《見た目は青年、心はアラサー、異世界に降り立つ! ~チートスキル「ストレージ」で異世界を満喫中~》十七話

「銀貨七枚で何とかなりませんか? 本當に最低限でいいんで」

考えても答えなんて出る訳ないし、ここは正直に話す事にした。

噓を吐いても仕方ないし。

「銀貨七枚か。じゃあ、鎖帷子(くさりかたびら)なんてどうだい? 耐スキルも付與されてない、最低ランクのになるが、駆け出しの防としちゃ充分だろう。ゴブリンの攻撃程度ならキッチリ防いでくれる。それに軽いから、カイトでも無理なく裝備出來る筈だ」

ガンツさんはこのない予算の中からでも、俺に使えそうなを考えてくれた。ええ人や。

にしても、鎖帷子か。それなら前にネットで見た事あるな。

としてどれぐらいの能なのか分からないけど、まあ低予算だし、文句は言うまい。それに、二人の紹介だから信頼出來るだろう。

「カイト。防ってのは、自分のを守る最終防衛ラインだからな。今後も冒険者を続けていくつもりなら、絶対ケチっちゃ駄目だぜ。変に安く済ませて、魔にやられてお陀仏。なんて話もよく聞くからな。自分が無理なく扱えて、且つ納得出來るを用意する事だ。見た目なんて二の次よ」

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ガンツさんはまるで自分の事の様に親切に教えてくれた。

「……分かりました。それじゃあ、鎖帷子をお願いします。一応試著させて貰ってもいいですか?」

俺がそう言うと、ガンツさんはニィっと笑い。

「おう、いいぜ。今持ってくるから、著てみてくれ。細かい調整はその後やっちまうからよ」

そう言うと、ガンツさんは再び店の奧へと姿を消した。なんか、あっという間に決まってしまったな。

「私達が々アドバイスするつもりだったのに、ガンツさんに全部持っていかれちゃったね」

「だな。しかも、いう事も的確だった。私達が下手にアドバイスするよりも、もっと本的な、大切な事を教えていた。流石はガンツ殿だ」

確かに。どういうを買った方が良いとか、安くて良いだとか、そういうよく聞く様なアドバイスとは違ったが、とてもしっくりくる話を聞けた。

流石は二人のオススメなだけはある。

「ほらよ。カイトの格ならこのサイズが丁度良さそうだ。著てみな」

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「あ、はい。ありがとうございます」

すぐに戻ってきたガンツさんから鎖帷子をけ取り、俺は試著するべく服をいで。

「きゃっ」

「……カイト君、もうし周りを気にしたらどうだ?」

鎖帷子に首を通し、二人を見てみると、マリーは両手で顔を隠し、フーリは視線を逸らしていた。

えぇ、男の半なんて見ても、別に恥ずかしくなくない?

「カイト、もう心ってもんを理解しねぇとダメだぜ」

「え、そういうものですかね?」

「そういうもんだ」

なんとガンツさんにまで呆れられてしまった。

失禮な、俺だって心の一つや二つ……理解出來れば彼いない歴=年齢などという悲しい業を背負わずに済んでるか。

「努力します」

そう答えるしかなかった。

鎖帷子に腕を通し、軽くかしてみたが、これがまた驚く程に馴染んだ。全く違和が無い。まるで俺の為に作ったかの様な著心地だ。

それに軽い。ほとんど重さをじないぞコレ。

「ガンツさん、これすごくいいです。によく馴染みます」

「そうだろう? カイトの格は人族の男の標準的な格だからな。選びやすかったし、よく馴染むだろうとは思ってたんだ」

「うん、結構様になってるな」

「よくお似合いですよ!」

俺が鎖帷子を著終えた事を確認した二人が、口々に褒めてくれた。

もし似合わないとか言われたらショックで寢込む所だったな。

これはもう買いだろう。そう思い、俺はそのまま鎖帷子の上に服を著て、ストレージから財布を取り出し。

「これで銀貨七枚でしたっけ?」

「そうだな、初回サービスと、二人の紹介って事も含めて……よし、おまけして銀貨五枚でいいぞ」

銀貨五枚。當初の予定より銀貨二枚分も安くなってしまった。これは迷わず買いだろう。

「で、どうする? 買ってくか?」

「はい、買います!」

即決だった。

こんなに馴染む防なら、買って損はない筈だ。

俺は財布から銀貨五枚を取り出し、ガンツさんに手渡した。

「ひぃ、ふぅ、みぃ……あいよ、確かに。それと、これは俺の個人的な餞別だ」

そう言うと、ガンツさんは俺に一組の皮の手袋を手渡してくれた。

これ何の皮だろう?

