疑問を口にする。

「事は理解しました。しかしシャルロット様、どうしてボク達に詳しい事を説明したのですか?」

「……それは……」

「確かに、俺達は寮で待機していればいいはずですよね。わざわざ集まってまで、事を知らされる必要はないと思います」

ヘンリーとベッポの質問に、言葉を詰まらせるシャルロット。

を曇らせながら、なんとか言葉を絞り出す。

「その……みんなの力を……ワタクシに貸してほしいのですわ……」

「ボク達の力を貸す? どういうことですか?」

「……魔との戦いに……參加してほしいのです……」

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「「えっ?」」

ベッポとヘンリーは揃って驚きの聲をあげる。

他の三人も驚いた表だ。

「騎士団と學園で合同作戦を行うのですよね? どうしてボク達まで戦いに……?」

「俺達なんて作戦の邪魔になるんじゃ……」

「実は……騎士団も學園も、それぞれ単獨で戦いに挑むつもりなのですわ……」

「「「「「えぇっ!?」」」」」

今度は五人揃って驚きの聲をあげる。

驚く五人へと、シャルロットは詳しい説明をする。

「會議のあとで、それぞれに話を聞きましたのよ。すると両方から『自分達で魔を倒す、相手方には後方支援を頼む、これで合同作戦は立だ』と言われてしまいましたの……」

「そんな……子供のヘリクツじゃないですか……」

話を聞いた五人は、呆気にとられた様子だ。

「ワタクシもお父様から、作戦に協力するよう言われておりますのよ。ただ両陣営ともそんな風で……どうしていいか分からなくて……」

教室の中に、重苦しい空気が流れる。

「騎士団や學園の単獨行で勝てるのなら、それでも構いませんの。でも萬が一危機に陥った時は、ワタクシも加勢する準備をしておきたいのですわ。だけど……」

思いつめたような表で、話を続けるシャルロット。

「だけどワタクシには、なんの力もなくて……誰かを頼ることしか出來なくて……頼れる相手はみんなしかいなくて……」

靜かな教室に、細々とした聲が響く。

「王族なのに、國民を守る力もありませんのよ……逆にみんなを危険にさらそうとしていますの……」

床を見つめながら、一生懸命に思いを口にする。

「それでも、ワタクシは出來ることをしたいのです! だからお願い、ワタクシに力を──」

そして、顔をあげるシャルロット。

と同時に、五人は一斉に立ちあがる。

「分かりました! 父の商會では冒険者向けの道を扱っています。それを使えば、魔との戦いを有利に進められるかもしれない」

「ではベッポ、どんな道かボクに教えてください。それを元に作戦を考えてみます。幸い“研究書大量教室”に行けば、參考になる兵法書も魔図鑑も大量にありますからね」

「ならば自分は戦闘の準備をしよう! いざ戦いになった時に、ける者は必要だろう!」

「それは私の役目でもありますね! 吸鬼とだって戦えたのです、どんな魔も、このヨグソードでやっつけてやりますよ!」

「私は……えっと……えっと……そうだ! 私にしか出來ないことがありました!」

「ではベッポは商會へ急いでください! シャルルとナターシャさんは戦闘の準備! オリヴィアさんは……よく分かりませんが、オリヴィアさんにしか出來ないことを! ボクは作戦を立てます! シャルロット様、それでいいですね?」

「え……ええ……」

「では行を開始しましょう!」

ヘンリーの號令で、五人はあっという間に教室を出て行ってしまう。

唖然とするシャルロット、その瞳からウルウルと涙が溢れてくる。

「みんな……ありがとう……」

「ロティよ、いい仲間を持ったのう」

「ええ……最高の友達ですわ……」

「もちろん妾も、ロティの友達じゃ!」

ウルリカ様は小さなをトンッと叩く。

「最善を盡くして、それでも失敗したら、その時は妾に任せておくのじゃ!」

「ウルリカ……」

「なにも心配はいらん、思うままにやってやるのじゃ!」

魔王様からの頼もしすぎる言葉をもらって、グッと拳を握るシャルロット。

「ええ、もちろんですわ!」

こうして、下級クラスはかに行を開始するのだった。

「ところで、ふと思ったのじゃが……」

誰もいなくなった教室で、ウルリカ様はシャルロットに質問をする。

「妾の滅亡魔法か煉獄魔法を使えば、魔など森ごと跡形もなく──」

「ひっ」と悲鳴をあげるシャルロット。

大慌てでウルリカ様の口にクッキーを押し込む。

「ほらウルリカ、クッキーですわよ!」

「なんじゃ? むぐっ……むぐむぐ……」

口いっぱいにクッキーをほおばって、大人しくなるウルリカ様。

シャルロットは冷や汗をぬぐい、「ふぅ」と息を吐くのだった。

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