ついに訪れた決戦當日

ロームルス學園の校庭には、王國騎士団、および學園の教師と生徒が集まっていた。

騎士団側を率いているのは、聖騎士ゴーヴァン。

そして學園側を率いているのは、生徒會長ハインリヒだ。

それぞれの陣営に向かって、二人は指示を飛ばしていく。

「王國騎士団！　速やかに陣形を敷き、魔の襲撃に備えろ！」

「誇り高きロームルス學園の諸君！　騎士団を後方に下がらせ、私達で陣形を敷くぞ！」

「おいっ、なにを言っている!?　最前線は騎士団に任せておくんだ」

「結構です！　最前線は私達に任せて、騎士団は後方に下がってください！」

どこに陣形を敷くかでめる、ゴーヴァンとハインリヒ。

戦いを前にして、早くも不穏な雰囲気だ。

「待ってくれ、冷靜になろう。ここはお互いに協力関係を──」

「そう言って私達を後方に追いやるつもりなのでしょう？　騙されないぞ！　ロームルス學園は私達の手で守る!!」

ゴーヴァンは落ちついて話をしようとする。

しかしハインリヒは、まったく話を聞こうとしない。

二人のいざこざをきっかけに、さらなる言い爭いも生まれてしまう。

「おいガキ！　ゴーヴァン聖騎士に向かって、生意気な口を利いてんじゃねえ！」

「そちらこそ、ハインリヒ生徒會長に向かって、なんて失禮な言いなんだ！　許せないぞ！」

「待てお前達！　いいからし落ちつけ！」

慌てて仲裁にるゴーヴァン。

しかし、言い爭いは次から次へと発生する。

「戦いは騎士に任せておけばいいのです！　素人は後ろに下がりなさい!!」

「素人だと!?　剣しか能のない連中のくせに！」

「ああもう！　とにかく一回冷靜になれよっ!!」

ガックリと膝をつき、頭を抱えてしまうゴーヴァン。

諦めの表で、ボーっと空を仰ぎ見る。

「はぁ……エリザベス様はさっさと森へってしまうし……俺一人では収められん……」

そこへ、一人のが聲をかけてくる。

「お困りのようですね、聖騎士ゴーヴァン」

「ん？　あなたは？」

「副學長のラヴレスです、どうぞお見知りおきを」

「おお！　いいところに來てくれた！」

副學長と聞き、ゴーヴァンは喜んで立ちあがる。

「騎士団と學園のいざこざを収めたいのだ、副學長も手を貸してくれないか？」

「ええ、もちろんですよ」

ラヴレス副學長はニッコリと笑顔で応える。

「では騎士団の方々を、後方へと下げてもらいましょう」

「なっ、副學長までなにを言うんだ!?　それでは騎士団は魔と戦えないではないか！」

「戦っていただく必要はありません、魔はすべて我々學園の者で処理しますので」

ニコニコと笑顔で話し続けるラヴレス副學長。

しかし、その目はまったく笑ってはいない。

「副學長までこの調子かよ……はぁ……勘弁してくれ……」

ゴーヴァンはズーンと項垂れてしまう。

その時──。

「出たぞ！　魔だ!!」

パラテノ森林の方向で、にわかに騒ぎが起こる。

一人の聲をきっかけに、騒ぎは一気に広がっていく。

「オークだ！　グリフォンもいるぞ！」

「それだけじゃない、あれは……レッサードラゴンも出た！」

「元から森に棲んでいた魔もいる、凄い數だ！」

木々の暗がりを抜けて、姿を現す魔の群れ。

どの魔も中に管を浮かせ、目を真っ赤に染めている。

高まる張の中、さらなる脅威が姿を現す。

真紅のうろこに、巨大な。

他の魔とは明らかに別格の気配。

僅かに開いた口からは、チラチラと炎の息がれている。

「アレはまさか、サラマンダーか!?」

「討伐難易度Ｂの魔だぞ！」

「シュルロオォッ！」

鋭い鳴き聲をあげるサラマンダー。

あまりの威圧に、騎士団にも學園にも揺が走る。

そんな中、ハインリヒは大聲で號令をかける。

「こうなったら騎士団は無視だ！　私達の手で學園を守るのだ!!」

「おい待て！　危険だ──」

「「「「「うおおぉぉ～っ!!」」」」」

ゴーヴァンの制止の聲も、湧きあがる雄びにかき消されてしまう。

こうして、波の戦いが幕を開ける。