《魔王様は學校にいきたい!》天使降臨

激戦の続くロームルス學園。

炎の息をまき散らし、サラマンダーは激しく暴れ回る。

対するは聖騎士ゴーヴァンだ。

「シュルロロォッ!」

「流石は討伐難易度B、なかなかやるな!」

サラマンダーの吐く炎の息が、ゴーヴァンへと襲いかかる。

「甘い! その程度の炎は通用しないぞ!!」

素早く剣を振るゴーヴァン。

凄まじい風圧で、サラマンダーの炎を切り裂いてしまう。

「基本から鍛え直した俺に、敗北などありはしない! 食らえぇっ!!」

「シュロロオォッ!?」

切り裂いた炎をかいくぐり、サラマンダーへと一太刀を浴びせる。

しかしいウロコに阻まれて、致命傷には至らない。

「くそっ、やはりトドメを刺すには、魔法攻撃も必要か……」

「シュロオォッ! シュロロオォッ!!」

ゴーヴァンとサラマンダーの戦いは、激しさを増していく。

一方戦場は、騎士団と教師と生徒と魔り混じって、混の極みにあった。

「ダメだ! 學園の素人共を守りながらでは、うまく戦えない!」

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「邪魔だ騎士団! お前達のせいで魔法を撃てないだろ!」

「こんなところで炎魔法を使うな! 森に燃え移るだろう! これだから素人は……」

「騎士団など無視しなさい! 我々の力でロームルス學園を守るのです!」

いたる所で小競り合いを起こし、そのせいで劣勢へと追い込まれていく。

いよいよ形勢は魔達へと傾きつつあった。

そんな中、戦場に甲高い聲が響き渡る。

「いい加減にっ! しなさぁーいっ!!」

凄まじく迫力のこもった聲に、戦場の混はピタリと収まる。

「今の聲はなんだ?」

「あれは……シャルロット様?」

「シャルロット様だ……どうしてこんなところに?」

戦場からし離れた場所で、シャルロットは腕を組み、仁王立ちをしている。

オリヴィア以外の下級クラスも一緒だ。

「ナターシャ! シャルル! ベッポ! お願いしますわ!!」

「かしこまりました!」

「承知した!」

「よし、二人とも頼むぞ!」

ベッポは背負っていた荷を開く。中にっているのは緑と紫の丸いだ。

握りこぶしほどの大きさの玉を、ナターシャとシャルルに手渡していく。

「まずは緑から! どんどん投げろ!!」

「はいっ、投げます!」

「よしっ、投擲だ!」

戦場を舞う緑の玉。

ぶつかった球は々に破裂し、緑を撒き散らす。

そして戦場に、地獄のような景が広がっていく。

「臭えぇっ! なんだこのは!!」

「鼻がもげそうだ、オエエェッ」

「こんなの耐えられないわ……うぇっ……」

「グギャアァァッ!?」

そう、この緑、とにかく臭いのである。

騎士団も教師も生徒も魔も、慌てて最前線から退避していく。

「ギャアアァッ!? 頭からかぶってしまった、助けて……く……れぇ……」

運悪くの直撃をけたハインリヒは、あまりの匂いに気を失ってしまう。

ピクピクと痙攣して、哀れな姿だ。

「どうだ! 父の商會で作った特別製品、“超激臭、魔避け弾”だ! 臭すぎてまったく売れなかった問題商品だぞ!!」

「ううぅ……もの凄く臭いですぅ……」

「悪魔の兵だな……」

青い顔で鼻をおさえるナターシャとシャルル。

ベッポは一人だけ、商品の威力に大喜びだ。

突如訪れた地獄により、戦いは一時中斷となる。

それを見計らって、シャルロットは大聲を張りあげる

「あなた達は一なにをしているのです! 人間同士で爭っている場合ではありませんわよ!!」

キッと騎士団の方へ目を向ける。

目はどんどんと吊り上がり、怒りの炎で赤く燃えあがっていく。

「この恥知らず騎士団! あなた達は民を守るための騎士団でしょう? だと言うのに、このたらくはなんですの! くだらないことで爭って、守るべき民を危険にさらして、恥を知りなさいっ!!」

キッと學園の方へ目を向ける。

怒りの炎は限界まで燃えあがり、頬を真っ赤に染めている。

「無能教師に無能生徒! 言うことばかり一人前で、まともに戦えもしませんのね! あなた達の戦いに誇りなど欠片もありませんわ! この無能集団!!」

父親のゼノン王を彷彿とさせる怒りっぷりに、誰もが口を閉じてしまう。

そんな中、一人シャルロットの前に立つ者がいる。

「ずいぶんとお怒りですね、シャルロット様」

「ラヴレス副學長……」

「酷い言い方をされてしまいましたね。しかし、この原因は全て騎士団に──」

「いい訳は止!!」

ダンッと足を踏み鳴らすシャルロット。

迫力でラヴレス副學長を下がらせると、後ろのヘンリーにコソコソと指示を出す。

「ヘンリー……今ですわ……!」

「任せてください……!」

シャルロットの背後で、そっと杖を振りあげるヘンリー。

同時にシャルロットは、腕を解いて大きく広げる。

「ここから先の戦いは、ワタクシに任せなさい!」

「いけっ……魔法……!」

翼のように両手を広げるシャルロット。

次の瞬間、背後から輝くが浮かびあがる。

ヘンリーの魔法によって、の輝きを演出しているのだ。

「なんだあのは!?」

「あの……まさか噂の……?」

「太の……天使様……」

「この戦い、必ず勝利へと導いて見せますわ! この第三王……いいえ、太の天使、シャルロット・アン・ロムルスの手で!!」

を背負い、一に視線を集めるシャルロット。

戦場に、太の天使が降臨する。

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