《魔王様は學校にいきたい!》コツーンッ!!

パラテノ森林の奧の奧。

木々の暗がりの中を、一人の男が歩いている。

「今頃ロームルス學園は、魔の襲撃をけているはず……魔によるロムルス王國の襲撃計畫は大功だ……」

ブツブツと獨り言を呟く、怪しい雰囲気の男。

を真っ黒なローブで覆ったこの男こそ、商人ザンガに魔を用意させた、魔襲撃事件の黒幕である。

「クックック……例の薬の効果も試せた……あれほど兇暴化した魔ならば、人間共を皆殺しに出來るかもしれん……」

不気味な笑い聲をあげ、男は森の奧へと進んでいく。

「特にあのオニマルは恐るべき魔だった、王國聖騎士にも後れはとるまい。これでロムルス王國は甚大な被害をけるはずだ……」

男は被っていたフードをぎ、ニヤリと笑みを浮かべる。

薄暗い森の中で、青白いと銀の髪が怪しくる。

「さて、あのお方へ報告をせねば。これだけの果をあげたのだ、きっとお譽めいただけるはず……ん?」

ふと男は足を止める、著ていたローブを後ろから引っ張られたのだ。

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木の枝にでも引っかけたかと思い、男は鬱陶しそうに後ろを振り向く。しかし男の目に映ったのは、木の枝などではなかった。

闇の中から不気味にびる、ローブを摑む白い手である。

ギョッと驚く男の耳に、可らしい聲が聞こえてくる。

「どこへ行くのじゃ?」

「なんだ!? 一誰だ!」

驚く男の目の前で、聲の主はゆっくりと姿を現す。

目をキッと尖らせて、怒りの表を浮かべたウルリカ様だ。

「お主は吸鬼じゃな……どうやら黒幕はお主じゃな……」

見た目は可らしいでしかないウルリカ様。しかし、その姿を目にした瞬間、男の背筋にかつてない悪寒が走っていた。

目の前のは異質な存在であると、本能が告げているのである。

「くぅっ、魔爪!」

男は反的に、ウルリカ様へと片手を振り下ろす。魔爪による黒い魔力の斬撃だ。

一方のウルリカ様は、ローブを摑んだまま避けることすらしない。迫りくる黒い爪を、ただただじっと眺めている。

「死ねぇっ!!」

無防備なウルリカ様の首筋に、魔爪の一撃が振り下ろされる。

「ぎゃぁっ!?」

そして悲鳴をあげる男。ウルリカ様を攻撃した直後、片手をおさえてゴロゴロと地面に倒れこむ。

よく見ると男の手は、手首から指先にかけてボロボロと崩れていく。

ウルリカ様の魔力にれ、一瞬で手首まで崩壊してしまったのだ。

「がぁっ……バカな……」

慌てて立ちあがる男に、ウルリカ様はゆっくりと話しかける。

「……お主の起こした騒のせいで……妾は學校に行けなかったのじゃ……」

「は……? 學校……?」

言葉の意味を理解出來ず、男はよけいに慌てふためく。

その間も、ゴゴゴッ……と怒りの熱をあげていくウルリカ様。

「許さんのじゃ……お仕置きなのじゃ!」

ピョンと飛びあがるウルリカ様。

そして──。

「それっ、コツンッ!」

「ぐはぁっ!?」

男の脳天に、ウルリカ様の“コツンッ”が炸裂する。

凄まじい衝撃をけ、地面を跳ね回る哀れな男。

「コツンッ! コツンッ!」

「ぐぎゃっ! ぐぎゃあぁぁっ!?」

ウルリカ様の連続“コツンッ”を食らい、男はまみれで地面を転がり続ける。

朦朧とする意識の中、ほうほうので逃げようとする。しかし、怒ったウルリカ様からは逃げられるはずもない。

「逃がさんのじゃ! コツンッ!!」

「うぎゃあぁぁっ!?」

背後からの強烈な“コツンッ”を食らった男は、木をなぎ倒して吹き飛んでいく。

フラフラと起きあがる男、目の前には仁王立ちするウルリカ様。立っているのは可らしい一人のだ。しかし男の目には、もはや恐怖の存在にしか映らない。

「ひぃ……ひぃ……待ってくれ……止めてくれ…」

「卻下なのじゃ……妾は怒っておるのじゃ……」

「分かった! 金ならいくらでも払う! あのお方にも紹介してやろう! そうすればお前も、新たな世界で素晴らしい地位を──」

「うるさいのじゃ! 最後に一発じゃ!!」

「ひいぃぃっ!? 待って! 許して──」

「コツーンッ!!」

「あぎゃあぁぁっー!?」

振り下ろされる、恐怖の“コツーンッ”。

深い深い森の中に、哀れな男の悲鳴がこだまするのだった。

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