《魔王様は學校にいきたい!》ウルリカ様の力
森の中を駆け回る、黒と赤の二つの影。
黒い影はウルリカ様、赤い影はオニマルである。
高速で走りながら、ウルリカ様は片手をオニマルへと向ける。
「──滅亡魔法、デモホロウ──!」
膨れあがる漆黒の球。激しく轟くび聲。
オニマルへと迫っていく、ウルリカ様の滅亡魔法。
「……キル!」
対するオニマルは、真正面から刀を振り下ろす。
ズバンッと音を立て、滅亡魔法を一刀両斷にしてしまう。
「ほうっ、なかなかやるのじゃ!」
姿を消したウルリカ様は、オニマルの背後へと現れる。
を霧に変化させ、一瞬にして回り込んだのだ。
オニマルの反応も早い。
背後に現れたウルリカ様に向け、橫なぎに刀を振るう。
「おっと」
迫るオニマルの刀を、ウルリカ様はを屈めてかわす。
しゃがんだ勢からオニマルの足を払い、思いっきり蹴りを放つ。
「ほれっ」
「……ッ!?」
蹴り飛ばされ、吹き飛んでいくオニマル。
離れていくオニマルに、ウルリカ様は一瞬で追いつく。
片手をばし、オニマルをつかもうとするウルリカ様。
宙を舞うオニマルは、強引にをひねってウルリカ様の腕を斬りつける。
「うむ! 見事なきじゃな!」
刀の直撃をけたにも関わらず、ウルリカ様の腕からはの一滴も流れることはない。
腕を斬られた反でグルグルと回転し、そのまま片足を振り下ろす。
「隙だらけじゃ、そりゃ!」
強烈な回し蹴りをけて、地面に蹴り落とされるオニマル。
鎧にはウルリカ様の足跡が、くっきりと殘っている。
「なんだ……この……凄まじい戦いは……」
「ウルリカ……強すぎますわ……」
壯絶な戦いの景を、シャルロットとエリザベスは唖然と眺めている。
「……コロス……ッ」
「まだまだ元気じゃな! 元気な魔は大好きじゃぞ!」
起きあがるオニマルを見て、ニッコリと嬉しそうなウルリカ様。
スッと手の平を前へと広げる。
「ならば今度はもっと大きな魔法じゃ、しっかり耐えるのじゃ!」
空間を歪ませる、強大な魔力。
手の平に集まった魔力は、闇の塊を作り出す。
「──滅亡魔法、デモン・ホロウ──!!」
再び現れる闇の球。
その大きさは、先ほどの滅亡魔法とは比べにならない。
見あげるほど大きく膨れあがった球は、木々を飲み込みながらオニマルへと迫っていく。
「オ……オニ……ニ──」
巨大な滅亡の闇は、オニマルをあっさりと飲み込む。
あとに殘ったのは、大きく半円に抉りとられた地面だけだ。
「ふむ、やりすぎたかのう?」
立ち込める土煙と魔力の余韻。
そんな中、ガシャリと音が鳴り響く。
「オニ……マル……」
半円の中心で、ゆっくりと起きあがるオニマル。
鎧にはひびがり、一部はボロボロと崩れている。
見るからに満創痍な狀態だ。
しかし、放つ殺気は濃さを増したようにすら思える。
「おぉっ、ちゃんと耐えたのじゃな! 元気いっぱいじゃな!」
トドメを刺せなかったにもかかわらず、ウルリカ様は嬉しそうだ。
パチパチと拍手までする余裕さである。
「頑張り屋さんじゃな、気にったのじゃ! 配下にでもしてやりたいところじゃが、殘念ながら言葉は通じぬようじゃな……。それにお主、なにやら妙なか薬でも食らっておるのう? ずっと苦しそうで可哀そうなのじゃ」
「ワレ……オニマル……」
「ふむ? お主はオニマルという名前なのか? よい名前じゃな!」
「オニ……ニ……ナル……」
「ほう、鬼になりたいのか? お主の戦う理由はそれかのう?」
空を見あげながら「ふーむ」と考え事をするウルリカ様。
「理由は分からぬが、鬼になりたいのじゃな……」
じっと考え込んだ後に、ポンッと手を叩く。
「そうじゃ! よいことを思いついたのじゃ!」
そう言うと両手を空高く広げ、靜かに魔力を集中させていく。
「お主を鬼にしてやることは出來んのじゃ。その代わりお主には、本の鬼を見せてやるのじゃ!」
ウルリカ様の全から、かつてない強大な魔力が湧きあがる。
そして──。
「ゆくのじゃ……時空間魔法!」
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