《魔王様は學校にいきたい!》アンウエルスの町で
アルベンス伯爵邸で、オリヴィアが涙を流していた頃。
ウルリカ様とシャルロット、ナターシャの三人は、アンウエルスの町に到著していた。
「ここじゃな! この町にリヴィはおるのじゃな!!」
「ええ、そのはずですわ」
「ベッポさんもシャルルさんも、『オリヴィアはアンウエルスの町へ行った』、と言っていました。きっと間違いありません!」
夕焼けに染まるアンウエルスの町を、三人は並んで歩いていく。町に到著したばかりの三人は、ひとまず大通りから、町の中心部を目指しているのだ。
「まずは報収集ですよね、リヴィの手がかりを探しましょう!」
「オリヴィアの手紙には、領主との結婚と書いていましたわよね。だったら領主の居場所を──」
「むぅっ、ゴチャゴチャと煩わしいのじゃ! ここは魔界から、捜索部隊を大量に呼んで……むむっ!」
魔界から大軍を呼び寄せようとしていたウルリカ様は、突然ピタリときを止める。どうやら大通りのと・あ・る・お・店・に、釘づけになっているようだ。
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「あらウルリカ、どうかしましたの?」
「あれを見るのじゃ!」
ウルリカ様は勢いよく、お店の方を指差す。その先には──。
「「……おかし屋さん?」」
そう、ウルリカ様が釘づけになっているお店は、ウルリカ様の大好きなおかし屋さんなのだ。
キョトンとするシャルロットとナターシャを置いて、ウルリカ様は吸い込まれるように、おかし屋さんへと近づいていく。
「味しそうなのじゃ! いい匂いなのじゃ!」
易で栄えてきたアンウエルスの町には、各地から珍しい食材も集まってくる。もちろんおかし類も例外ではない。
町はウルリカ様の大好きなおかしで、溢れているのである。
「とりあえず、あっちの棚を全部なのじゃ。それと、こっちの箱も全部なのじゃ……」
「待ってウルリカ、今はそれどころではありませんわよ!」
「そうですよ、先にリヴィを連れ戻さないと!」
「むむぅ……しかし、味しそうなおかしでいっぱいなのじゃ……」
シャルロットとナターシャに止められて、グズグズと駄々をこねるウルリカ様。そうこうしている間に日は落ち、おかし屋さんは閉店の準備にとりかかってしまう。
「お店が閉まってしまうのじゃ……ちょっとだけでも……」
「ダメですわよ! 先にオリヴィアですの!」
「せめて一つだけ……」
「ダメです! 先にリヴィです!」
タンタンと足で地面を鳴らし、駄々をこね続けるウルリカ様。通りかかる町の人々も、ウルリカ様に呆れた視線を送ってくる。
「はぁ」とため息をつく、シャルロットとナターシャ。二人がかりでウルリカ様を引っ張って行こうとする、しかし。
「あ……あら?」
「ウルリカさん?」
たったの今まで、目の前で駄々をこねていたウルリカ様。にもかかわらず、パッと一瞬で姿を消してしまったのだ。
突然の出來事に、シャルロットとナターシャは慌てて周りを見て回る。すると、すぐ近くの路地裏から「ぐうぅ……」と低いうめき聲が聞こえてくる。
怪しい聲のする路地裏を、恐る恐る覗き込む二人。
そこには──。
「ぐぅっ……離せ!」
「ダメじゃ、離さぬのじゃ」
そこには、見知らぬ男を片手で摑みあげる、ウルリカ様の姿があった。
ウルリカ様に摑まれた男は、じたばたと必死にもがいている。
「ウルリカ! なにをしていますの!?」
「この者は妾達を監視しておったのじゃ、怪しいのじゃ。それにこの者、リヴィの匂いがするのじゃ」
「リヴィの匂い? 本當ですか?」
「間違いないのじゃ……それにこの者は吸鬼じゃ」
「「吸鬼!?」」
「くそっ、ここは一時退卻だ──」
驚く二人の目の前で、男はを霧に変化させて逃げようとする。しかしウルリカ様は、男の逃亡を許さない。
