《魔王様は學校にいきたい!》魔法
「では授業をはじめます……」
いよいよクリスティーナによる、魔法の特別授業が幕を開ける。
ズラリと並ぶ生徒達の前で、杖を片手にクルクルと歩き回るクリスティーナ。気怠そうにしながらも、しっかりと授業はやるつもりのようだ。
「まずは基本的な魔法の知識を説明します……」
そう言うとクリスティーナは、おもむろに杖を空中へと走らせる。するとなにもない空間に、り輝く文字と図式が浮かびあがる。
「“魔法”とは……“魔導力”と“魔法力”を用いて理現象を引き起こす技の総稱です……」
生徒達から「おぉっ!」と歓聲のあがる中、クリスティーナは淡々と空中に文字と図式を浮かびあがらせていく。一通り文字と図式を浮かびあがらせたところで、生徒達の方へと振り返る。
「魔導力とは、魔法の発に必要な原力を指します……魔法力とは、正しく魔法を発するための技力を指します……。魔導力と魔法力、両方をかけあわせることで魔法は発します。例えば大きな魔導力を持っていたとしても、魔法力不足では正しく魔法を発出來ません……」
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クリスティーナの説明にあわせて、り輝く文字の數々。しく不思議な授業景に、生徒達はすっかり釘づけだ。
「魔導力は持って生まれたものなので、後天的にばすことは難しい……一方で魔法力は努力次第でばせます……。魔法力は杖や呪文や魔法陣といった魔法で補うことも出來ます……。練の魔法使いは魔法に頼らずとも、自力で魔法を発出來ます……」
クリスティーナは杖を下げると、指先から大きな炎を吹きあがらせる。魔法を使っていないにもかかわらず、見事な魔法の発に生徒達から驚きの聲があがる。
「次に魔法の“階梯”について説明します……」
空中で輝く図式へと杖をばし、クリスティーナの授業は続く。
「魔法の強さは七つの段階で表すことができます、これを魔法の“階梯”といいます……。第一階梯から第七階梯と呼び、數字の大きな階梯魔法ほど強力な魔法ということになります……」
輝く図式はクリスティーナの説明にあわせて、空中を自在に踴り回る。クリスティーナの行う授業は、ただしいだけではなく非常に分かりやすい。
「第一階梯の魔法は、子供でも扱えるような生活魔法です。第七階梯の魔法は、一撃で戦爭を終わらせてしまうほどの強力な魔法です。もうし詳しく説明すると──」
「ふーむ……なるほどなのじゃ……」
クリスティーナの授業を聞きながら、ウルリカ様は真剣な表で頷き続けている。特別授業の容に、興味津々といった様子だ。
「あら? もしかしてウルリカは魔導力や魔法力、階梯のことを知らなかったのですの?」
「全部知っておるのじゃ、魔法の概念は魔界も人間界も変わらんのじゃ」
「だったらお姉様の授業は退屈ではありませんの?」
「そんなことはないのじゃ! やはり授業はとても楽しいのじゃ!」
どうやらウルリカ様は特別授業に大満足な様子だ。爛々と目を輝かせて、楽しそうなことこの上ない。
「ところでロティよ、お主の姉は魔法の扱いに長けておるのう! とてもでしい魔法なのじゃ!」
「お姉様の実力は本ですのよ。優秀な研究者でありながら、數ない第七階梯魔法への到達者でもありますの。現在のロムルス王國で第七階梯魔法を使える魔法使いは、クリスティーナお姉様とノイマン學長だけですのよ」
「それは凄いのじゃ! 魔界でも第七階梯の魔法を使える者は限られておるからのう」
「ちなみにウルリカはどの階梯まで使えますの……って、聞くまでもないですわよね」
「うむ! もちろん妾は最終階梯魔法まで使えるのじゃ!」
「やっぱり第七階梯魔法まで使えるのですわね……」
「第七階梯魔法ではなく、最終階梯魔法なのじゃ!」
ウルリカ様の答えを聞いて、シャルロットはコクリと首を傾げてしまう。どうやらウルリカ様とシャルロットの間で、會話にズレが生じているようである。
「最終ということは、最も階梯の高い第七階梯まで使えるということですよわね?」
「うむ? 最も階梯の高い魔法は──」
「そこ……うるさい……!」
靜かなお叱りの聲に、ハッとするウルリカ様。お話に夢中になっていたところを、クリスティーナに見つかってしまったのだ。
「ごめんなさいなのじゃ! 靜かにするのじゃ!」
ウルリカ様は大慌てで口を押さえると、すっかり靜かになってしまう。チョコンとこまる姿はとても可らしい。
「魔法の説明は終わり……それでは今日の目標を発表します……」
一通り説明を終えたクリスティーナは、空中に浮かべていた文字と図形をサッとかき消す。
「目標を立てなければ授業をやる意味はない……だから目標を立てた……使える魔法の階梯を一段階あげてもらう……もちろん全員……それを今日の目標にする……」
クリスティーナから発表された特別授業の目標。それを聞いて生徒達の間に、ザワザワと不安の波が広がっていく。
「そんな! 階梯をあげるのは凄く難しいんですよ!」
「全員の目標だなんて、流石にムチャです!」
「大丈夫……方法は教える……だから死ぬ気で頑張って……」
ニヤリと影のかかった笑顔を浮かべるクリスティーナ。靜かな迫力のこもった笑顔に、生徒達はただ黙るしかない。
「お姉様ったら……魔法のことになると妥協を許せませんのよ……」
「自分は魔法の才能がまったくないのだ……どうすれば……」
「私も魔法は苦手です……階梯をあげるなんて無理ですよ……」
他のクラスの生徒達と同様に、下級クラスの生徒も心配の聲をあげている。特にシャルルとナターシャは魔法を苦手としてるようだ。
そんな中ヘンリーだけは、ずいぶんと余裕のある表を浮かべている。
「心配する必要はありませんよ」
「あら? ヘンリーは自信ありそうですわね」
「魔法の階梯をあげる方法を知っていますからね、みなさんにも教えますよ」
思わぬヘンリーの言葉を聞いて、驚く下級クラスの生徒達。
一方のクリスティーナは、杖を片手に生徒達へと呼びかける。
「それじゃあ実踐に移る……魔法のを準備して……」
高い目標に不安を覚えながらも、生徒達はそれぞれの魔法を取り出す。
クリスティーナの特別授業はまだまだ続く。
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