《魔王様は學校にいきたい!》勝利の

ウルリカ様の恐怖の“コツーンッ!!”が炸裂した頃。

ロームルス學園の校庭は、大混に陥っていた。

「聖様、こっちを癒してくれ! 腕が折れてしまっているんだ!」

「骨折くらい放っておけ、こっちは臓を痛めているかもしれないんだぞ! 聖様のお力が必要だ!」

「こちらの方が聖様を必要としているわ! 酷い火傷なのよ!」

「デモヒール! デモヒール! し待ってください~」

そこら中で騒ぐケガ人に、オリヴィアは必死で治癒魔法をかけて回っている。

サラマンダーを撃退したあと、遅れてやってきたオリヴィア。その姿を見たケガ人達から、一斉に治癒魔法を求められているのだ。

“癒しの聖”の名前に加えて、ノイマン學長を治療した実績も重なり、ケガ人達から大人気のオリヴィアなのである。

「デモヒール! デモヒール! ひぃ……ひぃ……全然追いつきません~」

一人で走り回るオリヴィアを、下級クラスの仲間達は心配そうに見つめている。

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「見ていられません! 私達もリヴィのお手伝いをしましょう!」

「しかし、自分達は治癒魔法を使えない! せいぜい包帯を巻くくらいしか出來ない……無力!」

「ではボク達でケガ人の狀況を確認して、本當に治癒魔法を必要としている方にオリヴィアさんを導しましょう。そうすればオリヴィアさんの負擔を、しは減らせるかもしれません」

「それです! 流石ヘンリーさんです! 早速ケガ人を確認して回りましょう!」

オリヴィアを手助けするため、きだす下級クラスの仲間達。

そんな中、一人じっと考え込んでいたベッポは、なにかを閃いたようにポンッと手を叩く。

「そうだ! うちの商會で扱っている回復薬を使おう! 臭すぎてまったく売れなかった、その名も“臭いの國の回復薬”。もの凄い効果なんだよ!!」

「「「「「止めてくれぇ!!」」」」」

ベッポの提案を聞いた全ケガ人から、一斉に制止の聲があがる。と同時に、オリヴィアを呼ぶ聲はピタリと鳴りやむ。

そしてケガ人達は、自力で立ちあがるとゾロゾロと校舎の方へ歩いていく。中には逃げるように走っていく者までいる始末だ。

ベッポの商會の臭い商品、恐るべしである。

その時、パラテノ森林の方でにわかに騒ぎが起こる。

「エリザベス様だ! エリザベス様が戻ってきたぞ!」

「シャルロット様も無事だわ! よかったわ!」

「全員無事か……いや待て、なんだあの大男は!?」

森から姿を現したのは、シャルロットとエリザベス。そして、スカーレットとカイウスを抱えたジュウベエだ。

聖騎士二人を軽々と抱える、角の生えた大男のジュウベエ。その姿を見て、人々は恐怖に騒ぎ立つ。

「魔……いや、化けだ! 化けが出たぞ!!」

「スカーレット様とカイウス様を人質にとっているのか? なんて卑劣なんだ!」

「落ちついてくださいですわ! 彼は大丈夫ですのよ!」

シャルロットは慌てて混を収めようとする。

しかし、一度沸き起こった混は、瞬く間に広がってしまう。

「エリザベス様とシャルロット様を助け出さなければ!」

「卑劣な化けめ! 二人から手を放せ!!」

「冷靜になって! とにかく話を──」

必死に説明をしようとするシャルロット、その時──。

「靜まれええぇぇっ!!」

全ての聲をかき消す、エリザベスの超大聲量。

あまりの聲量に、空気はビリビリと振し、木々はザワザワと揺れく。騒いでいた人々は、一瞬にしてシンと靜まり返る。

「ふぅっ、収まったぞシャルロット」

「あ……ありがとうですわ……お姉様」

凄まじすぎる姉の迫力に、冷汗を流すシャルロット。

「コホン」と咳払いをして気持ちを切り替えると、人々へと語りかける。

「みなさん、聞いてくださいですの! こちらのお方に危険はございませんわ!」

シャルロットの話にあわせて、エリザベスは森での出來事を説明する。

「シャルロットの言う通りだ! 森の中で窮地に陥っていた私達は、こちらの仁に助けられたのだ。こちらの仁は、私達の命の恩人だ!」

「ですからみなさん、落ちついて。どうか安心してくださいですの!」

二人の王の話に、人々は一心に耳を傾ける。

「ロームルス學園を襲った魔は、ここにいる全員で撃退しましたわ! そして、パラテノ森林から魔が襲ってくることもありません!」

「森にいた魔は、こちらの仁と私達で全て討伐した!」

「つまり、ワタクシ達の勝利ですのよ! だからみなさん──」

「「「「「うおおぉぉっ!!」」」」」

シャルロットの言葉を待たずに、人々は一斉に歓喜の聲をあげる。その聲は校舎を超えて、王都ロームルスの町まで聞こえるほどだ。

「勝った! 俺達は勝ったんだ!!」

「やったわ! 私達の勝利よ!」

騎士団の者も、學園の者も、もはや區別なく抱きあって喜んでいる。そして全員が、勝利をもたらしたシャルロットへと視線を送る。

「この勝利はシャルロット様のおかげだ! 流石は太の天使様だ!!」

「いいえ、きっとシャルロット様は神様……勝利の神様なのよ!」

「いえっ、ワタクシは神ではなく──」

シャルロットは慌てて否定をしようとする。

しかし、一度沸き起こった歓喜の波は、瞬く間に広がってしまう。

神様だ! 勝利の神様だ!!」

「シャルロット様こそ、ロムルス王國の誇る勝利の神様だわ!!」

「シャルロット様! 勝利の神様! ばんざーい!!」

戦いのあとでボロボロにもかかわらず、大盛りあがりする人々。中には、ケガを負った足で走り回る者や、傷だらけの腕を振りあげている者までいる。

「「「「「神様! 神様! 神様!!」」」」」

こうして、太の天使と呼ばれていたは、勝利の神様とも呼ばれるようになったのだった。

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