《見た目は青年、心はアラサー、異世界に降り立つ! ~チートスキル「ストレージ」で異世界を満喫中~》二十三話
「はい、依頼達の報告ですね。皆さんがけた依頼は……解毒草の採取と、北の平原のゴブリン討伐の二つですね。ではまず、解毒草の納品からお願いします」
今回付してくれてるのはエレナさんではなかった。まあギルド職員もエレナさんだけじゃないし、當たり前か。
職員さんはカウンターの下から五十センチ四方ぐらいの大きさの木箱を取り出してカウンターの上に置いた。
えーっと、これに全部れろと?
「あの、結構數があるんで、流石にこの木箱じゃあ」
流石にりきらないと思ったので、それとなく職員さんに伝えてみたのだが。
「あ、もしかして新人さんですか? 心配しなくても大丈夫ですよ。これは収納魔法が付與された「収納ボックス」という魔導ですので、多量が多くても問題ありません」
え? 収納魔法とかあるの? 確かにそれなら大丈夫なのかもしれない。
……まあ気になる事はあるけど、今は納品が先か。
「これにれればいいんですね?」
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「はい、お願いします」
職員さんに言われるがまま、ストレージから解毒草を取り出そうとしたが、そこでふと思いついた。
わざわざ取り出さなくても、ストレージから直接収納ボックスに納品出來るんじゃね?
スキルはイメージ、想像力。頭に思い浮かべるんだ。ストレージから収納ボックスに解毒草を転送するイメージを。目を閉じて、鮮明に。
「……」
「あの? どうされましたか?」
「カイトさん?」
「何をしている? 解毒草の納品だぞ」
ストレージは好きな場所に展開出來るから、展開場所は収納ボックスの中。そこから解毒草を全部取り出すイメージで、と。
「……よし! これで納品出來た筈。職員さん、収納ボックスの中を確認してみて下さい」
「はい? 一何を……え?」
訝し気な表をしつつも、収納ボックスを確認してくれた職員さんが、今度は困の表を浮かべたまま固まった。
「え、何でもう納品されてるの? 一何がどうなって」
混する職員さん。満足気な俺。ジト目のマリーとフーリ。
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何というか、傍から見たらシュールな景だろう。
「カイトさん、一何をしたんですか?」
ジト目のまま問い詰める様な聲でマリーに尋ねられる。
え? そんなに変な事はしてないけど。
「いや、わざわざ取り出さなくても、直接納品出來ないかなって思って。ほら、スキルってイメージで使うって言ったじゃん? だから、俺のアイテムボックスから、収納ボックスに直接解毒草を納品するイメージで使ったんだけど」
別に変な事してないよな?
「また君は変わった事を。そのぐらいの手間を惜しんで、無駄に用な事をする」
無駄とは失禮な! あれ? でも用って言われたって事は……
「もしかして褒められてる?」
「呆れ半分、といったところだ。君は変わったスキルの使い方をするからな」
「チュウニビョウごっこ、でしたっけ? あんな事する人は見た事ありませんよ」
いやいや、火魔法使えてイメージ通りに火をれるなら誰でもやるって絶対!
電気とか風なんかも使えたらもっとやりたい事もあるし!
「驚かせてすまない。それはここにいるカイト君の仕業だ。査定をお願いしてもいいだろうか?」
「あ、はい、そうですね。では、解毒草五十本で――え、多くない? ……失禮しました。五十本の納品で間違いありませんか?」
「あ、はい、そうですね」
「では先にこちらから査定させて貰いますね。解毒草が一本で銅貨五枚ですので、全部で銀貨二枚と大銅貨五枚、依頼達の報酬が大銅貨二枚、合わせて銀貨二枚と大銅貨七枚です」
職員さんが銀貨と大銅貨を巾著袋にれてカウンターの上に置いたのを確認し、それをストレージに一旦仕舞った。
「それでは次にゴブリンの討伐依頼ですね。さっきと同様、この収納ボックスにゴブリンの魔石を納品して頂いてもいいですか?」
「え? えっと、出來れば魔石は売りたくないんですが」
折角貰った魔石を売るのはちょっと困る。それを使って々やりたい事があるし。
「魔石をですか? 別にそれは構いませんけど、一応討伐確認のためにカウンターに魔石を出して貰ってもいいですか?」
「分かりました、それなら問題ありません」
良かった、売らなくてもいいらしい。
俺はストレージからゴブリンの魔石を五個取り出し、カウンターに置いた。
「えっと、全部で五個ですね。はい、確認しました。もういいですよ」
職員さんが數え終わるのを待ち、再び魔石をストレージに仕舞う。
「他に魔の素材はありますか? あるなら査定して、討伐報酬と一緒にお渡ししますけど」
「あ、それならゴブリンとホーンラビット。後、オーガの死骸を持ってきたんですけど」
「オーガ!? 今オーガって言いました!?」
「うぇ!? は、はい。言いましたけど?」
突然聲を上げて驚く職員さん。
と、何故かギルドにいる冒険者達も急に靜かになった。
え、マジでどういう事?