「離さぬと言ったはずじゃ!」
ズンッと空気を震わせ、解き放たれるウルリカ様の魔力。魔力の圧をけて、男のは霧から実へと強制的に戻される。
ウルリカ様の強大な魔力に縛られた男は、指一本すらかすことも出來ない。
「ぐぎぎぃっ……」
「さて、お主に質問があるのじゃ」
「ぐぅっ……答えねえよ……」
「ふむ……」
次の瞬間、ウルリカ様の魔力は數倍に膨れあがる。それはまるで海の底のような、深く暗い魔力の波だ。
「ひっ!? ひいぃっ! ひいぃぃっ!!」
ウルリカ様の魔力に曬され、一瞬にして男の脳裏は恐怖と絶に支配される。きのとれないまま、男は必死にび聲をあげる。
「分かったぁっ! なんでも喋る、だから見逃してくれぇっ!!」
「では質問なのじゃ。お主はなぜ、妾達を監視しておったのじゃ?」
「ひぃっ、アルベンス伯爵様から命令をけて、お前達を見張っていた」
「オリヴィアというを知っておるな? リヴィは今どこにおるのじゃ?」
「その娘はアルベンス伯爵様の屋敷にいる。町の北側にある、バラ園の立派なお屋敷だ……」
「お主は吸鬼じゃな? そのアルベンス伯爵とやらも吸鬼なのかの? リヴィになにをしようとしておるのじゃ?」
「確かに俺は吸鬼だ、しかしあのお方は……アルベンス伯爵様は吸鬼ではない……。もっと……もっと恐ろしい存在……うぐっ……」
話の途中で、男はガックリと気を失ってしまう。ウルリカ様の魔力に耐えられず、意識を失ったのだ。
用済みとなった男を、ウルリカ様はポイッと投げ捨てる。そして、シャルロットとナターシャの方へと振り返る。
「ロティ、サーシャ。話は聞いておったな!」
「もちろんですわ。どうやらオリヴィアのに、危険が迫っているようですわね」
「はいっ、早くリヴィを助けにいきましょう!」
「うむ! 必ずリヴィを助け出すのじゃ!」
こうして、オリヴィアを救うべく、三人は紫の夜へと駆け出すのだった。
家から逃げ出したい私が、うっかり憧れの大魔法使い様を買ってしまったら
◇SQEXノベルさまより書籍全3巻発売中!3巻は完全書き下ろしで、WEB版の続きになります。幸せいっぱい、糖分過多のハッピーエンドです。 ◇ガンガンONLINEさまにてコミカライズ連載中! コミックス2巻が発売中です。 ◇ 書籍ではWEB版のラストを変更しています。 伯爵家に引き取られたジゼルは、義母や妹に虐げられながらも、持ち前のポジティブさと亡き母に貰った『やさしい大魔法使い』という絵本を支えに暮らしていた。 けれどある日、自身が妹の身代わりとして変態侯爵に嫁がされることを知り、18歳の誕生日までに逃げ出す計畫を立て始める。 そんな中、ジゼルは奴隷市場でムキムキの青年を買うつもりが、ついうっかり、歳下の美少年を買ってしまう。エルヴィスと名乗った少年は、ジゼルをクソガキと呼び、その上態度も口もとんでもなく悪い。 ──実は彼こそ、最低最悪の性格のせいで「人生をやり直してこい」と魔法を封印され子供の姿にされた後、神殿から放り出された『大魔法使い』だった。 魔法によって口止めされ、自身の正體を明かせないエルヴィス。そんな彼に対しジゼルは、あまりにも辛い境遇のせいでひねくれてしまったのだと思い、逃亡計畫の傍らひたすら愛情を注ぎ、更生させようとする。 (あれ、エル、なんだか急に身長伸びてない?魔法が少し使えるようになったって?ていうか距離、近すぎるのでは……?) 世話を焼き続けるうちに、エルヴィスに少しずつ不思議な変化が現れ始める。彼に掛けられた魔法が、人を愛することで解けることを、二人が知るのはまだ先で。 家を出たい心優しい少女と、元の姿に戻りたい優しさの欠片もない魔法使いが、幸せになるまでのお話です。
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