《魔王様は學校にいきたい!》形勢逆転

「そこまでですわ!」

どこからともなく響き渡る、絶を掻き消す希の聲。ウルリカ様の「そこまでじゃ!」を思わせる言い回しだが、聲と口調は紛れもなくシャルロットのもの。

「助けにきましたわよ!」

崩れた祭壇の頂で、シャルロットはビカビカと発していた。差し込む後、頭上の、煌めく翼、その姿はまるで──。

「「「「「クフフッ……音に聞く太の天使か、あるいは勝利の神でしょうか?」」」」」

そう、まるで天使や神のよう。むやみにビカビカと発し、やたらと目立って注目を集める。自ずとラドックスから狙われてしまうが、それこそシャルロットの狙いだ。

「よし、一気に制圧するぞ!」

「ナターシャ嬢を返してもらう、筋力増強魔法!」

「「「「「なんだと!?」」」」」

シャルロットが注目を集めている間に、シャルルとゴーヴァンが回り込んでいたのである。

シャルルは先陣を切ってラドックスの包囲網に突撃、アルキアの國王相手でもお構いなしに、強烈な當たりで吹き飛ばす。

「ぬうんっ、炸裂せよ大筋!」

「「「「「ぐはあああっ!?」」」」」

い立て僧帽筋!」

「「「「ぐひいいいっ!?」」」」

「唸れ上腕二頭筋!」

「「「ぐふうううっ!?」」」

「燃えあがれ広背筋!」

「「ぐへえええっ!?」」

「弾けろ大四頭筋!」

「ぐほおおおっ!?」

シャルルの進撃は止まらず、瞬く間にラドックスの包囲網は崩壊寸前だ。

一方のゴーヴァンは、殘っていた魔をすっかり片づけていた。かつ卓越した立ち回りで、シャルロットの護衛も欠かさない。

「上手くいきそうですわ、流石ヘンリーの立てた作戦ですわね……ところでヘンリー?」

シャルルとゴーヴァンの戦いを眺めながら、シャルロットはチラリと振り返る。ヘンリーに話しかけているようだが、暗がりに紛れて姿は見えない。

「……はい、どうしました?」

「この演出はし派手すぎると思いますの、天使に神って……」

「シャルロット様の役目はです、これ見よがしに目立ってこそです」

「それはまあ、分かってますわよ……」

「というわけで魔法の出力を最大にします、もっと派手に目立ってください」

「そんなに目立ちたくありませんわよ!」

、煌めく翼はヘンリーの魔法による演出。シャルロットの派手な登場、続くシャルルとゴーヴァンの強襲はヘンリーの立てた作戦。

ヘンリーは知恵と工夫で數的不利を覆し、見事ラドックスを大混へと陥れたのだ。

「今です、ヨグソードを取り返します!」

「待ってナターシャちゃん、危険すぎるわ」

「大丈夫です、必ずヨグソードを──」

「クフフッ、ヨグソードは渡しませんよ」

「──っ!?」

するラドックスの隙を突いて、ナターシャはスルスルと包囲網を突破。ヨグソードに手をばすも、一歩及ばずラックに阻まれてしまう。

「さあお嬢さん、大人しく──」

「くたばれラック!」

「──ふごおっ!?」

「えっ、ヴィエーラさん!?」

ナターシャの行く手を阻んだ直後、ラックは奇聲をあげてパッタリ。

何事かと思いきや、ヴィエーラが背後から間をズドンッと蹴りあげたのだ。ラックに限らず全男とって、震いするほど悍ましい一撃である。

「あの、ヴィエーラさん? この方は敵にられていたのでは?」

られていたとはいえ、ヴィクトリア様を陥れた罪は許せません!」

「おっ……おごっ……、おげっ……」

ラドックスにられている、かといってヴィエーラは容赦しない。悶絶するラックを何度もゲシゲシッ、主に間を何度もゲシゲシッ。

ともかくヨグソードは取り返し、ラドックスの包囲網は完全に壊滅。一時は萬事休すかと思われたが、どうにか危機はしたよう。

「シャルロット様! シャルルさんとヘンリーさんも、助けにきてくれたのですね!」

「どうして子供達が? それにゴーヴァンまで、一どういうことなの?」

「お母様達を助けにきましたのよ、でもその……なんだか迷って、通路が崩れて、崩れた先でお母様達を見つけて、ヘンリーに作戦を立ててもらって……」

「お待ちください、経緯を話すと長くなってしまうかと。ですのでヴィクトリア様、まずは出いたしましょう」

「でもゴーヴァン……そうね、分かったわ」

「グルオオオオッ!」

いざ出と思った矢先、突如として上空から響き渡る咆哮。見あげると真紅の巨、その正は──。

「「「「アグニス!?」」」」

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