《魔王様は學校にいきたい!》

闇夜を照らす、漆黒の炎。

ウルリカ様の放った煉獄魔法は、悪魔も魔人も、ひとまとめに飲み込んでいく。

吹きあがる炎はバラ園を包み、黒い火柱を夜空へと突き立てる。それはこの世のものとは思えない、恐ろしい景だ。

「ズォ……オォォッ……」

炎に飲まれた魔人バズウは、一瞬にして全を焼き盡くされ、灰となって消滅してしまう。

討伐難易度Aに相當する魔人でも、圧倒的な熱量と魔力を前には、跡形も殘ることは出來ない。

アルベンス伯爵もまた、魔人バズウと同様に、燃え盛る炎へと飲み込まれていく。

一瞬なにか抵抗する素振りを見せたものの、ウルリカ様の煉獄魔法の前では、全ては無駄な抵抗なのである。

ゴオゴオと音を立て、燃え続ける黒い火柱。渦巻く炎はバラ園をドロドロに溶かし、吹きあがる熱風は雲をかき消す。

なにもかもを焼き盡くす煉獄魔法。そんな中ウルリカ様は、炎に包まれながら平然と魔力を放ち続ける。渦巻く炎も熱風も、ウルリカ様にとってはそよ風のようなものだ。

ふいにウルリカ様は、手のひらを空へと向ける。すると、激しく燃え盛っていた炎は、ギュルギュルと勢いよくウルリカ様の手のひらに吸い込まれる。

あれだけ激しく燃えていた炎は、あっという間にウルリカ様に握りつぶされてしまう。

殘ったのは、真っ黒に溶けたバラ園の殘骸と。そして──。

「う……うぅ……」

黒く溶けた地面の上で、モゾモゾとうごめくアルベンス伯爵。優雅だった面影は消え去り、ボロボロで瀕死の狀態である。

「わ……我は……生きて……いるのか……」

「……」

「ハ……ハハッ……我は生き殘ったぞ……」

「それは違うのじゃ……」

「な……なに……?」

「お主は生かされただけじゃ」

黒く溶けたバラ園を、ウルリカ様はゆっくりと歩いていく。

徐々にまる、ウルリカ様とアルベンス伯爵の距離。しかしアルベンス伯爵は、這って逃げることも出來ない。もはや指一本すらもかせない狀態なのだ。

「あのまま焼き盡くしてもよかったのじゃ……しかし、お主にはリヴィを傷つけた罰をけてもらわねばならんからの……」

「あえて……殺さなかったということか……くそっ……」

一時はウルリカ様の力に恐怖したにもかかわらず、アルベンス伯爵はウルリカ様に向けて殺気を放ち続けている。凄まじい執念と神力である。

「おのれ……大悪魔たる我が……貴様のような小娘に生かされるなど……」

「妾からしてみれば、お主などただの小悪魔なのじゃ……」

「こっ……小悪魔だと……バカな……!?」

「ふむ……ならばお主には、本の大悪魔の恐ろしさを教えてやるのじゃ」

そう言うとウルリカ様は、靜かに魔力を集中させていく。けないアルベンス伯爵の周りに、大量の魔法陣が現れる。

煉獄魔法の時とは比べにならない、強大すぎる魔力の波に、アルベンス伯爵の顔は真っ青だ。

「これはリヴィを傷つけた罰じゃ」

「まっ、待て! 止め──」

「──時空間魔法──!」

ズズンッ!! と巨大な振を殘して、アルベンス伯爵は姿を消してしまう。

月夜に照らされる中、靜かに魔力を収めるウルリカ様。

「本の大悪魔の恐ろしさを、をもって味わってくるのじゃな……」

こうして、魔王の怒りにれた悪魔は、人間界から姿を消したのだった。

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