「それについては、後で私から詳しく報告させて貰うから、今は査定の方を」
「わ、分かりました。でも、査定が終わったら、ギルド長の所まで一緒に來て下さいね」
「分かった」
俺の代わりにフーリが応えてくれて、一先ず話は終わったようだ。
だが、周囲の喧騒がさっきとは違ったものに変わっていた。
「おい、オーガだってよ」「ゴブリン討伐っていったら、アレだろ? 北の平原の。あんな所にオーガ?」「最近妙な魔の目撃報が増えてるみたいだし、やばい事にならなきゃいいけど」
聞こえてくるのはこんな會話。
どうやら、魔が普段とは違う場所に現れている、という話みたいだ。
昨日この世界に來たばかりの俺にはよく分からない話だが、やばい事にもなりかねない様だ。どうやばいのかは分からないけど。
「それでは、こちらに先ほどと同様に、魔の死骸を納品して下さい」
収納ボックスを差し出し、死骸を納品する様に言われたので、また直接収納ボックスに納品した。
「終わりました」
「はい。では確認させて貰いますね」
さっきと違い、冷靜に対応してくれる職員さん。流石に二回目となると驚かないみたいだ。
「申し訳ありません、ゴブリンの死骸は素材になるが無いので、次からは回収しなくて大丈夫です。今回はこちらで処分しておきますね」
「あ、はい。すみません」
余計な手間を増やしてしまったな。ゴブリンは次から放置しよう。
「ホーンラビットが十、オーガが一。死骸の狀態の確認をした後、解手數料を差し引いた金額をお渡しするので、々お待ち下さい」
そう言って、付の裏に引っ込んでいく職員さん。
どこか別の場所で死骸を確認するのだろうか?
「すまない、事前に説明しておけば良かったな」
そして職員さんが裏に引っ込むのと同時にフーリに謝られた。
「それはいいけど、オーガって本來北の平原にいないの?」
「ああ。なくとも、今まで目撃例はなかった」
つまり、今回の件は完全にイレギュラーって事か。
「最近多いんですよね。果ての窟で大豬が目撃されたり、北の平原でロックリザードが目撃されたり」
「それって、魔の生態系に変化が生じてるとか?」
「分かりません。でも、もしかしたら賢者の森の最深部にある結界に、何か異変が起きてるのかもしれないって話は聞きますね」
「結界?」
あの森、結界なんてあるの?
「今から千年前に、賢者ペコライが張ったとされる、魔を閉じ込める結界です。その結界の先には昔、この辺り一帯を荒らし回った強力な魔が封じられてる、という昔話があるんです」
昔話か。それって果たして信憑あるのかな?
「まあ、所詮は昔話だ。強力な魔も、どんな魔かという記録すら殘っていない。よくあるおとぎ話の類さ。実際、その結界は千年間、一度も破られた事がないんだ。確認のしようもない。それに、似たような昔話は世界中んな所にある。まあ、よくある話さ」
おとぎ話か。でもこういうのって、大おとぎ話は実話で、って展開が多いよな。
「ただ、これだけ妙な目撃報が続いて、今回のオーガだ。もしかしたら、近々調査隊が編されて、賢者の森の大規模な調査が行われるかもしれないな」
「え? 確かに賢者の森には昔話があるんだろうけど、それで賢者の森に原因があるって決めつけて調査するのは早計じゃない? もっと他にも可能があるんじゃ」
流石にそれで他の可能を考えないのは良くない気がする。もっと他にも可能を考えないと。
「カイトさん。実は、これまで報告に上がってる、普段とは違う場所で目撃されてる魔の共通の生息地が、賢者の森の最深部。つまり、結界の近くなんです」
「つまり、原因は賢者の森にある。っつう訳だ、ルーキー」
突然背後から聞こえた聲に振り返ると、そこには朝から俺に突っ掛かってきた男、ヴォルフが立っていた。
面倒なのが現れたな。
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