《見た目は青年、心はアラサー、異世界に降り立つ! ~チートスキル「ストレージ」で異世界を満喫中~》二話

「うん? ここは一……?」

が霧散すると、そこは木々の隙間から木れ日が差し込む森の中の様だった。月明かりではない事から、どうやら夜ではないみたいだ。

とりあえず異世界転移は無事功したみたいだが、人里には転移しなかったらしい。

森の中スタートか。確かに異世界転移のお約束の一つではあるし、実際に森の中に転移した場合を想定したシミュレーションもした事はある。だが、実際にその立場になってみると、意外と困るもんだな。

「それにしても、あのガイアって神、大した説明もしないで異世界に放り込むなんて。もっとこの世界について詳しく説明してくれてもいいのに」

……まあここで愚癡っても仕方ないか。とりあえず今は他にやるべき事がある。

「ステータスオープン」

教わった通り唱えると、目の前に半明のタブレット畫面の様なが現れた。俗にいうステータス畫面というだろう。

そこには「近衛海斗:男 十九歳 人族」と書かれており、更にその下に「スキル」と書かれていた。

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これだ。あの神……一応「様」をつけておいた方がいいか? もしも理不盡に天罰でも落とされたら、堪ったもんじゃない。

神様は付與したスキルの説明もせずに、いきなり俺を異世界に放り込んだんだ。ステータスプレートは真っ先に確認しておかないと。

「えーっと、スキルは……、鑑定、長限界突破、ストレージの三つか……あれ? 戦闘系のスキル無くない?」

確かにどれも便利そうなスキルではある。鑑定は異世界の定番だし、長限界突破は先々絶対重寶するだろう。ストレージは言わずもがな。収納系のスキルは必須と言っても過言じゃない筈だ。

でもさ、今使える戦闘スキルが無い訳ですよ。一応長限界突破は戦闘系にるんだろうけど、現狀特に何か影響があるスキルとは思えない。

そしてそれは、今の俺にまともな攻撃手段が無いという事を意味している。

今魔に襲われたら詰むぞコレ。一どうしたものか。

「……まあ、無いは仕方ない。それよりも、今は水と食べの確保が先決か」

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その二つが無いと生きるのもままならないからな。その後は安全な拠點の確保、そして火を起こす道の用意、と。やるべき事は山積みだ。

の件はとりあえず後回し。今考えても仕方ないし、々出會わない事を祈ろう。

「よし、とにかくくか」

このままここに留まっても狀況は好転しない。

それに、まだ見ぬ世界の探索。それ自はワクワクしている。

俺の異世界生活は、まだ始まったばかりだ!

……いやフラグじゃねぇよ?

歩き回る事三十分、食べも水も一向に見つからない。ていうか、自分が今どこにいるのかさえ分かっていない。自分が人里に近づいているのか、遠ざかっているのかも。

この狀況、実は迷子というものでは?

「異世界生活でいきなり迷子とか、笑えねえな」

そもそも森の中からスタートって絶対間違ってるだろ。

右に左に前に後ろにと、思いつく限り々と歩き回ってみたが、景が全然変わらないから方向覚も狂ってくる。

それに、そろそろ腹も減ってきた。いい加減果の一つでも見つかってくれないものか。と、そんな事を考えていた時だった。

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ぴちゃん。

どこかから水のはねる様な音が聞こえてきた気がした。方向的に左の方だろうか?

「……もしかして川か!」

言葉にすると同時に、俺は音のした方向に向かって駆け出した。

川なら飲み水の確保も出來るかもしれないし、あわよくば魚を捕まえられるかもしれない。

煮沸しなきゃとか、どうやって魚を捕まえるのかとか、今は考えたらダメだ! 心が折れる!

し走ると、流れの穏やかな綺麗な水が流れる川が見えてきた。意外と近くにあったな。

川の中を覗いてみると、川魚もそこそこいるみたいだ。だが、現狀魚を捕まえる方法はない。殘念だが魚は後回しだ。

それよりも重要なのは。

「この川の水が飲めるかどうかだな」

飲み水を確保する時は、煮沸してからってのが定番だけど、地球の常識が異世界でも通用するか分からない。

熱で死なない菌なんかがいたら最悪だが、今の俺には心強い味方「鑑定」がある。

「よし、それじゃあ記念すべき異世界最初のスキル、鑑定!」

そう口にすると、川の水を鑑定した結果が目の前に浮かんできた。おお、本當に鑑定出來た! ちょっとだ。

鑑定結果は「川の水:飲用には不向き」と出ていた。まあ當然だよな。川の水をそのまま飲もうなんて、自殺行為だろう。そのぐらいは分かっていたんだが……飲めないのか。実はほんのちょっとだけ、期待してたんだけどな。

いや、正確には飲用には不向きと書いてはあるだけで、飲めない事はないのか?

いっそ一か八かこのまま飲んでみるとか……いや、もしこれで変な病気にでもなったりしたら目も當てられない。

そんな事を考えていると、ストレージ畫面にもう一つ別の畫面が浮かんできた。そこには「川の水をストレージに収納出來ます」と書かれている。

そういえばストレージってどうやって使うんだ?

とりあえず「ストレージ」と唱えてみると、俺の手元に五十センチ四方ぐらいの大きさの、真っ黒なの様なが現れた……空中に。

え、どうなってんのコレ? とりあえず、その中に手を突っ込んでみる。

……俺の腕が肘辺りまで無くなった様に見えるんだが?

でも手の覚はあるし、引き抜いてみると手はちゃんとある。

これはアレか? ストレージは別の空間で、こっちからは見えないとか?

