《魔王様は學校にいきたい!》鬼の笑顔

雲一つない青の空。キラキラ輝く朝のざし。

気持ちのいい朝の風を浴びながら、ウルリカ様とジュウベエは、ロームルスの城下町へと向かっていた。

「ジュウベエよ! 約束通り、今日は一緒に遊ぶのじゃ!」

「はい! ウルリカ様と一緒に遊ぶ……楽しみです!」

「さて、なにをするかのう? おかし屋さん巡りはどうかのう?」

「うっ……おかし屋はお腹いっぱいですよ……」

前日にゼノン王から“王都のおかし屋さん、永久に食べ放題禮狀”をもらったばかりのウルリカ様。昨日はジュウベエを引き連れて、遅くまでおかしを食べ散らしていたのだ。

おかげでジュウベエは、朝から胃もたれ気味なのである。

「うむぅ……まだまだ食べ足りないのじゃ……」

ウルリカ様の丸い瞳に見つめられて、ジュウベエは「うっ」と言葉を詰まらせてしまう。

「ぐっ……なんと兇悪な瞳だ……しかし、今日は俺と遊んでもらう約束です! おかし屋さんは我慢してください!」

「むうぅ……仕方ないのじゃ……」

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ぷくっとほっぺたを膨らませるウルリカ様。つまらなさそうに小石をけっ飛ばす姿は、もの凄く可らしい。

そんなウルリカ様の姿に、ジュウベエはデレデレだ。

「兇悪すぎる……なんて可らしいのだ……」

喜んだり拗ねたりでたり、朝から楽しそうなウルリカ様とジュウベエ。そんな二人を、ふいに呼び止める聲がする。

「そこの二人、待ってくれ!」

聲の主はエリザベスだ。スカーレットとカイウスをつれて、ウルリカ様の方へと走って來る。

「おや、スベリエスなのじゃ!」

「スベッ……私はそんなった名前ではない! エリザベスだ!!」

「ふむ?」

キョトンと首をかしげるウルリカ様。まったく悪気のない様子に、エリザベスは怒るに怒れない。

「いや……まあいい……」

「ところで、なにか妾に用事かの?」

「ああ、実は二人に頼みがあるんだ」

「頼み? なんじゃろうな?」

「その……私達に、剣の稽古をつけてくれないか?」

「ダメだ! 斷る!!」

エリザベスのお願いを、ジュウベエは即答で切り捨てる。

あまりにもバッサリと斷られ、エリザベスは一瞬呆けてしまう。しかし、その程度で折れるエリザベスではない。

「ちょっと待ってくれ! しくらい考えてくれても──」

「俺は明日、魔界へ帰らなければならない。その前に今日は一日、ウルリカ様と一緒に遊ぶのだ。つまり、お前達に稽古をつける時間は一切ない」

「そこをなんとか──」

「卻下だ、俺達の邪魔をするな」

必死に食い下がるエリザベス。しかし、ジュウベエはまったく相手にしようとしない。

そんなジュウベエの態度を見て、スカーレットとカイウスは不信をあらわにする。

「止めときましょうよ、エリザベス様……なんだか怪しい男ですし、もう一人はただの子供ですよ?」

「スカーレットの言う通りですね、こんな子供に稽古なんて出來るはずありませんよ」

二人揃ってウルリカ様への不満を口にする、次の瞬間──。

「人間……ウルリカ様を侮辱する気か?」

「「「──っ!!」」」

ズシンッと圧しかかるような、ジュウベエの殺気。

木々はザワザワと揺らめき、石畳の地面には大きな亀裂が走る。

ジュウベエの強大な殺気をけて、をこわばらせる三人の聖騎士。

そんな中、ピョンッと飛びあがったウルリカ様は、ジュウベエの頭を“コツンッ”する。

「こらジュウベエ! 脅かしてはダメなのじゃ!」

「ぐっ……しかしこいつら、ウルリカ様に失禮なことを……」

「妾は気にしておらんのじゃ」

「……そうですか……」

ウルリカ様に“コツンッ”されて、ジュウベエはもの凄く不機嫌そうだ。

そうしてしばらく不機嫌そうにしていたジュウベエだが、突然ニヤリと笑顔を浮かべる。見る者の背筋を凍らせる、邪悪な鬼の笑顔である。

「クックック……ウルリカ様、今日の遊びを思いつきましたよ……」

「ふむ、どんな遊びじゃ?」

「この人間達に稽古をつけてやりましょう……二人で一緒に……一日かけて……」

ジュウベエの提案を聞いて、エリザベスは大喜びだ。パァッと表を綻ばせて、ジュウベエにお禮を言う。

「本當かジュウベエ殿! 謝する!!」

「なに、気にするな……」

吊りあがったジュウベエの口から、ゾロリと鋭い牙が覗く。

ここでようやくエリザベスは、ジュウベエの邪悪な雰囲気に気づく。

「お前達のせいで、ウルリカ様に“コツンッ”されてしまった。そのお返しだ……鬼の稽古というものを味わわせてやろう……」

「鬼の稽古!? それは──」

「では行きましょう、ウルリカ様! 人間達を徹底的に追い詰めて、死ぬまで反吐を吐かせる遊びです!」

「うむ! お稽古なのじゃ、頑張ろうなのじゃ!」

「いや、ちょっと待──」

「問答無用だ、さあ來い! 百回は死ぬ覚悟をしておけ!!」

そう言ってジュウベエは、三人まとめて強引に擔ぎあげる。

鎧を著た聖騎士三人を軽々と抱えて、意気揚々と訓練場へ向かっていく。

このあと、ジュウベエが魔界に帰るまでの丸一日、地獄よりも辛い訓練が続いたという。

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