「そいつはホーンラビットの皮から作った手袋だ。カイトはまだ駆け出しだろ? 武を握る時にそいつをはめとけば、りにくくなる筈だ」

それはありがたい。戦闘中に武がすっぽ抜けるとかは勘弁だからな。

「カイトさん、良かったですね」

「ああ、本當に。ガンツさん、ありがとうございます」

俺がお禮を言うと、ガンツさんは頬を指でかきながら。

「いいってもんよ。こんな裏路地の寂れた武店に來てくれる貴重な客だからな。これぐらいはサービスするぜ」

気恥ずかしそうにしながら答えてくれた。

本當、見た目と違って優しい人だ。最初見た時は、職人然とした厳しい頑固オヤジに見えたのに、蓋を開けてみれば、とても優しく俺達を気遣ってくれるおじさんだった。

こういう店は、出來ればずっと続いてしい。

「また來ます。今度はもっと予算を増やして來るんで、じっくり選ばせて下さいね」

「お世話になりました」

「また來ます」

「おう、いつでも來な」

俺達はガンツさんに軽く挨拶をし、ガンツ武店から出た。

「いやあ、いい買いをした」

「良かったですね、カイトさん」

隣を歩くマリーが笑顔で答えてくれた。

あ、そういえば。

「なあ、そういえばマリーの武なんだけど、確か杖と短弓だったよな? どういう使い方をしたら、修理出來ないかもって言われる程壊れるんだ? 杖を鈍替わりにしたとか?」

「――えっ?」

「ぶっ!」

俺がマリーに聞くと、ギクッという擬音が聞こえてきそうなほどを強張らせるマリー。

その隣ではフーリが吹き出している。

「え、えーっと、それはですね! えっと……」

どうにもマリーの歯切れが悪い。何か人に言えないような使い方をしているとか?

「実はな、カイト君。先日けた依頼で、マリーはロックリザードを杖で毆り殺したんだ」

「ちょっ、姉さ「毆り殺した!?」いえ、誤解なんですよカイトさん! 聞いて下さい!」

えぇ、マリーって実は前衛だったの? しかも杖で毆り殺すっていうデンジャラスな戦闘スタイルで?

……あれ? 俺の武的に、マリーに戦闘の基礎を教えて貰う方が良いのでは?

「マリー。俺の武棒だから、しっかり戦い方を教えてくれな?」

「ぶふぉっ!」

「だから誤解なんですって!」

フーリがまた吹き出し、マリーが誤解だという。

はて? 何が誤解なんだろうか?

「あれは、私のオイ椎茸を盜んだロックリザードが悪いんです! 仕方なかったんです!」

「またオイ椎茸絡みかよ!」

どんだけオイ椎茸好きなんだマリーは。

「ちなみにロックリザードは、巖の様にい皮を持ち、ちょっとやそっとの打撃じゃびくともしない魔だ」

フーリの説明で、俺のマリーを見る視線は、更に訝し気なものになっただろう。

「だから誤解を招く発言をしないでよ姉さん! 流石にロックリザードを杖だけで毆り殺せる程の力は、私にはありません。本當ですよ?」

「じゃあどうやって毆り殺したの?」

俺が尋ねると、マリーは一度深呼吸をして息を整えた。

「まず、短弓と風の魔法を使って、威力を増大させた矢をロックリザードの中に突き刺して、傷をれておくんです。後はそれを杖で思いっきり毆りつけると、矢でついていた傷が広がっていって、簡単に毆り殺せます。それを何度も繰り返していくに、自然と壊れてしまったんです。実質巖を毆ってるのと同じようなじですしね。短弓は単純に、弦が切れてしまって。ついでに、他に傷んでないかガンツさんに見て貰ってたんです。ほら、普通でしょう? 全然おかしくありません!」

そこまで一気に捲し立てるマリー。でもそれって、本當におかしくないのだろうか? ロックリザードを毆り殺そうって考えに至った時點で既におかしい気がするし、巖同然のロックリザードを何度も毆って、平然としてるマリーにも驚きだ。

俺は棒で一発毆っただけで手が痺れたぞ。

でも、この必死なじ。ツッコむのは野暮ってもんかな?

「ま、まあ、マリーもオイ椎茸を盜まれて正気じゃなかっただろうし、仕方ないか! はは、はははは!」

「ですよね! やっぱりカイトさんは分かってますね!」

「……お前は本當にそれでいいのかマリー?」

フーリが小聲で呟いた言葉はマリーの耳には屆いていない様だった。

ギルドでフーリが言っていたのはこの事だったのか。

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