うわぁ、ありそうだ。もし本當にそうなら、考えるだけ時間の無駄だな。ファンタジーに科學の常識が當てはまる訳がない。俺科學詳しくないけど。

俺はそれ以上深く考えるのをやめた。それよりも気になる事がある。

「水ってそのまま収納出來るのか?」

普通何か容れて収納するイメージがあるんだけど。

「えっと、ここに水を掬ってれればいいのか?」

川に両手をれて水を一掬いし、れてみた。

すると水はに吸い込まれていき、ストレージ畫面には「川の水:量」と出ていた。

おお、本當に収納出來てる!

さっきも思ったけど、実際にスキル使うと「異世界に來た」って実が湧いてくるな!

と、そんな事を考えていると、ストレージ畫面に新たに「浄化」という選択肢が現れていた。

「ん、浄化? もしかして、これ浄化すれば飲み水に出來るのか!?」

もし本當に飲み水に出來るのなら水は確保出來る。そろそろも乾いてきた所だし、水はぜひとも確保しておきたい。

そんな想いと共に、俺は迷わず「浄化」のボタンを押した。

するとストレージ畫面の「川の水」の文字が一瞬だけり、次の瞬間「水:飲用可能」に変わった。

キタッ! 功だ。

そのままストレージから水を取り出そうとして……寸前で思い止まった。

そういえばさっき、俺は川の水をストレージに直接収納した。

もしストレージが収納した時の狀態のまま取り出す仕様なら、折角手にれた飲み水を失ってしまう可能がある

まあもう一度川の水を浄化すればいいだけなんだが、初めてスキルで作ったを無駄に捨てるのは々忍びない。

出來れば何かしいところだが。

辺りを見回し、何か使えるが無いか探してみた。

近くにあるのは、木の枝、木の葉、石、土、と。

……一これで俺に何を作れと?

とりあえず木の枝と木の葉を使ってを作ってみるか。

「まずは木の枝を組み合わせて、それを木の葉で包み……って出來るかぁ!」

こんなんで作れたら苦労しねえわ!

俺は手に取った木の枝と木の葉を、ストレージに向かって叩きつけた。

「いや、マジでどうしようか。一つ作れないって結構まずいんじゃ……ん?」

ふとストレージ畫面に視線を移してみると、そこには「合」の項目が増えているのに気が付いた。

「合? 合って、もしかしなくてもあの合?」

木の枝と木の葉を合って、何が作れるんだ? 想像出來ん。

とりあえず確認してみると、そこには「木のコップ」と書かれていた。

え、マジで!? タイミング良すぎかよ!

條件反で合ボタンを押すと、さっきの浄化と同様に木の枝と木の葉が消えて、今度は木のコップがストレージに増えていた。

「おお、本當に合出來てる」

ストレージから木のコップを取り出し、その出來の良さに心した。

これ日本のホームセンターとかに売ってるより出來が良い気がする。材料木の枝だけど。

ていうか、木の葉要素どこいった? と思ったら、コップに木の葉マークのイラストが描かれていた。あらやだ、オシャレ。

「まあ何はともあれ、これで水が飲める」

早速ストレージから水をコップの中に取り出し、それを一息に飲み干す。

ふぅっ、生き返る。

「この水やたら旨いな。普段から水道水ばっかり飲んでた俺でも分かるぞ」

浄化と合、この二つは本當に便利だ。出來るだけたくさん使って、早く使いこなさないと。

「とりあえず川の水を大量に収納しておくか」

目の前の川の水を両手で掬い、ストレージにれようとして、ふとその手を止めた。

「ストレージを川の中に展開とか出來たら便利じゃね?」

は試しと、ストレージに意識を集中してみた。大きさは一メートル四方ぐらいで、展開先は川の底がいいかな。

そう考えると、ストレージのが突然俺の前から「ふっ」と消えた。

「おや?」と思い辺りを見回してみるが、はどこにも見當たらない。

だが畫面は消えておらず、ストレージの川の水の量がどんどん増えている。

「これってもしかして、本當に川底に?」

試しに川の中を覗き込んでみると。

「……なんか川底にでかいが空いているんですけど。」

一メートルぐらいの広さはあるだろうか?

……あ、多分あれストレージだわ。普通川底にあんなが空いている訳ないし。

さっき一メートル四方って考えたから本當に大きくなったのか?

と、もうそろそろ充分かな。ストレージ畫面を見ると、既に川の水は大量と表示され、それ以降変化していなかった。

あわよくば川魚も巻き込まれていないかと思ったが、そう上手くはいかない様だ。

さて、もう充分だろう。そう思い、ストレージを解除しようとして、解除の仕方が分からない事に気が付いた。

え? これどうやって解除すんの? 解除って念じればいいのか?

試しに「解除」と念じてみると。

「……本當に解除出來た」

川底から大が無くなっており、ストレージ畫面の川の水の増加も止まっていた。

念じるだけでストレージの大きさ、場所を自由に設定でき、発と解除も自由自在。

ストレージを使って浄化と合も出來る、と。

いや、控えめに言って超便利だわ。

「ストレージって実は想像以上に便利なスキル?」

一応神様がくれたスキルだから、普通のスキルよりも高能とか?

充分あり得るな。

「まあ、今はまだ分からない事が多いし、とりあえず使いこなせる様にならないとな」

その為にも、今はんなを片っ端からストレージに突っ込んでみる事にしよう。

もしかしたら、浄化と合以外にも出來る事があるかもしれない。

そう考えながら、俺はその場から歩き出した。

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