《魔王様は學校にいきたい!》奇跡

まだまだ続く、クリスティーナの特別授業。

クリスティーナの立てた目標を達するべく、生徒達は広い校庭のあちらこちらに散らばって、一生懸命に魔法の練習をしていた。

「風よ! 風よ! はぁ……はぁ……ダメだわ……」

「私もダメ……やっぱり簡単に階梯をあげるなんてムリよ……」

苦戦している生徒達の間を歩きながら、クリスティーナは一人一人に助言をして回る。

「あなたは不自然な魔力の流れをしている……の中を流れる魔力を意識して……水のように流れる魔力を想像して……」

「やってみます……あっ、出來ました!」

「あなたは杖の使い方を間違えている……杖の先までの一部だと思って……魔力の筋を杖の先端までばすの……」

「杖の先端まで……わぁっ、功しました!」

クリスティーナから助言をもらった生徒は、次々に目標としていた魔法を功させていく。一流の魔法使いなだけあって、クリスティーナの教え方は非常に分かりやすい。しかしそれでも、半數以上の生徒達はコツを摑めないでいる。

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そんな中クリスティーナは、一部の男子生徒の態度にイライラを募らせていた。

「クリスティーナ様―! 魔法をうまく使えませんー!」

「俺もですー! 個別指導してほしいですー!」

明らかにわざと魔法を失敗しては、クリスティーナを呼びつける男子生徒。どうやら人のクリスティーナとお近づきになりたいで、そういう態度に出ているようだ。

呆れた態度にクリスティーナは、思わず「はぁ……」とため息を吐く。クリスティーナの特別授業は、徐々に不穏な空気に包まれていく。

一方そのころ下級クラスは、全員で校庭の端に集まっていた。なにやらコソコソとしている下級クラスのところへ、暇を持て余したノイマン學長がやって來る。

「おや? 下級クラスはこんなところで、一なにをしているのですかな?」

ノイマン學長に気づいたシャルロットは、校庭の中心を指差しながら狀況を説明する。

「お姉様はあんな調子で、上級クラスと一般クラスに手いっぱいですわ。ですからワタクシ達は、ヘンリーから魔法を教えてもらっていますのよ」

「ほう? ヘンリーに魔法を?」

首を傾げるノイマン學長。

その時──。

「うおぉぉーっ!」

集まっていた下級クラスの中心から、シャルルの大きなび聲があがる。

片手に杖を持ったシャルルは、聲をあげて全を震わせている。よく見ると杖の先端からは、小さな火種が吹きあがっている。

「俺の魔法だ……生まれてはじめての魔法だ!」

「これでシャルルは目標達ですね」

「ありがとうヘンリー! 本當にありがとう!!」

どうやら人生初の魔法を功させたシャルルは、涙を流しながらヘンリーに頭を下げている。あまりにも勢いよく頭を下げすぎて、せっかくの魔法をかき消してしまいそうだ。

「自分は魔法の才能に恵まれず、今まで一度も魔法を使えたことはなかったのだ……下級クラスにった理由も、魔法の試験で最低點を取ってしまったからなんだ……」

「シャルルさんの気持ちは分かります……私も魔法は苦手ですから……」

「自分は一生魔法を使えないと思っていた……これは奇跡だ……!」

涙を流すシャルルの背中を、ナターシャは優しくさすってあげる。そんな優しいナターシャへと、ヘンリーは一本の杖を差し出す。

「次はナターシャさんの番です、この杖を使ってくださいね」

「わっ、私の番ですか!?」

「これからナターシャさんの魔法の階梯をあげます、準備はいいですか?」

「あの……分かりました! お願いします、ヘンリーさん!!」

ナターシャはやる気十分でギュッと杖を握りしめる。次はナターシャの番……と思われたその時、ノイマン學長から待ったをかけられる。

し待ってほしいのですな。魔法を使えなかった者に魔法を使わせた、その方法をワシにも教えてほしいのですな」

「ノイマン學長から教えを請われるだなんて、恐れ多いですね……」

そう言いながらヘンリーは、小脇に抱えていた一冊の本をノイマン學長に手渡す。

「この本のおかげですね」

「この本は……“魔法學大全”と書いてありますな。著者は……」

表紙を指でなぞっていたノイマン學長は、著者名を見て目を丸くする。

「これは! ウルリカ様の書かれた本ですかな!?」

そこには紛れもなく、ウルリカ様の名前が刻まれていたのだった。

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