《魔王様は學校にいきたい!》ちょっと待った!!

「「「ちょっと待った!!」」」

クリスティーナを呼び止める三つの聲。呼び止めたのはシャルロットとヘンリー、そしてシャルルの三人だ。

呼び止められたクリスティーナは、不機嫌そうにゆっくりと振り向く。

「なに……?」

容も読まずに否定してしまうのは、し早計ではありませんの?」

「さっきも言った……生の魔法化は不可能……。私達の研究結果に間違いはない……だからその本を読む必要はない……」

話を聞こうとしないクリスティーナを、ヘンリーとシャルルも一緒になって止めようとする。

「それは人間の世界で行った研究の結果ですよね? この本は魔界で書かれたものですよ?」

「それこそ信用出來ない……魔界だなんて……おとぎ話の中の存在でしょ……」

「自分は魔法を使えるようになりました! 自分こそ本の容を証明する証拠です!」

「たった一人……それも簡単な魔法を使えるようになっただけでしょ……証拠とは言えない……」

ヘンリーとシャルルの言葉にも、クリスティーナは聞く耳を持とうとしない。「はぁ……」と大きなため息をついて、ますます不機嫌そうな様子だ。

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「私達は千人以上の人間を対象に、魔法化の研究をしていたの……五年もの歳月をかけて研究をしていたの……。研究を進める中で、魔法を使えるようになった人間もいた……でもそれは偶然だったり、別の要因だったりした……。たった一人が魔法を使えるようになったからといって、簡単に信用は出來ない……」

「ぐっ……しかし!」

「研究というものを甘く考えないで……費やした時間と労力が違うの……!」

強い口調できっぱりと言い切るクリスティーナ。靜かな迫力にヘンリーとシャルルは、思わず黙り込んでしまう。

そんな中シャルロットは、どういうわけか突然クリスティーナの意見に賛を示す。

「確かにお姉様の言う通りですわね、費やした時間も労力もけた違いでしたわ」

シャルロットの言葉は、クリスティーナに負けないくらいの強い口調だ。

「ウルリカはこの研究に八十年以上の膨大な歳月をかけていますのよ。百種類以上の、そして十萬人以上の魔界の住人に協力を仰いで研究を進めたそうですの。お姉様とはけた違いの時間と労力ですわね」

「八十年!? 十萬人!? それは本當なのですかな?」

驚いているのはノイマン學長だけではない。ウルリカ様以外の全員が、シャルロットの話を聞いて目を丸くして驚いている。

「以前にウルリカから“デモニカ國政帳”という本を貰いましたの、その本に詳しく書いてありましたわ。“全てはする民達の、かな生活の為に”ですわよね!」

そう言うとシャルロットは、ウルリカ様へと満面の笑顔を向ける。

文字通りけた違いの話を聞かされて、しかしそれでもクリスティーナは一向に意見をれようとしない。

「突拍子もなさすぎる……やっぱり信用出來ない……」

「本に書かれてある容は間違いなく本です。ウルリカさんの思いやエミリオさんの苦労も伝わってきます。それを否定されて黙っていることは出來ませんね」

「自分も同じ意見です!」

納得しないクリスティーナに、熱をあげて反論するヘンリーとシャルル。の高まる中、ウルリカ様は雙方の間にピョンと割ってる。

「まあまあ落ちつくのじゃ!」

ニッコリと優しい笑顔を浮かべたウルリカ様は、シャルロット、ヘンリー、シャルルの手を順番にギュっと握って回る。パタパタと駆け回り手を握って回る姿はとても嬉しそうだ。

「妾達の書いた本を、友達からそんな風に思ってもらえるとはの! 妾は凄く幸せなのじゃ!」

そしてクリスティーナの方へと、クルリと回って振り返る。その表は先ほどと打って変わり、不敵で迫力に満ちた笑顔だ。

「ならば信じてくれた友達のために、一緒に本を書いたエミリオのために、正しさを証明するのは妾の役目じゃな!」

立ちのぼる魔力に髪をなびかせ、ウルリカ様は靜かに魔力を集中させていく。そして──。

「完された銀星式というものを見せてやるのじゃ!」

星空のように煌めく魔法が、ロームルス學園の校庭を覆い盡くす。

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