《魔王様は學校にいきたい!》

「グルオオオオッ!」

真紅の翼で風を切り、アグニスはグングンと高度をあげる。シャルロット、ナターシャ、シャルル、ヘンリー、ヴィクトリア王、ヴィエーラ、ゴーヴァン、そしてオリヴィアとベッポ、九人もの大所帯を乗せて。

「いいぞアグニス、このまま一気に出だ!」

「グルルルンッ!」

遡ること數分前、捕らわれていた三人を救出し、ヨグソードを取り返した直後のこと。出するのみとなった矢先、アグニスが飛んで現れたのである。

空を飛べるアグニスは、出するにあたって渡りに船。といった経緯からアグニスに乗って、ヴァンナドゥルガからの出を試みているのだ。

「ところでベッポ、ここは屋か坑か……いずれにせよアグニスの大きさではってこられないはずです。一どのような方法で、ここまで助けにきてくれたのでしょう?」

「いやいや、先に俺から質問させてくれ。あのなお前達……五時間以上も何やってたんだよ、死ぬほど心配したんだぞ!」

「私は何がなんだか……えっと、ここは一どこなのでしょう? あっ、そういえばリィアンさんは?」

「はいそこまで、し冷靜になりましょう」

次から次へと質問は盡きない、そんな質問合戦を見かねて、ヴィクトリア王は待ったをかける。

々と聞きたいわよね、でも今は時間が限られているわ。だから質問を絞るわよ、まずは今の狀況を確認させて」

「だったら俺とオリヴィアだ、アグニスに乗って外の狀況を見てたからな」

非常時こそ狀況確認は重要である、ヴィクトリア王の判斷は的確だ。

その上で狀況を把握しているのは、ヴァンナドゥルガの外にいたオリヴィアとベッポ、加えて二匹の魔のみ。

「では……どこから話しましょう」

「ニャアニャア!」

「はい、そうですねカーミラちゃん。まず時刻は日沒直後、場所は王都ロームルス北方の平野です。外では數時間前から、大規模な戦闘が続いています」

「グルルッ、グルルッ?」

「そうだなアグニス、あれは間違いなくガレウス邪教団だった。數えきれないほどの魔、吸鬼、それに悪魔だ。もう片方はロムルス王國、アルテミア正教國、南ディナール王國の連合軍だな」

「グルルルッ!」

なぜかカーミラとアグニスも一緒に、狀況を説明してくれているよう。だが「ニャア」と「グルルッ」では人間に伝わらない、と思いきやなぜかオリヴィアとベッポには伝わっている。

それにしてもカーミラは、一どこに潛んでいたのやら。

「そう……なんとなく狀況は分かったわ、ちなみに戦況はどうだったかしら?」

「最初こそ優勢でした、でも四本腕の怪が現れてからは押され気味です。アンナマリア様と互角に戦う、恐ろしく手強い怪です」

「ニャニャンッ」

「この魔、山みたいな大きさだったろ? 表面はい巖石に覆われてるんだ、それを剣の一振りでザックリだぜ。切り口は谷みたいだった、アグニスの大きさでも余裕でれ……おっ」

「グルオオオオッ!」

「おい見ろ、出口だ!」

ヴァンナドゥルガのは、アンナマリアとガレウスの激突、その余波によって大きく切り裂かれている。

外郭から最深部、ガレウス邪教団の本拠地まで達する巨大な裂け目。その裂け目からアグニスは侵し、救出に駆けつけたのだ。そして今まさにスルスルと、裂け目を抜けて大空へと飛び出す。

「やりましたわ、ついに出……えっ」

目に飛び込んできた景は、あまりにも衝撃的なものだった。

地上を埋め盡くす魔の群れ、吸鬼、悪魔の大軍勢。空を支配する六羽の怪鳥は、アンデットと化し蘇った兇鳥ギュエ―ルだ。アブドゥーラは未だ健在、対する陸上艦ロイヤルエリッサは半壊している。

「こ……んな……」

「グルオオオッ!?」

「おおっ、どうしたアグニ──うわあっ!?」

景を目にした直後、どういうわけかアグニスは姿勢を崩す。

そのまま地上へ真っ逆さまに──。

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