《見た目は青年、心はアラサー、異世界に降り立つ! ~チートスキル「ストレージ」で異世界を満喫中~》十八話
「さて、後はポーションと食料を買ったら、いよいよゴブリン討伐に向かうわけだが」
と、そこでフーリが俺の方を見て。
「今朝マリーから聞いたんだが、カイト君は既にポーションを持っているのか?」
「そうだな。一応ストレージの中にはまだ二十本ほど在庫が殘ってる」
我ながら流石に作りすぎかとも思ったが、ポーションは沢山持っておくに越した事はないだろう。
「済まないが、そのポーションをし分けてくれないか? もちろん、代金は支払わせて貰う」
「ああ、それは別に構わない。ていうか、俺は今日々教えて貰う立場なんだ。ポーションぐらい気にせず使ってくれ」
どうせまた作れるし。
「そうか、すまない。代わりといってはなんだが、今日は私に教えられる範囲でしっかり教えさせて貰おう」
と、フーリが頭を下げてきたが、俺は一つ気になる事が出來た。
「ポーションって高いのか?」
さっきのフーリの言は、ポーションの消費を出來るだけ抑えたいという風にもじられた。
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「カイトさん。実は最近、ポーションの原料になる薬草の納品量が減っているんですよ。なので、ポーションの數が全的に減ってるんです。だから、今あるポーションをあまり使い過ぎると、ランクが低い冒険者まで回らなくなっちゃう可能もあって。流石にそこまで在庫が不足している訳ではないんですけど、可能なら節約した方がいいんで」
俺の疑問にマリーが答えてくれた。なるほど。つまり、ポーションの絶対數が減ってるから、出來るだけ節約しようって事か。
「でも何で薬草の納品量が減ってるんだ? 誰も採取依頼をけないのか?」
「それが、薬草の納品依頼は報酬がなくて、前は駆け出しの冒険者が定期的に納品していたんですけど、最近は何故かすぐに討伐依頼に走る冒険者が増えてるんです。それで魔に殺されたりする冒険者も増えてて。結果的に、採取依頼をける冒険者の數そのものが減っちゃってて」
なるほど。要は悪循環に陥っていると。
こういう経緯もあるから、エレナさんは採取依頼をこなせって言ってたのか?
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「私達も出來るだけ薬草の納品をする様にしてるんだが、如何せん一度に運べる數にも限りがあってな。だが、本格的に薬草採取を始めようにも、私達にも生活がある。あまり報酬がない依頼ばかりけている訳にもいかないんだ」
まあ確かにフーリ達にも自分の生活があるだろうし、報酬が低い薬草採取ばかりしている訳にはいかないよな。
それでも、しでもと、他の依頼をけるついでに薬草を納品しているのか。
「分かった。そういう事なら俺にも協力させてくれ」
「すまないな、助かる」
まあこういうのは本的に一人一人の意識の持ちようだからな。
一部の者だけが頑張っても、その誰かだけじゃどうにもならないもんだ。
「じゃあ、後は食料だけど。姉さん、何を持って行こうか?」
「そうだな、折角カイト君がパーティにいる事だし、偶には干し以外のを持って行こうか」
「え? 普段は干しばっかり食べてるのか?」
俺が尋ねると、二人は遠い目をして。
「今まで、アイテムボックス持ちがパーティにいませんでしたからね」
「ああ。必然的に、腐りにくくて持ち運びやすく、かさばらないになるんだが、そうなると真っ先に上がるのが干しでな。依頼をけた時は、干しか現地でとれた食料を食べていた」
うわぁ。なんというか、悲しくなってくるな。毎回干しか現地調達。しかも手の込んだ調理は出來ない。
冒険者の悲しい現実というものを垣間見た瞬間だった。
「俺のアイテムボックスは容量無限だし、各自好きなを持って行こう。うん」
俺の言葉に、二人は笑顔で頷いていた。
それから三十分後。
俺達は酒場で各自好きな料理を頼み、それを俺のストレージに収納してから街を出た。
アミィには「アイテムボックス持ちだったんですね!」と驚かれたが。
「さて、討伐対象のゴブリンだが、依頼書によると、ペコライの北の平原によく出沒するみたいだ。だから、私達は北の平原を目指しながら、道中解毒草の採取も並行して行っていく。分かったか?」
「大丈夫」
「分かった、足を引っ張らないように頑張るよ」
