《魔王様は學校にいきたい!》賢者ノイマン
「待たせたようですな、シャルロット様」
ニヤリと笑いながら、戦場へと現れたノイマン學長。
朱のローブに黃金の杖という、普段とは違う豪華な出で立ちだ。
「ノイマン學長! 待っていましたわ!!」
ノイマン學長は、腰をさすりながら「ほっほっほ」と笑っている。
そこへ、焦げてボロボロになったラヴレス副學長がやってくる。
「ハァ……ハァ……ノイマン學長……」
「おや、ラヴレス副學長ですかな? 隨分とボロボロですな」
「どうしてここに……ギックリ腰は……?」
「ギックリ腰は治りましたぞ、オリヴィアに治してもらったのですな」
「治してもらった」と聞き、ラヴレス副學長は目を丸くして驚く。
「一どうやって!? 學園の優秀な治癒魔導士でも治せなかったのに……」
「ずっと腰をんでもらいながら、治癒魔法をかけ続けてもらったのですな」
「腰をみながら治癒魔法? そんなことで……」
「そんなこと?」
ノイマン學長は目を細め、ラヴレス副學長を睨みつける。
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厳しさのこもった鋭い視線だ。
「そ・ん・な・こ・と・ではありませんぞ。オリヴィアは一晩中ワシに治癒魔法をかけ続けてくれたのですな。尋常ではない魔力と神力、そして底知れぬ慈の心。癒しの聖とはよく言ったものですな」
「リヴィは頑張ったようじゃな! 流石は妾の友達なのじゃ!」
「ウルリカ様! ご機嫌麗しゅう!!」
ビョンッと飛びあがったノイマン學長は、クルリと回りウルリカ様の前でひれ伏す。
ギックリ腰から回復したばかりとは思えないきである。
「ところでノイマンよ、リヴィは今どうしておるのじゃ?」
「魔力を使い果たしておりましたので、ゆっくりと寢かせております」
ウルリカ様は満足そうに「うむ!」と頷く。
その時、戦場から鋭い鳴き聲があがる。
「シュルロオォー!!」
「おや、話している場合ではなさそうですな。まずはサラマンダーをなんとかしますかな」
そう言うとノイマン學長は、一人でサラマンダーの方へと歩いていく。
慌てて止めにる、ラヴレス副學長とシャルロット。
「學長! お一人で戦うつもりなのですか? 無謀です!」
「危険すぎますわ! ここは騎士団との連攜を──」
「心配なされるな、ワシの二つ名は知っておろう?」
ノイマン學長は迫力のある笑顔を浮かべる。
その迫力に、シャルロットはハッと息を飲む。
「賢者……ノイマン……」
「ほっほっほっ……さて、ゆきますぞ!」
「シュルロオォォッ!」
鳴き聲とともに、サラマンダーの口から炎が噴き出してくる。
一瞬で地面を溶かすほどの、超高溫の青白い炎だ。
対するノイマン學長は、靜かに杖を構える。
「──雹雪魔法、ヘイルブリザード──!」
杖の先端から迸る、超低溫の猛烈な吹雪。
周囲を白く凍らせながら、サラマンダーの吐いた炎とぶつかる。
「シュルォッ!? シュオオォォ……」
一瞬でかき消されるサラマンダーの炎。
勢いの止まらない吹雪は、燃え盛るサラマンダーのをあっという間に凍りつかせる。
「凄いですわ……サラマンダーを凍らせてしまうなんて!」
氷から逃れようと、もがき暴れるサラマンダー。
しかしを覆う氷は分厚さを増し、完全にきを封じてしまう。
「ふむ、この程度ですかな?」
「シュロ……シュ……ロ……」
「では苦しまぬよう、早くトドメを刺してやりますかな」
杖を構えたノイマン學長は、靜かに魔力を集中させる。
集まった魔力は吹き荒れる暴風となり、杖の先端で渦を巻く。
「──風撃魔法、エメラルドブラスト──!」
放たれた大気の砲弾は、周囲の氷を巻き込み膨れあがっていく。
巨大な風と氷の塊は、けないサラマンダーを直撃し、そして──。
「シュ……ロォ……ッ!?」
バァンッ! と音を立て、サラマンダーのは々に弾け飛ぶ。
「こんなものですかな?」
杖を下ろすノイマン學長。
炎も完全に鎮火し、殘ったのは巨大な氷の柱だけだ。
圧倒的すぎる勝利の景に、人々はワッと盛りあがる。
「「「「「うおおぉぉ~っ! ノイマン! ノイマン!!」」」」」
ノイマン學長を呼ぶ大勢の聲。周囲は大変な大騒ぎだ。
そんな中、興して駆けよってくるナターシャ。
「凄かったです! いつもの奇行老人ではありませんでした!」
「待てナターシャ嬢! 奇行老人はあまりにも酷い!」
失禮すぎるナターシャを、シャルルは慌てて止めにる。
そんな二人を、ベッポとヘンリーは呆れながら見ている。
ノイマン學長の活躍で戦いは終わりをむかえ、場は和やかな雰囲気だ。
一方ウルリカ様は、一人で難しい顔をしている。
「ふーむ……あと二か……」
「あら? ウルリカ、どうかしましたの?」
「うむ……ここからは妾の出番のようじゃ」
「出番?」
人差し指を立てるウルリカ様、指先からは魔力の波紋が広がっていく。
探知魔法で周辺の様子を探っているのだ。
「ロティの姉じゃ、森の奧で戦っておるのじゃ」
「お姉様! すっかり忘れていましたわ!」
ハッとするシャルロットに、ウルリカ様は説明を続ける。
「強力な魔に襲われておるようじゃ、サラマンダーとは比べにならぬのじゃ」
「そんな……っ」
サラマンダー以上と聞き、顔を青くするシャルロット。
「安心するのじゃ、妾が助けに行くのじゃ!」
トンッとを叩くウルリカ様。
その小さな手を、シャルロットはハシッと握りしめる。
「待ってくださいですの、ワタクシも連れて行ってほしいですわ!」
「ふむ? しかしロティは十分頑張ったと思うのじゃ」
「いいえ、これはワタクシ達人間と魔の戦い、ウルリカに任せきりにしたくありませんわ。それに……」
シャルロットは言葉を切って、真っ直ぐにウルリカ様の目を見つめる。
「お姉様はワタクシの家族ですもの!」
「そうか、ならば一緒に行くとしようかの!」
こうして、ロームルス學園での戦いは、人間側の勝利で幕を閉じた。
そして、魔王様と王様は、次なる戦場へ向かう。
夢のまた夢が現実化してチート妖怪になりました。
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