冒険者になって初めての依頼だ。し張するが、頑張らないとな。
「そう張するな。難易度自はかなり低い依頼だ。油斷さえしなければすぐに終わるさ」
「そうですよカイトさん。リラックスしていきましょう」
二人に勵まされ、俺はしだけ張が和らいでいくのをじる。
事前準備はきちんとしたし、依頼も適正難易度だ。何も心配する事はない。油斷せず、リラックスしていこう。
「さて、そろそろ出発しようか」
フーリの言葉を合図に、俺達は北の平原に向けて出発した。
北の平原には、徒歩一時間程で到著した。平原はとても広く、見渡す限りの牧草地帯、という言葉がぴったりの景だった。
その平原で、俺達はゴブリンを探しながら解毒草の採取を進めていた。二人は自分の中にある知識を頼りに。そして俺は鑑定スキルを頼りに探している。
かれこれ三時間ぐらい、解毒草を集めながら歩いてるだろうか。既に俺が集めた解毒草の數は三十を超えていた。
「カイト君、君は鑑定スキルも持っていたのか。流石だ」
「いや、現実逃避はやめよう姉さん。いくら鑑定を持ってても、カイトさんが集めるペースは異常だよ」
二人が集めた解毒草は、まだストレージに収納していないから正確な數は分からないが、見たじ二人合わせて二十ちょいといった所だろうか。
「いや、たまたまだって。たまたま俺が探した場所に沢山の解毒草が生えてただけで」
「そんな偶然あります?」
いや、そんな事を俺に聞かれても。強いて言えば鑑定で一発で見分けられる分、しだけ時間のロスがない分、探すのに時間が割けるぐらいか。
でも、他には別に特別な事はしてないんだって。本當に偶然採れたとしか言いようがない。
「まあ、沢山集まるのは別に悪い事じゃないからいいさ。解毒草も、薬草よりはマシだが、やっぱり品薄気味でね。多ければ多いほど助かる」
解毒草もか。いっそ全冒険者に週に一回は薬草と解毒草の納品を義務化とかしたらどうだろうか?
報酬はやりがいとお客様の笑顔、みたいな。
……うん、やめよう。この言葉は俺に効く。すごく効く。
「それにしても、ゴブリンの群れが全然見つからないな」
これだけ探しても見つからないなんて、し変じゃないか?
「そうだな。もしかしたら私達が來る前に、別の冒険者がゴブリンの討伐を済ませたのかもしれない」
「ここは見晴らしが良い分、ゴブリンなんかがいたらすぐに見つかりますからね。これだけ探して見つからないって事は、そういう事かもしれません」
そんな事があるのか。まあ確かにゲームじゃあるまいし、依頼の討伐対象がいつまでも討伐されないなんて、普通はないのかもしれないけど。
でも、こんなに準備してきたんだけどな。
俺が肩を落とし、ガックリしていると。
「まあそう落ち込まないで下さい。こういう事もありますよ。一応もうし先の方まで行けばゴブリンもいるとは思うんですけど」
「え? そうなの?」
だったらもっと先に進んだ方がいいんじゃ?
「はい。ただ、カイトさんは初めての依頼ですし、今日はあまり無理をしない方がいいでしょうから」
まあ、確かにそれはそうなんだけど、でもゴブリンの討伐はやりたいし。
そんな思いが表に出ていたのだろうか。
「カイト君、初日からあまり無理をするのは良くないぞ。時には諦めも肝心だ」
「……確かにそうだな。うん、分かった」
依頼を達できないのは殘念だけど、それで無理をしていては本末転倒だ。
「分かってくれたようで何よりだ。それに、何も獲はゴブリンだけじゃないさ」
「え? それってどういう……」
俺がフーリに聞こうとした時、近くの茂みからガサガサっという音が聞こえてきた。
「來たか。カイト君、武を構えるんだ」
「え? あ、ああ」
既に剣を抜いて構えているフーリに言われ、俺はストレージから棒を取り出して構える。
マリーの方を見ると、既に杖を両手で持ち、いつでも攻撃できる態勢を整えていた。
(すごいな、二人とも。咄嗟に戦闘態勢をとれるなんて)
俺もいつかこうなりたいもんだ。
俺は棒を構えたまま、音がした方に意識を集中させ、そして気付いた。
(前よりも棒が軽い?)
特殊個と戦った時にじた重みよりも、今回じる重みはだいぶ軽くじる。これが強化の影響か。
これならすぐに力切れにはならないだろう。
「キィーッ」
「出たな。ホーンラビットだ」
茂みから現れたのは、中型健ぐらいの大きさで、一本角の生えた兎だった。
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